音楽ナタリー Power Push - PENGUIN RESEARCH

自分たちの背中を押す「ボタン」

PENGUIN RESEARCHが3rdシングル「ボタン」をリリースした。

表題曲は現在放送中のアニメ「ReLIFE」のオープニングテーマに採用されている、明るさと切なさが同居する“青春ロックチューン”。カップリングには疾走感のあるポップパンクと、バンドの新機軸とも言える四つ打ちのダンスロックナンバーを収録し、バンドの表現の幅を広げている。

今回は、このニューシングルの話題を軸に、コンポーザーの堀江晶太(B)と、フロントマンの生田鷹司(Vo)の2人に、現在のPENGUIN RESEARCHの姿を語ってもらった。

取材・文 / 須藤輝 撮影 / 須田卓馬

振り返ってみて初めて気付いた青春の形

──ニューシングルの表題曲「ボタン」はアニメ「ReLIFE」のオープニングテーマに採用されていますが、これはどういった経緯で?

左から生田鷹司(Vo)、堀江晶太(B)。

堀江晶太(B) それが、三たび偶然で。1stシングル「ジョーカーに宜しく」(アニメ「デュラララ!!×2 結」エンディングテーマ)と2ndシングル「スポットライト」(アニメ「マギ シンドバッドの冒険」オープニングテーマ)と同じく、今回もすでにあった曲をアニメの制作サイドの方が気に入ってくださったんですよ。

──そうだったんですね。

堀江 タイアップのお話をいただいてから新たに1曲作って提出したんですけど、それは採用されずに、この「ボタン」に決まったっていう。

──アニメ「ReLIFE」は27歳のニート青年が、見た目だけ若返って高校生活をやり直すというストーリーですよね。「ボタン」の歌詞にも学校を連想させるワードや、「全部消えても ただそれだけは ほつれない」という、何やらアニメの最終回を暗示していそうな一節が見られるので、てっきり書き下ろしの曲なのかと。

堀江 これも偶然というか、この曲を書いたときに僕がイメージしていたのは、成人式なんですよ。つまり高校時代が終わって、各々が別の道を歩き始めて少し経ってから再び集まって、そこで振り返ってみて初めて気付いた青春の形を曲にしたんですね。そういう意味では、状況は違えど、もう1度高校生をやり直すというアニメのストーリーとシンクロするような感覚で書いていたのかなって思います。

生田鷹司(Vo)

生田鷹司(Vo) 今晶太が話した歌詞の世界観に、僕はすごく共感したんですよね。というのも、僕が地元の高知で通っていた学校は、小学校から短大までの一貫校だったんです。だから、もう幼なじみがみんな一緒に大人になっていくような感じで、卒業してからもその友達の輪は健在なんですよ。で、僕は上京するにあたって物理的にその輪を抜けたわけなんですけど、たぶん彼らとの縁は一生“ほつれない”だろうし、彼らと過ごした青春が、いい思い出も悪い思い出も全部ひっくるめて、今の自分の背中を押してくれていると感じているので、「ボタン」を歌うときには胸が熱くなりますね。

──「ボタン」という曲名も、うまいですね。ときには“掛け違え”たり“ほつれ”たりすることもある点を、運命や人間関係に重ね合わせていて。

堀江 実はこれも、詞を全部書き終えてから、なんとなく決めた曲名なんです。

生田 えっ、そうなの!?

堀江 あ、なんか「ボタン」かもって。ちょうど「ほつれない」っていうワードもあったし、第2ボタンみたいな、学生時代の象徴でもあるし。

楽曲そのものを主役にしたかった

──2ndシングル「スポットライト」リリース時のインタビューで(参照:PENGUIN RESEARCH「スポットライト」インタビュー)、「スポットライト」は堀江さんがPENGUIN RESEARCH用に初めて書いた曲で、バンドのひな形的な位置付けでもあるというお話をされていました。

堀江 はい。

──今回の「ボタン」も、「スポットライト」の延長線上にある、爽快感と同時に儚さを感じさせるロックチューンに仕上がっていて、改めてこのスタイルがPENGUIN RESEARCHの軸になっているんだなと感じました。

