J-POPは音数が多すぎる
──そんな過程を経て録音された楽曲群ですが、地元賛歌の「Theme of KOZA」はヒップホップ的なサウンドをベースにしながらも、しっかり自分たちのスタイルに寄せているのが面白くて、僕は今作で一番好きです。
NAOTO 気が合いますね。僕もこれが一番好きです。ひさしぶりにコザで遊んだらめちゃくちゃ楽しかったんですよ。クラブに行っても、僕が十代の頃に流れてたのと音楽が変わってなくて。でも僕はそういうところで育ったし、多感な時期に聴いた音楽は今でも好きだから、それがめちゃくちゃ楽しかったんですよ。それで「RYO、コザの曲を作ろう」って言ったんです。
RYO 言われてからすぐに作ってみたんだけど、シンセのループがずっと流れてる中で作業してたから頭がおかしくなりそうでしたね。でも、その気持ち悪くなりそうな感じがコザっぽいんですよ。
──そうなんですね。この曲を聴いてるとコザへ遊びに行ってみたくなります。
HIROKI でも、過剰に期待しちゃダメですよ。観光地ではないから。
NAOTO 逆に引くかもしれない。上級者じゃないとダメかも。
──そういう街なんですね。でも、沖縄のストリートについて歌うというテーマが、中毒性の高いサウンドと相まって非常に新鮮に感じました。あと、沖縄の方言で「イライラ」という意味を持つ「ワジワジ feat. ペチュニアロックス」も面白いです。ラウドロックをベースにしながらも、「Theme of KOZA」と同様に決してそっちに振り切らない。そして、シリアスなサウンドとは反対に、歌詞はふざけているという不思議なバランスがORANGE RANGEらしいなと。
NAOTO 「こんな音なのにこんな歌詞?」っていう。ここで本当に怒ってる歌詞だったらまさにラウドロックっぽいじゃないですか。でもミスマッチと言うか、煮えきれないと言うか、「なんでこんなふうにしたんだろう?」っていう感じが面白いんですよね。
──あえて狙ったんですね。と言うことは、バラード曲「Happy Life」も、やろうと思えばもっとドラマチックなサウンドにできたはずなのに、あえてそうしなかったんですか?
NAOTO 結果的にこうなっちゃった。ストリングスはもう何本か重ねてたんだけど、そんなに大げさじゃないほうがいいかなと思って結局使わなかった。
──オーソドックスなJ-POP的な考え方だと、ストリングスを幾重にも重ねてリッチに仕上げるのがセオリーですよね。
NAOTO 確かにJ-POPは音数が多い。多すぎます。
変なテンションが好き
──そういうサウンドに耳が慣れているからこそ、余計にこの曲が耳に引っかかるんですよね。今作は全体的にあえて感情を抑え込むことで、独特なテンションに仕上がっているように感じます。
NAOTO 確かに変なテンションの曲は多いし、そういうのが好きなのかもしれないですね。聴く人の心をかき乱してやろうっていうんじゃないけど、やり過ぎず、下がり過ぎず、なんかフワフワしてる。めちゃくちゃテクノをやってるわけでもないし、ロックに振り切ってるわけでもないっていう感じがすごくやりやすいんですよ。
──その結果として、これはちょっと大げさな表現かもしれないですけど、今作はユートピアとディストピアの狭間をゆらゆら漂っているような印象で、そこがいい意味ですごく気持ち悪い。特に「KONNICHIWA東京」から「Girl/Boy Song feat. ソイソース」につながる終盤の流れは怖さすら感じます。
HIROKI 本当にそうですよね(笑)。「KONNICHIWA東京」なんてこんなテーマで歌う奴はほかにいないと思いますよ。もっと明るくオリンピックを迎えたいのに、終わり方はすげえ怖いもんね。
NAOTO 音はかわいいけどね。
──そうそう。かわいいトーンで「心配なんです」って歌われると、まるで笑顔で殴りかかられるような恐怖が。
一同 (笑)。
HIROKI 一番怖いやつですよね。狂気じみた感じ。
NAOTO 前にHIROKIが言ってたんですけど、例えば4人組のバンドがいたとして、派手だったり奇抜なメンバーがいる中で、しゃべってみると一番ヤバいのが一見すごく普通そうなメンバーっていう。
HIROKI 俺たちも外見はポップだけど、意外とヤベえ奴ら、みたいな?
