「きのこいぬ」ってなんだ……?小林大紀、上村祐翔、永瀬アンナ、久野美咲に聞いてみた

TVアニメ「きのこいぬ」が、2024年10月3日に放送スタートする。蒼星きままのマンガを原作とする同作は、犬のような外見をした謎の生物・きのこいぬと、愛犬を亡くした絵本作家・夕闇ほたるの共同生活を描いたハートフルコメディだ。原作は月刊COMICリュウ(徳間書店)で2010年から2022年にかけて、約12年間連載された。

コミックナタリーではアニメの放送を記念し、きのこいぬ役の小林大紀、ほたる役の上村祐翔、こまこ役の永瀬アンナ、プラム役の久野美咲にインタビューを実施。「きのこいぬ」を読んだ感想や、“まったくセリフがない”キャラクターに対する役作り方法などについて語ってもらった。

取材・文 / 太田祥暉撮影 / ヨシダヤスシ

「きのこいぬ」あらすじ

TVアニメ「きのこいぬ」キービジュアル

絵本作家の夕闇ほたるは愛犬・はなこを亡くし、暗く深い悲しみの底にいた。そんなある日、彼は庭にピンク色のきのこが生えていることに気づく。ぼんやりとそのきのこを眺めていると、それは突然動き出し、犬のごとくしっぽをぶんぶんさせながら寄ってきて……。そんなちょっと不思議な存在・きのこいぬと過ごす毎日によって、ほたるの世界は少しずつ色を取り戻していく。

登場キャラクター

きのこいぬ(CV:小林大紀)

きのこいぬ(CV:小林大紀)

きのこいぬ(CV:小林大紀)

ほたるの家の庭に突然生まれた、ピンク色のきのこの犬。どこから来たのか、何が目的なのは、その正体を含めすべてが謎に包まれている。

夕闇ほたる(CV:上村祐翔)

夕闇ほたる(CV:上村祐翔)

夕闇ほたる(CV:上村祐翔)

絵本作家の青年。愛犬を亡くしたことにより、新作になかなか手がつかない日々を送っている。

天野こまこ(CV:永瀬アンナ)

天野こまこ(CV:永瀬アンナ)

天野こまこ(CV:永瀬アンナ)

ほたるの幼なじみであり、ほたるの担当編集者。ズバッと物を言う“やり手女子”。

矢良いつき(CV:寺島拓篤)

矢良いつき(CV:寺島拓篤)

矢良いつき(CV:寺島拓篤)

近所の星嶋きのこ研究所の所員。こまこの会社の編集長を父に持つ。ほたるの大ファンであり、おかしな行動をしがち。

プラム(CV:久野美咲)

プラム(CV:久野美咲)

プラム(CV:久野美咲)

きのこいぬと見た目がそっくりな模様で、プラム色の不思議な生き物。果たしてその正体は……?

上原あんず(CV:日菜)

上原あんず(CV:日菜)

上原あんず(CV:日菜)

近所の中学生。ほたると本屋さんでばったり出会い、家に遊びに行く仲に。母ひとり、子ひとりで料理上手。

上原つばき(CV:千本木彩花)

上原つばき(CV:千本木彩花)

上原つばき(CV:千本木彩花)

あんずの母。離婚しており、あんずと二人暮らし。自由奔放で周囲を巻き込むタイプだが、悪気はない。あんずを頼りにしている。

「きのこいぬ」って、なんだろう……?

──まず、みなさんの「きのこいぬ」という作品への第一印象からお教えください。皆さん、オーディションを受ける際に作品のことを知られたそうですが……。

小林大紀 まず、なんだろう……?と頭の中にはてなが浮かびました。タイトルが「きのこいぬ」ですからね。マネージャーさんから「きのこいぬ役のオーディションです」と言われて、どういうことなんだろう?と思って(笑)。原作マンガを読み始めていくとハートフルなストーリーが展開されていて、なるほど、こういうお話なんだと納得しました。登場人物が落ち着いているところも、ある意味シュールで面白かったです。

