生活している中でストレスなくやれる
──今作の制作にあたってのテーマは?
RYO ないです(笑)。
NAOTO メンバーで会議もしなかったかな。いつの間にか始まって、いつの間にか「はい、全部録れました……あ、やっぱ、これ録れてないから録るか」みたいな。
──ラフですね(笑)。沖縄で制作をしたということは、東京みたいにスタジオの時間に縛られることなく、気の向くままに作業に没頭できたと。それが一番ストレスないし、ベストな形だったんでしょうね。
YAMATO ボーカルはNAOTOの家で録ったんですよ。しかも、NAOTOはボーカル陣の声のコンディションとか、マイクのノリや質感もできるだけいい状態に持っていくように考えてくれるから、スケジュールが詰め詰めということもなく、いい歌を録ることだけに集中して、全力で臨めました。いつも以上に気持ちを込められた感じはあります。
──過去はどうだったんですか?
YAMATO 今までは事前に決まってるスケジュールに自分たちを合わせていたので、スケジュールもけっこう詰まってて。だけど今回は、例えば沖縄に4日いるとして、そのうち1日でも調子のいい日があればいいかな、みたいに相談しながら日程を決めたり。喉も消耗品なんで、そういうところをわかってくれたうえでNAOTOと話ができるのはありがたかったし、こっちもそれに応えようっていう気持ちになりましたね。
RYO 自分たちなりのテンポ感を見つけられたかもしれないですね。生活している中でストレスなくやれるようになってきました。それはすごくいいことだなと。
──自分たちなりのペースで録るとやっぱり違いますか?
RYO 俺はめっちゃいい状態でやれました。
HIROKI 「この日からこの日まで」って決まってるとプレッシャーがかかるじゃないですか。でもそうじゃなくて、ライブとライブの合間に仮歌を録って、次の週にそれをちょっと変えてみたり、長い時間をかけてプリプロをやってるような感じだったんですよ。で、いいテイクが録れたらそのまま本チャンに使ったりもしたし、全体的に気持ちに余裕があると言うか。YAMATOも言ったように、バンド全体と言うよりも各自でペース調整できたのがよかったのかなって。
──YOHさんはどうでしたか?
YOH ベースもちょっと録り方を変えたんですよ。レコーディングスタジオではなくて、自分の作曲部屋を使って、1曲につき最長2時間。パッと録れたもので30分。そんなふうにして時間をうまく組んで録りました。スタジオだととにかくタイト過ぎて消化していくのが最優先になることが多いんです。もちろんそのときのベストを尽くすけど、そういうのがちょっと気になってはいたから、今回は好きなだけ時間をかけて取り組めたと思うし、それが新鮮でもありましたね。
ボーカルは農家
──そうやってリラックスして臨んだレコーディングとは裏腹に、サウンドはすごくストイックに感じました。ボーカルは余計な余韻を残さないことで緊張感が生まれているし、サウンドに関しても無駄な音が削ぎ落とされていて、音の隙間がヒリヒリしています。これは最近のORANGE RANGEの作品全般に言えることだとは思うんですが、今作はそれがより強く出ているように感じました。
NAOTO 音は少ないに越したことはないので、なるべく減らすようにはしてますね。
──ORANGE RANGE流のミニマルミュージックと言うか。音色もオールドスクールなテクノっぽいものを多用してますね。
NAOTO 新しい機材を買ったとか、新しい楽器を取り入れたってことはないんですけど、確かにトラックの数は減ったかも。演奏を録って、歌が入ってきたところで「あ、もうちょっと減らせるな」って。
──ああ、物理的に音数が減ってるんですね。
NAOTO さっき言ったように、最初はどうしてもひらめきを優先してばーっと作るから、コードは難しくなるし、音も多くなっちゃうんですよ。だから、そこからコードを簡単にして、徐々に音も減らしていくんですよね。
──なるほど。
NAOTO 僕は普段からシンプルな音楽を聴いてるし、そういう音楽のほうが1つひとつの音の細かいところまでよく見えるんですよ。例えば、ほかの音がたくさん鳴ってるとキックのおしりの部分があまり聞こえなくなる。そこで余計な部分を消すと、聞こえなかったところがちゃんと見えてくる。歌に関しても同じで、歌と重なるところで鳴ってる音を消すと歌の余韻がしっかり聞こえてくる。そういうのが好きなんです。
──そうやってNAOTOさんの手でミックスされたものを聴いて、ほかのメンバーはどう感じるんでしょうか?