NAOTO いや、違う。
一同 (笑)。
HIROKI それは違うんだ(笑)。
──でも、それも一理あると思いますよ? だって、ORANGE RANGEはサマーチューンでとことんアゲてくれるバンドっていうパブリックイメージがあるけど、この作品にはそういう要素はないじゃないですか。ORANGE RANGEと狂気ってなかなか結び付かないですよ。
NAOTO ないですね。
──そして「KONNICHIWA東京」から「Girl/Boy Song feat. ソイソース」につながることで怖さが増幅されるという。最後の「助け合いの心」というフレーズで終わっていく感じなんて特に。
HIROKI あのコーラスも怖いですもんね。言ってることは温かいんだけど。
みんなにバレないところでやってるから楽しい
──温かいことを歌ってるし、メロディも優しい。だけど、聴き終わったあとになんとなく不安にさせられる。アルバムの随所でそういう奇妙な感覚に襲われるんですよ。その一方で、YOHさんが作詞作曲した「大きな夢の木」はストレートで温かな楽曲だったのが印象的でした。
YOH アイデア自体、4年前に生まれたんですが、そのときは自分のモードに合わず詞が書けませんでした。震災を経てどう自分の音楽に変えていこうかって時期でもあったから、今思えばですけど曲調的に重ならなかったんだと思います。今年に入ってようやくその気持ちにスイッチが入る出来事があって。
──どんな出来事がベースになってるんですか?
YOH 虐待やいじめを受けた子供たちが共同生活してる児童養護施設に行く機会があって。でも、いろんな事情でみんな運動会とか学芸会みたいな大きなイベントに出られないことを知ったんですよ。そういう状況下でも、負けずに過ごしてる子供たちを見て、何ができるのかと考えたときに「大きな夢の木」の存在を思い出して。プレイバックしたらうまくリンクしたんです。今なら書けるって。
──今回、演奏面では新しいことに挑戦していないそうですが、作詞作曲に関してはYOHさんの中で何かしらの変化が起こってるんでしょうか。
YOH この曲に関しては、少年的な元気さが要素として強かったからそれが重なった一番の要因だと思いますね。で、ボーカル陣とスタジオに入ったときに一番モチベーションの高かったRYOに詞も少しだけ託しました。RYOなりに切り開いてくれたので、それがいいアクセントになりましたね。確かに実験の度合いは弱くなってるかもしれないですけど、気持ちの部分だったり、人間的な部分で自分なりにいろいろ吸収して、これからも表現していけたらいいなと思ってます。
──「大きな夢の木」は作品の幅を広げる曲になってると思います。
YOH ほかの曲と比べながら作ったわけではないからまだ実感としては薄いですけど、そう言ってもらえるとうれしいですね。
──自分たちとしてはこのアルバムをどう捉えてますか?
