ナタリー PowerPush - 大橋トリオ
待望のメジャー1stフルアルバムは「ダンス」を奏でる意欲作
第1回「CDショップ大賞」の準大賞を受賞し、「iTunes Japan Sound of 2009」にも選出されるなど、シンプルなアコースティックサウンドと心地良い歌声で人気上昇中。大橋トリオは「余命1ヶ月の花嫁」や「Colors」「ジャージの二人」といった数々の映画音楽のほか、持田香織やカコイミクなどのプロデュースも手がける大橋好規によるシンガーソングライタープロジェクトだ。その大橋トリオが、11月11日にメジャー1stアルバム「I Got Rhythm?」を発表する。
今回のアルバムで掲げられたテーマは“ダンス”。ジャズ、フォーク、ロック、ポップス、クラシックなど、さまざまな要素をベースにした極上の歌声とメロディの数々に潜む、大橋トリオ流“ダンス”の魅力に迫る。
取材・文/早川加奈子
大橋トリオと“ダンス”のギャップを楽しむ
──メジャー1stアルバム「I Got Rhythm?」は“ダンス”がテーマだそうですが、まず大橋トリオとダンスという意外性に驚きました。
僕の中でも、大橋トリオとダンスっていうテーマは対極のイメージというか。そういう意味でも、ダンスを意識して作ったらどんなものができるかなっていう、言葉的なギャップも面白いかなって思ってました。
──そもそも、ダンスをテーマにしようと思いついたきっかけは?
ライブのお客さん、ですね。僕のライブは、結構お客さんがみんな静かに聴いてるイメージがあって。そういう人に向けて、ライブで披露するならアゲ目の曲が多いほうが親切かなと。もっと身体が揺れるとか、手拍子ができるとか。じっと観ててもらっても別にいいんですけどね。だからダンスをテーマにしたとはいえ、まったくそこに縛られてはいなくて。自分への戒めというか、ちょっとはそういう意識で作ってもいいんじゃない?っていう程度。そしたら幅広い意味でのダンスな作品になったっていう(笑)。
「どこがダンスやねん!?」って思われてもいいし(笑)
──もともと大橋さんの音楽の根底にはジャズがあるわけで、そのジャズのリズムといえばスウィングですよね。そう考えればダンスも自然な流れなんでしょうけど。
そうなんですよね。でもメジャーデビュー作の「A BIRD」は「ジャズっぽくないですね」っていろんな人に言われたんですよ。それまでの作品にかなりジャズっぽい曲調のものがあったからだと思うけど。自分の中では「A BIRD」にもジャズの要素を入れてたつもりだったんですけどね。まあ、「THIS IS MUSIC」とその前の「PRETAPORTER」でジャズっぽいものやロックっぽいものっていうのはやったし、今回また続けて同じようなものを作っても、という感じです。常に僕の中で、前の作品とは違うものを作ろうっていうところは意識してますからね。
──その意味でも、今回はライブでちょっとアゲてくれるような作品にしてみよう、と。
ま、ちょっとした意識ですけどね。聴いた後に、「どこがダンスやねん!?」って思われてもいいし(笑)。ただ僕自身はデモができて、その曲を演奏してる最中にもう、すべての曲で踊ってますからね(笑)。ヘッドフォンをしながら、もしくはスピーカーで大きな音を出しながら。まあ、今回アゲな曲とサゲな曲の差が激しいので、曲順を決めるのが難しかったですけど。だから、2部構成みたいな感じで中間で分けちゃえと思って、後半はもう完全にゆるい感じで。でも最後にワルツ(フジテレビ系「恋時雨」内ストーリー「カナブンはいない」主題歌「僕と月とワルツ」)があるから、まあ、いいかなって(笑)。
──「I Got Rhythm?」というアルバムタイトルに「?」がついてるのはその辺りのエクスキューズだったり?
テーマがダンスで、「これで踊れー!」みたいに言ってる風だけど、そうでもないよ、みたいな感じですね(笑)。感じ方は人それぞれだよ、っていうようなニュアンス。あと、「I Got Rhythm」ってスタンダードの名曲にもあるので、それをそのままつけてもつまんないからっていうのもあるし。なんかこう、ひとクセつけないとつまんないかなって(笑)。
CD収録曲
- I Could Be
- Winterland
- sing sing
- Here To Stay
- Voodoo
- 君は雨
- Emerald
- Everyday
- 誇り高き花のように
- ここにあるから
- 僕と月のワルツ
- Lady
大橋トリオ(おおはしとりお)
マルチプレイヤー大橋好規によるソロプロジェクト。 音楽大学を卒業後、2003年に映画「この世の外へ クラブ進駐軍」にピアノ演奏とビッグバンドアレンジで参加。その後も映画やCMの音楽制作や楽曲提供、サポート演奏などで幅広く活躍する。2007年に大橋トリオ名義のアルバム「PRETAPOTER」、2008年に「THIS IS MUSIC」、2009年5月にメジャー1stミニアルバム「A BIRD」をリリース。「THIS IS MUSIC」は第1回CDショップ大賞準大賞を受賞し、ジャンルレスな音楽性と独自のセンスをリスナーにアピールした。「余命1ヶ月の花嫁」をはじめとする数々の映画音楽も手がけ、幅広い才能を発揮している。