音楽ナタリー Power Push - ORESAMA
90年代生まれの2人が目指すレトロフューチャーとは
「これ、俺のギターじゃね?」
──小島さんがトラックメークに際して打ち込みを導入したのはいつ頃なんですか?
小島 本格的に打ち込みを始めたのは3、4年前なんです。DTMはやってたんですけど、ギターを直で録って、ビートをポチポチ作るくらいで終わっていて。
──つまり当初は現在のORESAMAの音楽性に通じるような明確なビジョンはなかった?
小島 なかったですね。最初はアコースティックギター1本でライブをやってましたし。ただ、メロディの作り方は今とさほど変わってないので、当時のメロディにオケを付けたら今のORESAMAっぽい曲になると思うんですけど。
ぽん 私も最初はボーカルに関していろんな壁にぶち当たって。ウィスパー系というか、ちょっと優しい歌い方が合うなという曲が多かったこともあって、気持ちよく歌う感じでもなかったので、試行錯誤していました。
小島 当時は僕も歌に関してよくわかってなかったので、あまりディレクションすることもなかったんですよね。今は欲しい歌のビジョンがあるし、ぽんちゃんはいろんな声を出せるので、ガンガン言いますけど。
──打ち込みを本格的に導入して、生のギターとプログラミングを配合しながら、ディスコやファンクを基調としたブラックミュージックのエッセンスを取り入れるというサウンドの方法論を見い出したのも3、4年前になるんですか?
小島 そうですね。そこで大きかったのがナイル・ロジャースとの出会いで。ナイル・ロジャースに音楽人生を変えられましたね。
──ナイル・ロジャースのカッティングに。
小島 そう。僕がギターを最初に手にしたのが、中学3年のときなんですけど、実は当時から無意識にクリーンなカッティングをしてたんです。自然とチャカチャカ鳴らしてたんですよ。友だちとはBON JOVIのコピーをやってたから、バンドで鳴らすギターはどんどん歪んでいったんですけど、家でギターを鳴らしてるときはずっとクリーンなカッティングしていて。ただ、あくまで無意識にカッティングしていたので、意識的にカッティングを追求することはしてなかったんです。でも、3年前に「Get Lucky」でナイル・ロジャースのカッティングを聴いたときに「これ、俺のギターじゃね?」って思ったんですよね(笑)。
──面白い!
小島 「あ、俺がやりたかったのはこれだ!」と思って。それからナイル・ロジャースがやっていたバンドということでChicを知って、どんどんディスコも掘るようになっていったんです。
ORESAMA流J-POP観
──ORESAMAのサウンドは今のブラックリバイバル的な潮流と一致するんだけど、それは時代性うんぬんというよりも、あくまでナイル・ロジャースありきであると。
小島 ホントにそうです(笑)。少しでもナイル・ロジャースに近づきたいという一心で。あの人の人間性も大好きだし。「そこにナイル・ロジャースがいたから」という感じですね。ナイル・ロジャースと出会ってからは、自分でもわかるくらいトラック作りがどんどん成長していきました。
──そこにJ-POP然としたメロディを乗せるという。
小島 そう。メロディにおいては、ChicやEarth, Wind & Fireといった海外のディスコ系のバンドとORESAMAは全然違うので。メロディに関してはJ-POPから吸収した部分が大きいですね。
──それを融合させるのは難しくなかった?
小島 そんなに難しくなかったです。
──ひと口にJ-POPと言ってもその振り幅ってかなり大きいじゃないですか。リスナーによっては東京事変をJ-POPとして聴いてる人もいるし、あるいはJ-POPと言えばEXILEやジャニーズやAKB48だと言う人もいるでしょうし。小島さんの琴線に触れるJ-POPに何か一貫性はありますか?
小島 極論を言えば、僕は日本で売れてる音楽がJ-POPだと思ってます。それはきれいごとではなく、自分の中でずっと変わらないことで。最近のお気に入りはE-girlsの「Dance Dance Dance」ですし。何がポップかと言えば、お金がちゃんと回ってる音楽だと思うんですよね。そこはカッコつけずに言い切りたいなって。
──同世代のトラックメーカーとして、tofubeatsにシンパシーを覚えてる部分はありますか? 音楽的にも通じる部分があると思うんですけど。
小島 tofubeatsさんは大好きですね。tofuさんの動画を観まくってますし、「ディスコの神様」がリリースされたときも、トラックのディスコポップ感や、ギターのカッティングが素晴らしいなと思いました。おこがましいですけど、自分が作る音楽に通じる部分もあるなと。
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収録曲
- KARAKURI
- オオカミハート
- Morning Call
- Listen to my heart
- ドラマチック
- 迷子のババロア
- 密告テレパシー
- 恋のあじ
- あたまからモンスター
- 乙女シック
- カラクリ
ORESAMA(オレサマ)
ぽん♀(Vo)と小島英也♂(programming, G)による男女2人組ユニット。2013年に「The 6th Music Revolution Japan Final」で優秀賞を獲得し、2014年12月にテレビアニメ「オオカミ少女と黒王子」のエンディングテーマ「オオカミハート」でデビューを果たした。2015年12月に1stアルバム「oresama」を発表。エレクトロファンクをベースにしたサウンドやUTOMARUを起用したアートワークで人気を集めている。