ナタリー PowerPush - 新山詩織
成長の軌跡刻む1stアルバム「しおり」
念願のアコギレコーディングは笹路さんと
──今回の制作で新たに挑戦したことはありますか?
7曲目の「午後3時」っていう曲で、初めてアコギ2本でレコーディングしました。片方は私でもう片方は笹路さんが。ずっとアコギ2本だけの曲を作ってみたかったからすごく楽しかったです。
──アコギ2本で曲を作りたいと思っていたのはどうしてですか?
自分はロックなバンドの音が大好きだけど、アコギだけの曲もよく聴くから、そういう雰囲気を自分でも出せたらいいなあとずっと思ってて。それに笹路さんにはぜひ一緒にアコギを弾いてもらえたらいいなあと思っていたので(笑)。実現できてうれしかったです。
──では苦労したことは?
「だからさ」のバンドバージョンの歌録りのときに、もともとアコギでずっと弾いていたのもあって、バンドサウンドに乗せて歌ったらなんか違うなあっていう違和感があったんです。自分が初めて「だからさ」を歌ったときの気持ちに戻れなくて「なんで? なんで?」ってずっと言ってた。自分で作った曲にもかかわらずうまく入り込むのが難しくて……それで、歌録りが延期になって。
──そこからどうやって新たに気持ちを入れ直したんですか?
とにかくもうドラムの音を頭に入れて。バンドサウンドに身を任せて歌うようにしたら、そこからはすんなり入り込めました。最終的にはアコギで歌うときとは違う鋭さをちゃんと歌に出せたから、アコギバージョンはアコギバージョン、バンドバージョンはバンドバージョンの「だからさ」のよさをちゃんと表現できたかなと思います。
妄想の歌詞でも躊躇はない
──ここからは1曲1曲について話を聞かせてください。「『大丈夫』だって」はやるせない恋心を歌った歌詞ですが、今までこういった恋愛をモチーフにした曲はなかったので珍しいなと感じました。
この歌詞は完全に妄想で。設定としては、自分と同い年くらいのカップルがいて、女の子がなかなか男の子に対して素直になれないっていう。どんなに会いたいと思っても会いたいとは言えない、強がりな女の子をテーマに書きました。
──ああ、これはフィクションなんですね。
はい。でも、なんとなく自分に重なるとこもあるかなあ。
──「『大丈夫』が癖になって 君に平気なフリして笑って 本当は弱いくせに強がって」というフレーズなんかは詩織さんの心の内が出ている気がします。
そうですね。平気じゃないのに「大丈夫」って言っちゃうことは誰にでもあるんじゃないかなあとも思うし。あとは自分が男の子だったらこういう強がりな女の子ってちょっとカワイイなあって思って、そんな目線も歌詞に入れてみました(笑)。
──フィクションを書くことにためらいはない?
どんなに妄想しても、ストーリーを決めて書いても、どこかで自然と自分に重なるように書いてると思うから、躊躇は何もないです。この曲はライブではアコギで弾き語りもしてるんですよ。歌ってて気持ちいい曲です。
──「たんぽぽ」は憂いを帯びたメロディが印象的ですね。これはどうやってできた曲なんですか?
「たんぽぽ」はまだオーディションも受けていない頃、1人でスタジオに行って練習することに憧れがあったのでときどき近くのスタジオに行ってたんですけど、そのときに雰囲気だけ録ってあって。詞を書くことはずっと好きだったから、たまたま書いてあったものをスタジオに持ってって、ちょっとコードを付けてみたんです。それを帰って親に聴かせたら「いいんじゃない」って言ってくれたから、もっとちゃんとコードを付けていって。
──いつもご両親の意見を参考にしてるんですか?
いや、作った曲を自分から聴かせることはほとんどないんですけど、そのときはなんとなーく聴かせたんです。自分でも聴いてもらいたいっていう気持ちがあったんだと思います。自分の中でもずっとお気に入りの曲だから。それで、デビューしてから「こんな曲があるんですけど」って笹路さんとスタッフさんに聴いてもらったら、「じゃあちょっとやってみようか」って話になって。歌詞を少し書き直したりして、最終的に、去年の年末にアルバム用としてレコーディングしました。
──ずいぶん長いこと温められてきた曲だったと。
そうです。やっと、やっと世に出せた(笑)。
──歌詞では平凡な毎日の繰り返しへ虚しさを抱えつつも、そこから抜け出したいという意志が描かれています。
これはほんとに、日常の中で思ったことをそのまんま書いたというか。ある日道端を歩いてるときにたんぽぽが目に入って……絶対たくさんの人に踏まれてるだろうけど、それでもちゃんと起き上がってこうやってまっすぐ咲いてるんだと思ったら、自分のほうが大きいのにその強さに励まされて。そのときの状況が歌詞を書くときにパッと思い浮かんだので、たんぽぽをキーワードにして書いていきました。たんぽぽを自分に重ねて、弱い気持ちを持ってる自分がそれを上から見下ろしてるっていう視点で。
──たんぽぽのように、何度踏まれても立ち上がる自分でいたいという思いが?
そんな気持ちもあります。「弱い自分を変えたい」っていう、自分から自分への願いを込めました。
- 1stアルバム「しおり」 / 2014年3月26日発売 / ビーイング
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3360円 / JBCZ-9006
- 卒業コラボ盤 [CD+ブックレット] 3360円 / JBCZ-9007
- 通常盤 [CD] 2835円 / JBCZ-9008
- 通常盤 [CD] 2835円 / JBCZ-9008
CD収録曲
- Looking to the sky
- ゆれるユレル
- 今 ここにいる
- 「大丈夫」だって
- たんぽぽ
- Everybody say yeah
- 午後3時
- ひとりごと
- 17歳の夏
- だからさ
- Don't Cry
初回限定盤DVD収録内容
- ゆれるユレル
- Don't Cry
- ひとりごと
- 今 ここにいる(ディレクターズカットver.)
新山詩織(にいやましおり)
1996年生まれのシンガーソングライター。幼少期より父親の影響でブルース、パンク、ロックを聴いて育つ。2012年、ビーイング主催の新人発掘オーディション「Treasure Hunt ~ビーイングオーディション2012~」に「詩織」名義で出場。オリジナル曲「だからさ」と椎名林檎「丸の内サディスティック」を弾き語りで披露してグランプリを獲得する。同年12月、新山詩織としてアーティストデビュー。2013年4月に笹路正徳をサウンドプロデューサーに迎えたメジャー1stシングル「ゆれるユレル」をリリースし、7月には映画「絶叫学級」の主題歌として書き下ろした「Don't Cry」を2ndシングルとして発表した。2014年2月、女子スキージャンプ選手の髙梨沙羅が出演する株式会社クラレの企業CMソングに採用された4thシングル「今 ここにいる」をリリース。3月に1stフルアルバム「しおり」を発表する。