Negicco|2020年、新潟にて。

Negiccoインタビュー

お座敷ライブで本領発揮

──Negiccoもいろんな予定が飛んじゃいましたね。3月に予定されていたレコーディングライブ「Negicco "LIVE RECORDING" @マイナビBLITZ赤坂」が中止になり、自動的にそのライブを収めたアルバムの発売も中止。夏のツアーや17周年ライブなど予定がどんどん崩れてしまって……。この先に向けての活動の道筋は立てていたんですよね。

Nao☆ 今年の活動というよりは、20周年に野音でライブをやりたいから、そこに向けてどうしていくべきかを考えてました。

Kaede 「まずはこの1年をどうしますか」という話になったときに、私はこれまで積み重ねてきたことをこれまで通りにやるのが理想かなと思っていたんですけど、「それだと新しいことがないからそれぞれ考えておいてね」と言われていたんです。そしたらこういう状況になっちゃって。

──夏の新潟ツアーも配信で全会場を回るという形に切り替えて行われたものの、やっぱり会場に足を運べないファンは不安に感じてたと思うんですよね。でもいざ始まってみたら……特に“コアファン向け”と謳われていた3公演目が配信された日、ファンの皆さんがすごくざわついていて(笑)。

Negicco あはははは!(笑)

Negicco

──安田温泉・劇場かわら座のお座敷をフルに使って、スイカ割ったり扇風機で涼んだり、意味もなくステージ上から全員いなくなる場面があったり……Negiccoの真骨頂というか、いつものNegiccoがそこにいる!という感じで安心感を覚えたファンが多かったと思うんですよね。

Nao☆ お座敷だから「まつり湯みたいなライブをやってほしい」と言われて(参照:Negiccoは楽しく伸びる企業、5年ぶりの聖地まつり湯で15周年大宴会)。選曲も自分たちでやったんですけど、コアファン向けの曲というと、お客さんあっての曲ばかりなんですよ。

──目の前に観客がいない状態は、何より演者の人が大変そうですよね。

Nao☆ ツアーの前の17周年ライブから配信になっちゃったんですけど、最初は精神状態がすごかったよね。

Megu 精神状態(笑)。

Nao☆ 「これホントに観てて楽しいの?」っていう。

Kaede とまどいはあったけど、Negiccoらしさは出せているんじゃないかと思います。

Megu 控え室の感じがそのまま出せるようになったのかなあ。

Nao☆ 扇風機の前に座っても怒られないのがいいよね。

Kaede 普通の事務所だったら怒られるよ(笑)。あんな座り込んで。

──座り込むし、誰もいなくなるし(笑)。

Megu 無音の時間が続くし(笑)。

──あのやりとりのグルーヴこそがNegiccoなんだなと改めて思いました。

Kaede 10年前だったら怒られてたと思うんですけど(笑)、積み重ねて積み重ねて、みんなが好きなNegiccoがちょっとずつできあがってきたような気がします。

TRICERATOPSに学んだ貫禄

──お座敷ライブ的なよさもある一方、7月23日の17周年公演「Negicco結成17周年記念オンラインアコースティックライブ」ではNegiccoの地肩の強さのようなものを感じました。クオリティの高いポップスを歌うアイドルグループは最近もたくさん出てきていますけど、1時間半ほどのライブでの全編通しての貫禄というか。

Negicco

Nao☆ 余裕は出てきたのかもしれない。去年くらいからやっとですよ。私たちはずっとMCが苦手で。MCがダメだったら、それではエンタテイナーじゃないので。TRICERATOPSさんがいなければ、私たちずっとそこに気付かなかったよね。TRICERATOPSさんのライブを観て「なんだこれ! めっちゃ楽しい!」って衝撃を受けたんですよ。

Kaede TRICERATOPSさんはステージ上でもずっと楽屋トークみたいな雰囲気でお話していて、リラックスしている感じがすごくいいんですよ。

──確かに、アイドル的なフォーマットで完成形を目指していたら3人の持ち味は薄れてしまうかもしれなくて、キャリアを積んだバンドのフランクさに近付いたほうがより本領を発揮できそうですね。

Megu 知らない間にそっちに近付いてました(笑)。

──その一方で、17年で蓄積された良質なポップスを、17年一緒にやってきたチームワークを持って披露するという。それってキャリアの浅いグループでは真似しようにも追いつけないところだと思うんですよね。それをくだけた雰囲気で、特に意識せず平然とやっている感じがすごいなと。

Megu やれてるんですかね……?

Negicco

Nao☆ 常にアイドルとしてキラキラしていなくちゃいけない、みたいなのは求められていないと思うし、Negiccoはそれじゃ面白くないと思うんです。

Megu でもライブ中に普通に「お腹痛い」とか言い出すのはどうなんだろう(笑)。

Kaede 「正露丸が欲しい」って(笑)。ライブが終わったあとに反省で映像を観直すんですけど、前はMCのところは飛ばして観てたのに、最近はMCも面白いから観ちゃうんですよね。3人のやりとりが客観的に見て面白いなと思うし、ファンの人もそれを楽しんでいるのがわかるし。お客さんを入れられていない今も、これまで通りにやれてるかなって思います。

いくつになっても「Negiccoでよかった」と思えることがベスト

──「Negiccoはいい曲が多い」という認知が広まっている一方で、もうちょっとやそっとの曲では驚かれないというのはデメリットですよね。「田島貴男が楽曲提供!」「坂本真綾が歌詞を書き下ろし!」と驚き続けた結果、もはやどんなアーティストと組んでも「まあNegiccoならやりそうだな」みたいな(笑)。

