NHK Eテレ「オトッペ」の新エンディングテーマ「ミーチャッタ・ダンス」が10月1日に配信リリースされた。
2017年4月に放送がスタートした「オトッペ」は、世界一のDJを目指す主人公シーナと音から生まれた不思議な生き物・オトッペたちの物語。振り付けが用意されたキャッチーな楽曲の数々が人気を集めており、「オトッペ町役場」の公式YouTubeチャンネルの登録者数は2019年10月現在で11万人、累計再生回数は7700万回に達している。
これまでウィンディ役の井口裕香(参照:井口裕香 NHK Eテレ「オトッペ」新ED曲インタビュー)、吉田ゐさおら音楽制作スタッフ(参照:NHK Eテレ「オトッペ」特集)に話を聞いてきた音楽ナタリーでは、今回シーナを演じる久野美咲にインタビュー。SNSを中心に大きな反響を集めている新曲「ミーチャッタ・ダンス」の制作エピソードなどを聞きつつ、「オトッペ」の魅力について改めて話してもらった。
取材・文 / 三浦良純
吉田ゐさお親子のダンスを思い浮かべながら
──「ミーチャッタ・ダンス」は会話からスタートして、突然踊り出す不思議な楽曲ですね。
そうなんです(笑)。シーナとしていろいろな楽曲を歌わせていただいてきましたが、「ミーチャッタ・ダンス」はこれまでの楽曲とは雰囲気が違うなと思いました。セリフが入っていて、とてもにぎやかな曲です。
──“好奇心旺盛な子供たちへの応援歌”なんですよね。
小さい子っていろんなことに興味がありますよね。例えばお友達が近くで遊んでいると「何やってるの!?」って駆け寄ることって多いと思いますし、大人でも一緒にいる人がスマホとか見出したら「何見てるの?」って聞くこともあるじゃないですか。そういう日常のシーンから楽しい世界が繰り広げられている楽曲なんです。「ミーチャッタ・ダンス」を聴いたら、「こういう場面って、よくあるなあ」と共感できるだろうし、「歌っているキャラクターたちは実際に何を見ているんだろう?」と興味を持てるのではないでしょうか。初めてこの楽曲を聴いたとき、曲を作るうえで注目するポイントが素晴らしいなあと思いました。きっとたくさんの方に親しまれる曲になるだろうなって。
──キャッチーで覚えやすい楽曲ですよね。今回も作曲は吉田ゐさおさんが担当されています。レコーディングの際に吉田さんから何か指示はありましたか?
オトッペの楽曲は独特なものが多くて、事前に資料をいただいてから自宅で練習しても「これでいいのかなあ?」と不安になるときがあります。ですがレコーディングに行くと、いつも吉田さんがすべて受け入れてくださるんですよ。「久野さんがやったらシーナになるから」って。私が考えてきたことや実際に歌ったものをまずしっかり聴いてくださって、そこからディレクションをしてくださるんです。吉田さんはいつもシーナの表情を意識しながら伝えてくださるので、私もシーナとして思いっきり歌うことができています。今回はセリフの「うん」や締めの部分でもある「ありがとうございました」「けっこうなおてまえでした」のところを「いろんなニュアンスでやってみましょう」と提案してくださったので何回も挑戦しました。
──いつもと違った点はありましたか?
今回スタジオに着いてから吉田さんとお子さんが親子で「ミーチャッタ・ダンス」を踊っている映像を観せていただいたんですよ(笑)。これまではレコーディングしてからアニメができて、最終的にオンエアされた振り付けを見る流れだったんですけど、今回はレコーディングの最中もお二人の踊りが頭の中にあったので、リズムが取りやすかったですね。
──振り付けは、さまざまな子供番組の振り付けを手がけている「かぶきもん」さんと吉田さん、そして番組スタッフさんが毎回意見を交わしながら作っているんですよね。この曲には井口裕香さん演じるウィンディらオトッペたちも参加していますが、ほかの声優さんたちとのコミュニケーションはあったんですか?
1人ずつのレコーディングだったので、相談はできませんでした。私が最初だったので、オトッペたちがのびのび遊べるように、まずはシーナとして歌の世界にしっかり入り込もうと思ってがんばりました。
シーナが「パプリカ」をカバー
──せっかくなのでほかの楽曲についてもお聞きしたいんですが、これまで歌ってきたエンディングテーマの中で特に思い入れのある曲はありますか?
選べないくらい全部に思い入れがありますね。どの曲も練習しているときから頭から離れなくなるんですけど、レコーディングを終えてオンエアされると、さらに頭から離れなくなって(笑)。1つ選ぶとしたら「バラバラバンバ」は特に好きです。見た目と音をバラバラにするという発想がキャッチーですし、メロディも耳に残る楽しい曲です。
──「オトッペ」では米津玄師さんが作詞作曲したFoorinの「パプリカ」もカバーして話題を集めました。「パプリカ」は「オトッペ」にはない曲調の楽曲ですよね(参照:<NHK>2020応援ソング「パプリカ」『オトッペ』バージョン - YouTube)。
原曲を初めて聴かせていただいたとき、すごく哀愁を感じたんですよね。Foorinさんたちは楽しそうに歌っているのになんだか切ない気持ちになって。会いたいけどなかなか会うことができず、遠くに想いを馳せるような歌詞に感じたんです。たとえ離れていても傍にいても、それぞれの場所でみんなでがんばろうねって思えるような。前向きにもなれる素敵な歌詞ですよね。「あなた」という言葉が歌詞に出てくるのですが、シーナにとっての「あなた」はきっと大好きなオトッペたちなんだろうなって。そういう気持ちでオトッペの世界とリンクさせて歌わせていただきました。
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子供ならではの五感の鋭さ