上村祐翔 とても静かな作品ですよね。セリフがたくさんあるわけではなく、絵で魅せつつ、ほたるたちの心がどう揺れ動いたのかの解釈は読み手に委ねていて、とても新鮮な印象を受けました。きのこいぬのかわいい見た目とは裏腹に、人の芯を突く作品ですよね。個人的には、そんなトーンの作品の中でも天真爛漫に振る舞うきのこいぬのギャップが面白かったです。気づいたらきのこいぬがどんな生き物なのかどんどん知りたくなるんですよ。

小林大紀、上村祐翔。

小林大紀、上村祐翔。

永瀬アンナ 時間がゆったり流れていく作品だと思いました。そんな雰囲気の中できのこいぬが異質な印象を放っているからこそ、ギャップが面白くて。きのこいぬによってほたるの心情や、こまこを含めた周囲との関係性が変化していく、その様子がとても繊細に描かれているなと感じました。

久野美咲 私は最初、タイトルだけ伺ったときに「子供向けの絵本なのかな?」って思ったんです。でも、実際に原作マンガを読んでみたら、大人でも楽しめる内容でした。人間の描かれ方など、セリフがそこまであるわけじゃないのも、とてもリアルなんですよね。どこか実際に起きていそうな生活感がとても心地よく感じました。それだけに、きのこいぬという完全にファンタジーな存在がより面白く感じるんですけど……!

まったくセリフがない! ファンタジーで異質な存在へのアプローチ方法とは

──やはり皆さん、リアルな世界観に登場する、完全にファンタジーなきのこいぬという存在の異質感に目を奪われますよね(笑)。となると、気になるのは小林さんやプラム役の久野さんがいかにしてきのこいぬやプラムというキャラクターを掴んでいったのか、ですが……。

小林 きのこいぬって、台本にも状況説明しか書かれていないんですよ。まったくセリフがないんです。そもそも原作を読んでもきのこいぬの吹き出しが描かれているわけではありませんからね。キーキーとかは擬音は書かれていますけど、その音をどう表現するかは、オーディションでもかなり声優に委ねられていた気がします。

久野 私もオーディションでは、きのこいぬ役を受けたんですけど、そのときにいただいた資料にもト書きの状況説明──こういう場面でこんなことを描くシーンです、としか書かれていなくて。

表情豊かなきのこいぬ。

表情豊かなきのこいぬ。

小林 マンガのコマは参考として添付されていましたけど、本当に任せられていましたよね。なので、オーディションで僕や久野ちゃん以外にもいろんな方がきのこいぬ役を受けていたと思うんですけど、スタジオではいろんな方向性のきのこいぬが生まれていたんですよ。スタッフさんに伺ったところ、僕のきのこいぬと久野ちゃんがやったきのこいぬは完全に雰囲気が違ったそうですし。

久野 そうだったんだね……! 私は、感情をわかりやすく出すようにしていたかもしれません。

小林 僕はどちらかというとシュールな雰囲気に寄せていたので、そこが最終的にきのこいぬ役が僕、プラム役が久野ちゃんになった理由なのかなと思っています。実際に収録をしていても、久野ちゃんのお芝居を聞いたら「プラムが来たな!」って感じましたし。

上村 人間ときのこいぬ、プラムは別録りだったんですけど、収録ブースの後ろから2人のお芝居を見ているのがとても楽しいんですよ。

永瀬 2人とも面白いお芝居をされるので、笑いを堪えながら見ていましたね。

小林 ちょっと! 面白いって!

永瀬 褒め言葉です!(笑)

永瀬アンナ、久野美咲。

永瀬アンナ、久野美咲。

小林 久野ちゃんが現場に来るまではきのこいぬの抜き録りが多かったので、ずっと1人で旅をしているような感覚だったんです。ちょっと寂しかったのに、後ろから笑いを堪えている雰囲気を感じて……。

久野 きっと大変だったよね。この現場では、こばくん(小林)のことを「きのこパイセン」と呼んでいて。1人できのこいぬという謎の生き物のお芝居を開拓してくださったから……!