YAMATO そこはいつもNAOTOに任せてるから、あとからあーだこーだ言うことはないです。ここ何年かはボーカルを重ねることが少なくなってきて、できるだけシンプルに声を届けられるように歌っているので、気付いたら自分の表現もスマートなものになってきましたね。
──やっぱり歌い方も変わってくるものなんですね。RYOさんはどうですか?
RYO 「こうしてほしい」とか「この曲はこういうところを狙って作ってるよ」っていうことを歌を録る前段階から話し合ってるので、何も問題はないですね。
HIROKI 僕もあとで変わることを前提に自分の歌を考えてます。自分はあくまでも生産者と言うか、農家だと思ってるので、野菜を持っていったらあとはシェフがどう調理してくれるかを楽しみにしてる部分があるんですよ。たまに大根を持っていったら「葉っぱを使うんかい!」っていうようなこともありますけど(笑)、それはそれで楽しみにしてますね。
──歌という素材を提供している感覚なんですね。
YAMATO わかりやすい。いい表現だ。
HIROKI 昔はね、歌のニュアンスをガシガシ削られるたびに、「あんなに一生懸命歌ったのに!」とか「感情込めたのに!」って思ってましたけど、今はもう録ってる段階から割り切ってます。
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J-POPは音数が多すぎる
- ORANGE RANGE「ELEVEN PIECE」
- 2018年8月29日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
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初回限定盤 [CD+DVD]
4860円 / VIZL-1419 -
通常盤 [CD]
3240円 / VICL-65040
- CD収録曲
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- Ryukyu Wind -ELEVEN PIECE ver.-
- センチメンタル
- Destroy Rock and Roll
- Hopping
- 楽園Paradise
- Happy Life
- 大きな夢の木
- ワジワジ feat. ペチュニアロックス
- Theme of KOZA
- KONNICHIWA東京
- Girl/Boy Song feat. ソイソース
- 初回限定盤DVD収録内容
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「LIVE in VICTOR ROCK FESTIVAL 2018」
- チラチラリズム
- 上海ハニー
- SUSHI食べたい feat. ソイソース
- *~アスタリスク~
- アオイトリ
- イケナイ太陽
- キリキリマイ
- ORANGE RANGE(オレンジレンジ)
- 沖縄出身・在住の5人組バンド。中学の卒業パーティをきっかけに結成される。2001年に現在のメンバーがそろい、地元・沖縄にある米軍のライブハウスを中心に活動を始める。2002年2月にミニアルバム「オレンジボール」をインディーズから発表。以後、沖縄以外でのライブも頻繁に行うようになり、2003年6月にシングル「キリキリマイ」でメジャーデビューを果たす。続く2ndシングル「上海ハニー」がオリコン週間ランキング5位を記録。その後も「ロコローション」「花」「ラヴ・パレード」「キズナ」など、数々のヒットを飛ばす。2010年7月に自主レーベル「SUPER ((ECHO)) LABEL」を設立し、10月にアルバム「orcd」を発表。2012年2月にはSPEEDSTAR RECORDSと提携を開始し4月にアルバム「NEO POP STANDARD」を、2015年8月にはニューアルバム「TEN」を発表した。2016年7月に結成15周年を記念したコラボベストアルバム「縁盤」をリリースし、9月から初の47都道府県ツアーを開催。2017年11月に5曲入りの新作「UNITY」を、2018年8月に3年ぶりとなるアルバム「ELEVEN PIECE」を発表した。