ORANGE RANGEが3年ぶりのフルアルバム「ELEVEN PIECE」をリリースした。バンドにとって11枚目のオリジナルアルバムの本作は、地元沖縄でマイペースにレコーディングが進められたという。
「Ryukyu Wind」「Theme of KOZA」といった沖縄にちなんだナンバーや、「ワジワジ」という沖縄の方言を盛り込んだタイトルの楽曲も収められている本作。どのような過程を経てアルバムが完成したのか、その舞台裏をメンバー5人に聞いた。
取材・文 / 阿刀“DA”大志 撮影 / 後藤倫人
自然に入ってる沖縄っぽさ
──最近、沖縄以外のあまりの暑さに「沖縄は日本の避暑地」なんていうジョークも聞かれますね。
RYO(Vo) ついにこういうときが来たかと。「いつか東京は沖縄より暑くなるんじゃないの?」って言ってたら本当になった。
──今年の東京の暑さって、沖縄出身の皆さんからするとどうなんですか?
HIROKI(Vo) 本当に暑いっすね。沖縄は日陰にいれば夕方とかは全然涼しいですよ。東京はいつも室外機の熱風を浴びているような感じ。
YAMATO(Vo) でも、沖縄の夏は東京以上にジメジメしてるから湿度は全然違うかなと。
──ああ、東京でもそこまで過ごしづらいってことはないんですね。
HIROKI まあ、大人になると外に出ないっすからね!
──なるほど(笑)。でも、今さらな話ですけど、ORANGE RANGEって沖縄のアーティストというイメージがそこまで強くないですよね。同郷のアーティストに比べると地元色を強く押し出していないし。皆さんの中で沖縄との距離感を意識的に保っていたりするところがあるんですか?
YOH(B) 生まれてから沖縄にずっと住んでいるけど、依存しすぎるのは違うなって思ってる。
──サウンドや歌詞に関してはどうですか?
RYO ナチュラルです。方言をめちゃめちゃ歌詞に入れるわけでもないし。単純に沖縄に住んでるってだけで。まあ、いい島だと思うし、みんなが「地元がいい」って言うのと一緒です。
──NAOTOさんはどうでしょう。
NAOTO(G) 今言われて思ったけど、沖縄のアーティストは歌が沖縄っぽいですよね。でも僕たちの歌はそうじゃない。それが僕らが沖縄の人から東京のアーティストだと思われる理由なのかな。
──NAOTOさんとしては、曲作りにおいて沖縄を意識することもなく、自然に湧き出てくるものを表現してるだけで。
NAOTO そうですね。沖縄の音楽をいつも聴いてるわけではないし、むしろ夏とかたまにしか聴かない。
──YOHさんは前回のインタビューで「沖縄のバンドだから沖縄っぽくっていうことが自分の曲では安易にできない」ということを話してましたね(参照:ORANGE RANGEインタビュー|“なんでもあり”なレンジを凝縮 とっ散らかった新作「UNITY」)。
YOH 確かに変な伝え方はしたくないですね。
──そういう気持ちがありながらも、今回の作品は歌詞やサウンドの部分で沖縄的な要素が従来よりも強く出ている気がします。これは自然な成り行きなんですか?
RYO ですね。言われてみればっていうぐらいで。
HIROKI これまでは、例えば「三線を入れたいけど、そうすると沖縄っぽくなってしまうな」っていうのが無意識のうちにあったのかも。今はそういう意識すらなくなっているので、このアルバムから沖縄っぽさが感じられるのであれば、今の自分たちが好きなものとして自然に入ってるのかもしれないですね。
自分がやってきたことのすべてが正解だった
──前作「TEN」のリリース以降、コラボベスト「縁盤」や5曲入りの「UNITY」のリリースがありましたが、フルアルバムとしては3年空きました。この間、それぞれ考え方の変化などはありましたか?
