ナタリー PowerPush - 大橋トリオ
待望のメジャー1stフルアルバムは「ダンス」を奏でる意欲作
世界観がちゃんとあれば、言葉のきれいさだけでも成り立つ
──ちなみに、今回の楽曲はすべて大橋さん自身が演奏されてるんですか?
ピアノとギター、あとベースも今回全部自分で弾いてます。やっとウッドベースにも慣れてきたので、ウッドベースもかなり弾いてますね。ドラムも4~5曲は叩いてます。これは自分で叩いたほうがニュアンスが表現できるかなっていうものは自分で叩く感じで、技術的に難しいものはプロのドラマーにお任せしてます。今回演奏的な面では、「Voodoo」とか「Emerald」はかなり気に入ってますね。
──洋楽志向の人は邦楽の歌詞が苦手な人も多いと思うんですけど、大橋トリオの場合、英語詞の曲はもちろん、日本語詞の曲も洋楽リスナーの耳にうまい具合になじむ感覚があるんですよね。
英語で歌うのは趣味なんで、趣味が高じてって感じで(笑)。メロディ自体は、これは日本語用、これは英語用って感じで最初から決めて作ってるんです。英語詞にするか日本語詞にするかの決め手はバランスですね。日本語詞を作ったら次は英語詞にするかっていうバランス。
──「I Got Rhythm?」もそうですが、大橋トリオの歌詞は、メッセージや物語というよりも聴き手のイメージを喚起させるものが多いですよね。
音がすべてだと思ってるわけでもないんですけど、詞の雰囲気や世界観がちゃんとあれば、言葉のきれいさだけでも成り立つのかなとは思っていて。自分から「こうだ」っていうメッセージはないんですけど、メッセージ的なものが含まれた詞もあるから、それは聴く人が自由に探って、各々がイメージするメッセージを発見してくれればいいかなって思いますね。
音楽としてちゃんと聴いてもらえるように表現できれば
──大橋トリオはボーカルの心地良さも大きな魅力だと思うんですが、シンガーとして、今回のレコーディングで歌うときに心がけていたことはありますか?
言葉がうまく伝わるようにということよりもまず、音楽としてちゃんと聴いてもらえるように表現できればいいかなって。シンガーとしては、オリジナリティがある人は本物だなって思うし、自分もそうなれればいいなと思いますね。ただ、声に特徴があり過ぎて全部が同じように聴こえたりする場合、1stと2ndアルバムぐらいで世界観が完結してしまうパターンが多い気がする。僕の歌に個性があるかどうかはわからないけど、そういうパターンにならないようには常に意識してるつもりですね。
──2010年1月からはホールツアーが開催されますが、大橋トリオにとって理想的なライブとは?
理想というか、ギター1本で、アンプとか通さずに生声で歌ってセッションしてるときがいちばん楽しいんですよ。ジャンルにもよるんでしょうけど、生の響き……マイクを通すとなくなっちゃう音とか余分な音が出ちゃったりすることもあるから、とにかく音がいいのは"生"。いつか、お客さん5人ぐらいに真ん中に座ってもらって、その周りをバンドが囲むっていうライブをやってみたいですね。ものすごいプレミアムライブでしょ?
CD収録曲
- I Could Be
- Winterland
- sing sing
- Here To Stay
- Voodoo
- 君は雨
- Emerald
- Everyday
- 誇り高き花のように
- ここにあるから
- 僕と月のワルツ
- Lady
大橋トリオ(おおはしとりお)
マルチプレイヤー大橋好規によるソロプロジェクト。 音楽大学を卒業後、2003年に映画「この世の外へ クラブ進駐軍」にピアノ演奏とビッグバンドアレンジで参加。その後も映画やCMの音楽制作や楽曲提供、サポート演奏などで幅広く活躍する。2007年に大橋トリオ名義のアルバム「PRETAPOTER」、2008年に「THIS IS MUSIC」、2009年5月にメジャー1stミニアルバム「A BIRD」をリリース。「THIS IS MUSIC」は第1回CDショップ大賞準大賞を受賞し、ジャンルレスな音楽性と独自のセンスをリスナーにアピールした。「余命1ヶ月の花嫁」をはじめとする数々の映画音楽も手がけ、幅広い才能を発揮している。