音楽ナタリー Power Push - 新山詩織

新しい私に“ハロー” 立ち止まるだけの自分に“グッバイ”

新山詩織が2ndアルバム「ハローグッバイ」をリリースする。

1stアルバム「しおり」から約1年3カ月ぶりに届くアルバム。全12曲収録の本作は、自作曲に加え、多彩なクリエイターが参加した楽曲を織り混ぜたことで、新山の新たな表情を強く感じさせる仕上がりとなっている。10代最後の年を謳歌する彼女は、“出発”をテーマにこのアルバムを編んでいったという。果たしてその過程にはどんな思いや発見があったのか? じっくりと語ってもらった。

取材・文 / もりひでゆき

ここからまた“出発”

──2ndアルバム「ハローグッバイ」を作っていく時間は、新山さんにとってどんなものになりましたか?

今回は“出発”というテーマのあるアルバムだったので、作詞の面では自分と向き合うことがすごく多くて。だから改めて振り返ると、すごく充実した時間ではありました。

──デビューから約2年半経った今、改めて“出発”というテーマを掲げたのはどうしてだったんでしょう。

新山詩織

アルバムを制作していく段階で、10代最後の年であることと、20歳に向かっていく自分っていうものを踏まえて、もう一歩踏み出したいという思いが出てきたんです。なので、ここからまたスタートしていこうという意味を込めて“出発”というテーマにしました。

──新たなスタートを意識すると、必然的にこれまでの自分と向き合うことにもなったんでしょうね。過去を振り返っている歌詞が今回はけっこう多いような気がします。

そうですね。前の自分を見返しつつ、曲の雰囲気やメロディに引っ張られて「この曲にはあのときの思い出が合うかな」という感じで自然と言葉が出てきたりもして。結果的に、1曲1曲に自分のいろんな思い出がギュッと詰まったと思います。いろいろ書いていくうちに、自分なりの歌詞の書き方とか、新しい発見があったりもしましたし。

「変わらなくてもいいんだ」に変わった

──アルバムの中で、今までにない視点で書けたと思える歌詞というと?

「好きなのに」とか「フィルム」ですね。

──「好きなのに」は、思いを寄せる相手に対して素直になれない気持ちをつづった内容ですよね。これはどう言葉を紡いでいったんですか?

ある程度、登場人物の設定を決めて、その子の気持ちになって人物を動かしていって。自分ではなかなか言い出せない言葉でも、この女の子として書いてみたらストレートに書けたりしました。

──そこはある種、映画で言うところの監督的なイメージなんですかね? 主人公に役柄を与えて、その子をどう動かし、どんな言葉を言わせるか、みたいな。

そうですね。ただ、結局は自分自身と重なってたりもするんですけど。どんなに設定を細かく作っても、登場人物の性格は書いた自分と似てしまうので。書いていくうちに、「やっぱこれ自分だな」って(笑)。

──では、「フィルム」の歌詞はどんな思いで書いたのでしょう? ここには今の新山さんのリアルな思いが詰まっているような印象を受けましたが。

一度再生したらもう簡単には巻き戻せない映画のフィルムというものに、日々の現実をひたすら前を向いて走る若者の姿を重ね合わせて書いていきました。歌詞の中に「君は君で 僕は僕でいること」という部分があるんですけど、そこは確かに今の自分の気持ちでもあって。結局どんな場所にいたとしても、そこにいるのはありのままの自分でしかないので、それをちゃんと認めて走っていこうっていう、そういう思いをこの詞では書きました。

──ありのままの自分を認められるようになったことが、新山さんにとっての大きな変化だった?

はい。前はなんでもかんでも1人でどうにかしようって思うことが多かったんです。でも、これまでの活動の中でいろんな出会いがあって、信じられるもの、信じられる人がたくさんできたし、味方もたくさんいるんだなということに気付けたので、そのままの自分でもいいんだよなって。自分自身に対して、このアルバムを通してそう言ってあげられたことはすごく大きなことだなって思います。その結果、1人よがりではなく、自分じゃない誰かに対しての思いをちゃんと伝えられるようになったことも、ひとつ大きく変わった部分だなあと思いますし。

──さまざまな変化を通して、結果的に変わらない自分自身を肯定することができたということなんでしょうね。

今までは「こんなんじゃダメだ。もっと変われるでしょ」ってひたすら思っていたところがあったんです。常に自分を責めていたというか。そこを素直に受け止められれば、自分だって楽になれるのになって思いながらも、なかなかそれができなくて。でも、身近な家族や友人、この活動で出会えたいつも支えてくださる皆さん、いつも応援してくれているファンの方たちに、変わらなくてもいいんだっていう考え方に変えてもらえたんだと思います。

2ndアルバム「ハローグッバイ」 / 2015年6月17日発売 / ビーイング
初回限定盤 [CD+DVD] / 3996円 / JBCZ-9016
通常盤 [CD] / 3240円 / JBCZ-9017
CD収録曲
  1. Winding Road
  2. sunny day
  3. 絶対
  4. Dear friend
  5. 好きなのに
  6. 気まぐれ
  7. きらきら
  8. 分かってるよ Band ver.
  9. しおりのR&R
  10. ありがとう
  11. フィルム
  12. Hello
初回限定盤DVD収録内容
ミュージックビデオ+メイキング映像
  • 絶対
  • ありがとう
2014.11.15 guitar girls recommend powered by M-ON!@Zepp DiverCity ライブ映像
  • 絶対
  • 深夜高速(※オリジナル:フラワーカンパニーズ)
  • Looking to the sky
新山詩織 2ndライブツアー「ハローグッバイ」
2015年7月11日(土)
大阪府 umeda AKASO
2015年7月12日(日)
愛知県 HeartLand STUDIO
2015年7月18日(土)
東京都 LIQUIDROOM
新山詩織(ニイヤマシオリ)

1996年生まれのシンガーソングライター。幼少期より父親の影響でブルース、パンク、ロックを聴いて育つ。2012年、ビーイング主催の新人発掘オーディション「Treasure Hunt ~ビーイングオーディション2012~」に「詩織」名義で出場。オリジナル曲「だからさ」と椎名林檎「丸ノ内サディスティック」を弾き語りで披露してグランプリを獲得する。同年12月、新山詩織としてアーティストデビュー。2013年4月に笹路正徳をサウンドプロデューサーに迎えたメジャー1stシングル「ゆれるユレル」をリリースし、2014年2月に女子スキージャンプ選手の高梨沙羅が出演する株式会社クラレの企業CMソングに4thシングル「今 ここにいる」を提供。3月の1stフルアルバム「しおり」と同時期に高校を卒業し、2015年6月には2ndアルバム「ハローグッバイ」を発表する。