上村 先ほどのオーディションの話もそうですけど、きのこいぬは台本に具体的なセリフが書かれているわけではないので、大紀はずっと手探りだったと思うんですよ。スタッフも同様に手探りだったので、序盤からかなり難しいディレクションが飛んでいたんですが、そこへ果敢に食らいついている姿はとてもカッコよかったですね。

小林 第1話の収録を終えてもなお、手応えがなかったんです。あれでよかったのか、収録後に祐翔へ相談したくらいで。第2話以降もとにかくトライアンドエラーを繰り返しながら、現場のみんなできのこいぬという存在を作っていきました。

上村 そこが大紀のいいところだよね。「きのこいぬをこうしよう」って意思が出すぎていないからこそ、不思議ときのこいぬと同じ雰囲気が醸し出されていくというか。

小林 もしかしてそこがきのこパイセンって呼ばれている理由!?

久野美咲、プラムを演じ自然と「こんな音出ちゃった~!」

──あはは(笑)。その試行錯誤を経て、後半の話数では小林さんも徐々にきのこいぬのお芝居を変化させていったわけですね。

小林 ストーリーとしても、ほたるが心を開いていくと同時に、きのこいぬの見る世界も広がっていきますからね。「きのこいぬ」という作品はほたるが救われる話であり、きのこいぬがハッピーになるお話です。なので、自然ときのこいぬの芝居の幅も広がっていった印象があります。

──ちなみに、ほかのおふたりもきのこいぬ役のオーディションは受けられたんですか?

上村 僕もきのこいぬを受けましたね。たぶん、きのこいぬ役とほたる役をどちらも受ける人は多かったんじゃないかな? でも、後に聞いたら大紀はきのこいぬ一本釣りだったんだよね?

小林 そうそう。だから、僕がオーディションを受けたときに周りの男性陣がみんなほたるの練習もしていて。自分はずっときのこいぬだけ練習していたんだけどね(笑)。

小林大紀、上村祐翔。

小林大紀、上村祐翔。

永瀬 そうなんですね。私はこまこ役とプラム役……。

久野 えっ! 私、きのこいぬ役しか受けていなかったので、てっきりプラムはオーディション対象キャラじゃないのかと……!

──まさかそんなことが(笑)。そんな久野さん演じるプラムについての印象は皆さんいかがでしたか?

小林 最高。

上村 素晴らしいです。

──同時に(笑)。

永瀬 (笑)。何が出てくるのか予測できないんですよね。自分もプラム役のオーディションを受けましたけど、こんなお芝居はまったく想像できませんでした。

プラム

プラム

上村 久野ちゃんがプラムをやると聞いて楽しみにしていたら、その予想を遥かに上回るお芝居をされているんですよね。そうしたら、ご本人も「こんな音出ちゃった~!」って笑われていて。

久野 マイクの前でプラムを演じていると、よく突拍子もない音が出ちゃうんです。思わず膝から崩れ落ちちゃうこともあって。こんなに笑いながらアフレコするのは初めてでしたね。思う存分やっても、音響監督の吉田(光平)さんがブレーキをちゃんと踏んでくださるっていう安心感があったので、私はもうアクセル全開でした(笑)。ブースの中でもほかのキャストさんたちが笑うから、その笑いに自分も釣られて笑っちゃうこともありました。

小林 いや、本当に笑いを堪えるので大変です。僕は久野さんと一緒に演じる側なので、隣でお芝居を聞いては、「何を出してくるんだ……」と戦々恐々としていますから。

久野 私はただただ、きのこパイセンに付いて行こうと必死だっただけで……!

永瀬アンナ、久野美咲。

永瀬アンナ、久野美咲。

小林 その結果、とんでもないものができちゃったのか……。このインタビューが公開されるタイミングだとまだプラムはPVでしか観られていないと思うので、登場する瞬間を皆さん楽しみにしていていただきたいですね。

久野 そんなにハードル上げないで~!(笑)

上村 軽く飛び越えると思うよ!