THE CHARM PARKの大橋トリオ愛

──前作が「STEREO」というタイトルで、アナログにハマって、新作がこういう音になるというのは、流れとして非常に腑に落ちますね。

少しずつアナログへの意識が高まってきたんでしょうね。アナログレコードのビジュアルは昔から好きなんですよ。サイズ感とか。だからジャケットはいつも「アナログのサイズにしてもカッコいいデザインにしたい」と思ってて、前作ではけっこうそれを強く意識したんです。ジャケットに描いてある「STEREO」の文字はデザイナーが勝手に入れたものなんですよ。で、「これ、いいじゃん」ってことでアルバムのタイトルになって。まだタイトルが付いてなかった曲を「STEREO」という名前にしたんです。内容と関係ないのに（笑）。そこからアナログへの意識がかなり増したと思うので、今回のアルバムがこうなったのは必然的な流れですね。

──歌もとても丁寧に歌っていらっしゃる印象を受けました。

アナログを意識する中で、あんまり声を張りたくないなと思ったので、ウィスパー多めですね。特に静かな曲は完全にそうしてます。曲がシンプルだし、隙間を増やすことを意識したのもあって、歌が目立っているのかも。歌うべくして歌ったらこうなった、っていう。例えば「Wildflower」は、いつもの感じで歌うと全然雰囲気が出なくて、ボーカルをダブルにして、超ウィスパーで歌ってるんです。そうしたらやっとハマった。

──あと、「S・M・I・L・E・S」のギターソロが……。

Queenっぽいですよね。

──そう。

これはチャームくん（THE CHARM PARK）に「Queenっぽいギターソロ考えてくんない？」ってお願いしたんです。要はライブでそこをギター2本でハモって「イェイ！」みたいなイメージですよ。

──意外性があって面白かったです。

意外性は惜しみなく出していこうかと思ってます。ライブで苦労すると思うんですけどね。「S・M・I・L・E・S」はもう何回かやってるんですけど、この曲で僕が演奏するのはピアノなんですよ。でも間奏だけエレキギターに持ち替えて、弾き終わったら「大橋トリオ、ギター！」ってチャームくんに言ってもらって、ギターを置いて、またピアノに戻るという、回りくどいことをやってるんです。そこまでしてるわりに難しいギターは弾いてないから、お客さんも盛り上がりづらいと思うんですけど（笑）。チャームくんといえば「Fragments」は彼に全部任せて歌詞を書いてもらったんですけど、仮歌を入れて送ってくれたMP3を聴いたときに大感動したんですよ。僕の過去の曲のタイトルがほぼ詰まってるんです。それがうまいこと組み合わさって歌詞になってる。彼の大橋トリオ愛が詰まってますね。

──断片から作った曲だから「Fragments」なんですね。「kite」は大橋さんのプロデュースでデビューしたKitriのMonaさんとのデュエットですが、これは彼女たちの楽曲をカバーしたのではなく書き下ろしですか？

そうです。年末のライブにコーラスで参加してもらったんですけど、打ち上げの席で酔った勢いで「曲書いてみない？」ってお願いしたんです（笑）。もちろん酔った勢いと言っても、いいものを書いてもらえる確信があるからなんですが。そしたら「はい！ ぜひ」と言ってくれて。これ、8分の9拍子なんですよ。3拍子の3拍子。だからどう聴いたらいいのか最初わかんないんだけど、いい曲なのは間違いない。で、もらったデモに自分の声も入れてみたら、完全にデュエットの曲みたいになって。これでいいじゃん！と思って、彼女の歌はデモをそのまま使いました。最初はデュエット案はなかったんですよ。

──そうだったんですか。Kitriの魅力ってどんなところですか？

ひと言で言うと音楽に対してピュアなところですね。クラシックをずっとやってきて、J-POPをあんまり知らない中でJ-POPをやろうとしているので。本人たちの性格もほんっとピュアなんですよ。だからずっとそのままでいてほしいなって思うんですけど、ピュアなゆえにスポンジすぎるところがあって、なんでも吸収しちゃうので、インプットの調整に気を遣いますね（笑）。