RYO 僕は「UNITY」の延長線上にあるアルバムだと思ってて。だから、さっき話してた狂気っていうのはあまり感じないですね。言われてみればそういう一面もあるのかなぐらいな感じ。
──最初に話していたように、自分たちとしてはあくまでもナチュラルに作った作品だということなんですね。でも、僕としては今のORANGE RANGEがちょっと異常だということをもっとみんなに知ってもらいたいです。
NAOTO いや、それはちょっと困ります。
HIROKI みんなにバレないところでやってるから楽しいんであって(笑)。
──気付かれないほうがいいと。
NAOTO それぐらいがちょうどいいですね(笑)。
ライブ情報LIVE TOUR 018-019 ~ELEVEN PIECE~
- 2018年9月28日(金)台湾 Legacy Taipei
- 2018年10月25日(木)埼玉県 サンシティホール
- 2018年10月27日(土)愛知県 豊田市民文化会館
- 2018年10月28日(日)三重県 鈴鹿市民会館
- 2018年11月9日(金)秋田県 横手市民会館
- 2018年11月10日(土)山形県 山形市民会館
- 2018年11月17日(土)長崎県 島原文化会館
- 2018年11月21日(水)宮城県 多賀城市文化センター
- 2018年11月23日(金・祝)北海道 中標津町総合文化会館 しるべっと
- 2018年11月25日(日)北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
- 2018年12月1日(土)茨城県 常陸太田市民交流センター(パルティホール)
- 2018年12月2日(日)埼玉県 狭山市市民会館
- 2018年12月7日(金)石川県 金沢市文化ホール
- 2018年12月9日(日)神奈川県 相模女子大学グリーンホール
- 2018年12月14日(金)高知県 高知市文化プラザ かるぽーと
- 2018年12月15日(土)香川県 ハイスタッフホール
- 2018年12月22日(土)鹿児島県 鹿屋市文化会館
- 2018年12月23日(日・祝)熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
- 2019年1月5日(土)滋賀県 栗東芸術文化会館SAKIRA
- 2019年1月6日(日)大阪府 オリックス劇場
- 2019年1月11日(金)広島県 JMSアステールプラザ 大ホール
- 2019年1月12日(土)岡山県 倉敷市芸文館
- 2019年1月14日(月・祝)島根県 安来市総合文化ホール アルテピア 大ホール
- 2019年1月19日(土)福岡県 福岡市民会館
- 2019年1月20日(日)佐賀県 鳥栖市民文化会館
- 2019年1月26日(土)静岡県 焼津文化会館
- 2019年1月27日(日)愛知県 東海市芸術劇場
- 2019年2月2日(土)大分県 宇佐文化会館・ウサノピア
- 2019年2月3日(日)宮崎県 延岡総合文化センター
- 2019年2月8日(金)東京都 NHKホール
- ORANGE RANGE「ELEVEN PIECE」
- 2018年8月29日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
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初回限定盤 [CD+DVD]
4860円 / VIZL-1419 -
通常盤 [CD]
3240円 / VICL-65040
- CD収録曲
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- Ryukyu Wind -ELEVEN PIECE ver.-
- センチメンタル
- Destroy Rock and Roll
- Hopping
- 楽園Paradise
- Happy Life
- 大きな夢の木
- ワジワジ feat. ペチュニアロックス
- Theme of KOZA
- KONNICHIWA東京
- Girl/Boy Song feat. ソイソース
- 初回限定盤DVD収録内容
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「LIVE in VICTOR ROCK FESTIVAL 2018」
- チラチラリズム
- 上海ハニー
- SUSHI食べたい feat. ソイソース
- *~アスタリスク~
- アオイトリ
- イケナイ太陽
- キリキリマイ
- ORANGE RANGE(オレンジレンジ)
- 沖縄出身・在住の5人組バンド。中学の卒業パーティをきっかけに結成される。2001年に現在のメンバーがそろい、地元・沖縄にある米軍のライブハウスを中心に活動を始める。2002年2月にミニアルバム「オレンジボール」をインディーズから発表。以後、沖縄以外でのライブも頻繁に行うようになり、2003年6月にシングル「キリキリマイ」でメジャーデビューを果たす。続く2ndシングル「上海ハニー」がオリコン週間ランキング5位を記録。その後も「ロコローション」「花」「ラヴ・パレード」「キズナ」など、数々のヒットを飛ばす。2010年7月に自主レーベル「SUPER ((ECHO)) LABEL」を設立し、10月にアルバム「orcd」を発表。2012年2月にはSPEEDSTAR RECORDSと提携を開始し4月にアルバム「NEO POP STANDARD」を、2015年8月にはニューアルバム「TEN」を発表した。2016年7月に結成15周年を記念したコラボベストアルバム「縁盤」をリリースし、9月から初の47都道府県ツアーを開催。2017年11月に5曲入りの新作「UNITY」を、2018年8月に3年ぶりとなるアルバム「ELEVEN PIECE」を発表した。