堀江 そうですね。もともと僕は明るいけど切ない音楽、具体的には松任谷由実さんやEaglesを好んで聴いてたので、自分のバンドでもそういう音楽性を主軸の1つにしたいなとはずっと考えていて。実際、「ボタン」はバンドを結成するにあたり、声をかけていたメンバー候補や事務所のスタッフに「こういう曲をやりたいんだけど」って、最初に提出した曲群の中の1曲なんです。その気になれば1stミニアルバムの「WILL」に入れたりもできたんですけど……。

生田 「なんかもったいないよね」って話になったんだよね。もっといいリリースのタイミングがあるんじゃないかって。

堀江 で、ずっとレコーディングしないで温存していたところ、今回タイアップのお話をいただいたんで、「よし、録るか」と。

──そのレコーディングは順調でしたか?

堀江 ライブでも演奏してましたし、メンバー全員の思い入れが強い曲だったので、今までで一番スムーズだったかも。俺に関していえば1テイクで終わったよね?

左から堀江晶太(B)、生田鷹司(Vo)。

生田 晶太は一発OKだったね。「ボタン」に関しては、レコーディングの前にメンバーみんなで話し合って、この曲の歌詞なり世界観なりに思い思いの意味を込めてやろうってことになったんですよ。で、僕もさっき話した地元の友達のこととかを感じながら歌った結果、手前味噌ですけど、ボーカリストとしてひと皮剥けた気がするというか。バージョンアップした生田鷹司のボーカルスタイルが提示できたかなと。

堀江 鷹司の歌もすごくよかったし、ほかのメンバーも気合い十分だっていうのはもう見ててわかったんですよ。だから僕もそれを信頼して、特に指示も出さず、自分のテイクが録り終わったら別室でぼーっとしてたくらい。「終わったら呼んで」みたいな(笑)。

──「ボタン」は各楽器のバランスが非常にいいですよね。例えば「スポットライト」は明らかにピアノが主役でしたが、「ボタン」は突出した誰かがいない代わりに、サウンド面での調和が見事にとれているなと思いました。

堀江 もともと「ボタン」は、楽曲そのものを主役にしたいっていう思いが特に強かった曲なんですよ。だからある意味、個々の楽器は地味でいいというか、誰かが出しゃばる必要はなくて、楽曲のメロディとフレーズ、メッセージが聴く人にするっと入っていくのが理想だなと。なので、そう言ってもらえるとうれしいです。

ニューシングル「ボタン」 / 2016年9月7日発売 / SME Records
期間生産限定盤 [CD+DVD] / 1599円 / SECL-1978~9
通常盤 [CD] / 1300円 / SECL-1977
期間生産限定盤CD収録曲
  1. ボタン
  2. brave me
  3. ボタン instrumental
期間生産限定盤DVD収録内容
  • ボタン ミュージックビデオ
  • テレビアニメ「ReLIFE」ノンクレジットOP映像
通常盤CD収録曲
  1. ボタン
  2. brave me
  3. 旅人の唄
  4. ボタン instrumental

Penguin Go a Road 2016 ~東奔西走腹滑り~

2016年9月3日(土)
愛知県 池下CLUB UPSET ※終了
2016年9月19日(月・祝)
大阪府 梅田Zeela
2016年9月22日(木・祝)
東京都 吉祥寺CLUB SEATA
PENGUIN RESEARCH(ペンギンリサーチ)
PENGUIN RESEARCH

生田鷹司(Vo)、堀江晶太(B)、神田ジョン(G)、新保恵大(Dr)、柴崎洋輔(Key)からなるロックバンド。LiSA、茅原実里、ベイビーレイズJAPANらの楽曲の作編曲を手がける堀江が生田に声をかけ2015年に結成される。2016年1月にシングル「ジョーカーに宜しく」でメジャーデビューを果たし、3月に初のワンマンライブを東京・新代田FEVERにて開催した。3月には1stミニアルバム「WILL」を、6月にアニメ「マギ シンドバッドの冒険」のオープニングテーマ「スポットライト」を収録したシングルをリリース。9月にアニメ「ReLIFE」のオープニングテーマ「ボタン」をシングルとして発表した。