HIROKI 僕は結成15周年の47都道府県ツアーからちょっと変わってきましたね。「ありがとう」を伝えるために全国を回ったつもりが、逆に「おめでとう」とか「ありがとう」っていう言葉をお客さんからもらったことが大きかった。この15年の間にいろんな出来事があったけど、自分がやってきたことのすべてが正解で、みんなに受け入れてもらえてる。だから今こういう景色を見ることができるんだっていう自信になったんですよね。
──それは大きいですね。
HIROKI それでそのツアーのあとに「UNITY」を出して、そこでもまた確固たる自信を得たし、ORANGE RANGEの音楽を聴いてくれている人たちとの結束力を高めることができた。それがこの3年で変わったことだと思います。
RYO 俺もこの3年間はすごく充実してたし、今もめちゃめちゃ充実してます。ライブも何もないときから意識を高く保つようにしたら、すごく調子がよくて。以前は、がんばって休んで、がんばって休んでっていう極端なサイクルだったけど、今はずっと一定の調子を保てるようになりました。こういうのも自分次第なんだなって気付けた時間でしたね。
YOH 俺の中では常に目の前のことに取り組み続けてるイメージなんですけど、自分が変わらずにいれてるのかそうじゃないのかっていう判断をするのが難しいです。今はっきりしていることは、引き続きステージ以外にもいろんな風景を見に行ったりすることでさまざまなものを吸収し続けていけたらいいなと思ってます。
YAMATO 現状維持することに納得はしてないし、もっともっと向上していきたい。自信はお客さんからたくさんもらったので、あとはもっといいライブができるようにしたいし、いつまでもそういう考え方を持ち続けたいって思うようになりましたね。
NAOTO 僕は考え方がちょっとラフになったかな。直感が働くうちはその感覚に乗っかりたいんですよね。それができなくなったら考えてひねり出すようになるのかもしれないけど。
──最近の作品はそういう感覚で作られてるんですか?
NAOTO そういうのが多い気がしますね。ポロッと浮かんだものをピャーっと形にしちゃうっていう。
──勢いで行けるところまで行くと。今回もそんな感じですか?
NAOTO そうですね。前まではがんばってこねくり回して形にしてたんですけど、それだと途中で飽きるようになってきちゃって、今は力尽きたらそこでおしまいっていう感じです。まあ、精子みたいなもんですね。卵子までたどり着いたらOKっていう。
──(笑)。今回もそうやって生き残った11曲だと。
NAOTO 形になるかならないかの見極めはかなり早かったですね。
次のページ »
生活している中でストレスなくやれる
- ORANGE RANGE「ELEVEN PIECE」
- 2018年8月29日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
-
初回限定盤 [CD+DVD]
4860円 / VIZL-1419 -
通常盤 [CD]
3240円 / VICL-65040
- CD収録曲
-
- Ryukyu Wind -ELEVEN PIECE ver.-
- センチメンタル
- Destroy Rock and Roll
- Hopping
- 楽園Paradise
- Happy Life
- 大きな夢の木
- ワジワジ feat. ペチュニアロックス
- Theme of KOZA
- KONNICHIWA東京
- Girl/Boy Song feat. ソイソース
- 初回限定盤DVD収録内容
-
「LIVE in VICTOR ROCK FESTIVAL 2018」
- チラチラリズム
- 上海ハニー
- SUSHI食べたい feat. ソイソース
- *~アスタリスク~
- アオイトリ
- イケナイ太陽
- キリキリマイ
- ORANGE RANGE(オレンジレンジ)
- 沖縄出身・在住の5人組バンド。中学の卒業パーティをきっかけに結成される。2001年に現在のメンバーがそろい、地元・沖縄にある米軍のライブハウスを中心に活動を始める。2002年2月にミニアルバム「オレンジボール」をインディーズから発表。以後、沖縄以外でのライブも頻繁に行うようになり、2003年6月にシングル「キリキリマイ」でメジャーデビューを果たす。続く2ndシングル「上海ハニー」がオリコン週間ランキング5位を記録。その後も「ロコローション」「花」「ラヴ・パレード」「キズナ」など、数々のヒットを飛ばす。2010年7月に自主レーベル「SUPER ((ECHO)) LABEL」を設立し、10月にアルバム「orcd」を発表。2012年2月にはSPEEDSTAR RECORDSと提携を開始し4月にアルバム「NEO POP STANDARD」を、2015年8月にはニューアルバム「TEN」を発表した。2016年7月に結成15周年を記念したコラボベストアルバム「縁盤」をリリースし、9月から初の47都道府県ツアーを開催。2017年11月に5曲入りの新作「UNITY」を、2018年8月に3年ぶりとなるアルバム「ELEVEN PIECE」を発表した。