ナタリー PowerPush - 新山詩織
不器用な17歳の本音「ゆれるユレル」
オーディションを受けた理由
──高校生になってからはストリートライブを始めたんですね。これはすごく度胸がいることだと思うんですが、始めようと思ったのはどうして?
ただ家で好きに歌って弾いてるのも、なんかちょっと物足りなかったんだと思います。まったく自分を知らない人にも気付いてほしいっていうのはありました。
──知らない人ばかりのストリートで演奏するというのは大きな変化ですよね。
中学のときに初めて「だからさ」って曲を作ったときは、誰かに自分の気持ちを届けたいとか、人に対して歌いたいっていう気持ちはまったくなく、自分に対して歌ってたんですけど。ストリートで歌ってくうちに、目の前にいる人に向かって歌うっていう意識がどんどん強くなっていきました。
──それで、このままじゃダメだという思いでオーディションを受けたと。有名になりたいとか、音楽で食っていきたいっていう気持ちになったんですか?
それはないです。売れたいとか、お金欲しいとか、有名になりたいとかはほんとに一切考えてなかった。ただギター弾いて、歌うのが大好きだったから……。オーディションに応募した理由っていうのはほんと単純に、普通の暮らしの中でなんか変わりたかった、っていうだけで。
──それはストリートライブをやってるだけじゃダメだった?
はい。
──もし落選してたとしたら、その後もオーディションを受け続けてたと思いますか?
たぶん受けてないです。落ちたら落ちたで……まず受かると思ってもなかったから。落ちたら、まあそうだよなあって、いつも通り毎日家で好きな曲歌ってたと思います。
自分には音楽しかない
──グランプリを獲ってデビューが決まって、今ものすごくめまぐるしい毎日だと思うんですけど。この状況に戸惑ってはないですか?
グランプリ獲ったあと、レコーディングとかほかのいろいろなこととか全部いっぺんに押し寄せてきたから、1つずつわけて考えたり、やりこなすっていうのが最初はすごい難しくて。でもほんとに充実してると思うし、新しいことも大変なことも難しいことも全部、1個ずつ楽しくやってこうと思ってます。
──今は楽しめてるんですね。もう「自分はアーティストとして生きていくんだ」という覚悟ができてる?
歌うこととか音楽を自分から抜き取ったら、ただのなんにもない、暗い女子高生だと思うから。音楽があるから自分を出せてる部分もあるし、歌ってるときだけは誰にも邪魔されないから、自分にはこれしかないと思います。
──デビューが決まって音楽に打ち込むようになってから性格も変わったとか。
家で話すにも、外で話すにも、声の音量がちょっと上がったんじゃない?って言われます。ほんとに、いっぱい笑うようにもなったし。雰囲気も、前は下向いて、ほんとにどんよりした感じだったんですけど。そういうのも、ちゃんと前向いてまっすぐ歩けるような感じにはなったから。……自分に自信が少しでも出てきたから雰囲気も変わったんだと思う。学校が楽しいっていうのもそれにつながってると思うし、たくさん、変わったことはあります。
──では、今後詩織さんはどんなアーティストになりたいですか?
ほんとにまだスタートの段階だから、はっきりわからないけど……でも、聴く人に寄り添ってあげられるような、そんな人になれたらいいなあと思います。自分は誰かが隣にいるだけで安心できるから。1人だとどうしても不安になるけど、誰か横にちょんっていてくれたらそれだけで落ち着くというか。がんばれ、とかそういう言葉をかけるんじゃなくて、いつもただ横にいて安心させてあげられるような存在になりたいです。
収録曲
- ゆれるユレル
- 現在地 新山詩織 with THE GROOVERS
- ゆれるユレル -instrumental-
新山詩織(にいやましおり)
1996年生まれのシンガーソングライター。幼少期より父親の影響でブルース、パンク、ロックを聴いて育つ。2012年、ビーイング主催の新人発掘オーディション「Treasure Hunt ~ビーイングオーディション2012~」に「詩織」名義で出場。オリジナル曲「だからさ」と椎名林檎「丸の内サディスティック」を弾き語りで披露してグランプリを獲得する。同年12月、新山詩織としてアーティストデビュー。2013年4月17日にはサウンドプロデューサーに笹路正徳を迎えたメジャー1stシングル「ゆれるユレル」をリリースする。