Megu あー。でも「午前0時のシンパシー」は今までNegiccoにありそうでなかった曲だってよく言われます。

──ニューシングル「午前0時のシンパシー」は一十三十一さんとの初タッグですね。すごく大人っぽい雰囲気の曲ですが……と言っても皆さん十分に大人ですけど。

Megu あはは、確かに(笑)。ミュージックビデオも「夜のNegiccoは新鮮」と言われます。ビジュアルイメージも含めて、いつものイメージとは真逆で。一十三十一さんとはいつかご一緒したいなと思っていたので、このタイミングで曲を書いていただけたのはすごく光栄でした。

Nao☆ いい歳の取り方ができているというか……いくつになっても「Negiccoでよかった」と思えることがベストで、今それがやれているのがうれしいんです。一十三十一さんは今のNegiccoを想像して作ってくれたんだと思うので、それがこのクールでカッコいい曲なのは「Negiccoをこういうふうに見てくれているんだな」とうれしくなったし、この曲が似合う大人になりたいなと思いました。

──ジャケットもクールでカッコいいな、と思って帯を外してみたら、どこか既視感のあるデザインで……。

Megu 気付いちゃいました?(笑) なんで「ネギッコ」ってカタカナで書いてあるんだろうと思ってたら。

Kaede 帯を取るとわかっちゃうから、Twitterに写真をアップするときも手で隠してカタカナが見えないようにしてました(笑)。

「ネオアコ好きです!」

──カップリング曲の「さかさま」は沖野俊太郎さんの作編曲で、沖野さんと同じくVENUS PETERのメンバーである古閑裕(K.O.G.A RECORDSのレーベルオーナー)もベースの演奏で参加しています。曲調もVENUS PETERを彷彿とさせるネオアコ調で……。

Negicco

Nao☆ ネオアコです! ゆっきーに「カップリング曲はネオアコです」って言われたときに「私、ネオアコ好きです!」って答えたんですけど、私が好きなのは「pop'n music」(リズムアクションゲーム)の中に入ってるネオアコというキャラの曲で、ネオアコがなんなのかはよく知らなくて。

Kaede LINEですぐに「ネオアコ好きです!」って反応してたから、Nao☆ちゃん音楽詳しいなーと思ってた(笑)。

──ネオアコってなんなのか説明してもらえますか?

Nao☆ ネオアコは、いいソングです。

Megu いいソング(笑)。

Kaede なんの説明にもなってない(笑)。

Nao☆ だってその「pop'n music」の1曲しか知らないんだもん。

──(笑)。もう1つのカップリング曲「Sneakers!!!」はCRCK/LCKSの編曲で、作詞はCRCK/LCKSの小田朋美さんです。CRCK/LCKSは2018年のツアーでバックを務めたり、同年の「NEGi FES」に出たりと(参照:Negiccoが花束届ける全国ツアー、CRCK/LCKSとの共演で見せた新境地 / Negicco新潟「NEGi FES」田んぼの真ん中がポップの坩堝に)、もはやおなじみですね。

Megu CRCK/LCKSさんらしい、ポップだけどちょっとトリッキーな曲ですね。

Nao☆ この曲はライブで歌うと楽しいです。

──バラバラな3曲だけどどれも聴き応えがあって、そんなバラバラな3曲が1つのシングルに収まっているのもNegiccoらしいなと思いました。

Megu そうですね。Negiccoは毎回いい曲だな、という自負はあります(笑)。

そんな熊さんに育てられたからね

──そしてNegiccoのシングルと同日に、Negiccoのプロデューサーであるconnieさんの2作目のミニアルバム「VOICES II」もリリースされました(参照:Negiccoプロデューサー・connie新作に中島愛、南波志帆、高橋麻里、婦人B、中川理沙)。

Nao☆ 私たちのレコーディングもあったから、すごく大変だったんじゃないかな。

Kaede 私たちはconnieさんが新作を作ってるなんて聞いてなかったので、あとで知ってびっくりしました。

──connieさんとの関係は良好ですか?

Nao☆ 良好です!

Megu connieさんは普段のお仕事もあるから、そう頻繁に会うわけじゃないんですよ。でもレコーディングのときはいつも来てくれて。

Nao☆ connieさんが作った曲じゃなくてもディレクションしてくれるんです。やっぱり初めて組む方の曲を歌うときはドキドキするけど、connieさんがいてくれると安心感があるよね。私たちからの提案も受けてくれて。

Kaede 私は逆で、connieさんが思った通りじゃないとOKが出ない(笑)。でもその“connieさん感”が毎回必ず出ているのが面白いんです。

──Negiccoのグルーヴを形作っているのは、3人のキャラクターはもちろんのこと、connieさんや雪田さん、熊さんといった事務所のムードも大きいですよね。いろんなアーティストがコロナ禍における出方を画策している中、熊さんが飲んでるだけの生配信「オンライン クマ居酒屋」を何百人ものファンが観ているという。

Megu めざし燃やしたやつだ(笑)。

Nao☆ めざし!?

Negicco
Negicco

Kaede めざしを燃やして危うく火事になりかけたの。配信を観てたconnieさんが連絡してくれたんですよね。「コンロが燃えてる燃えてる!」って(笑)。

Nao☆ なにそれ! ヤバい!!

──伝説の生配信ですね(笑)。得難い空気感だなと。

Nao☆ そんな熊さんに育てられたからね、私たち。熊さんから伝染した感じはあるかもしれない。

Kaede これでいいんだ、みたいな(笑)。

Nao☆ 新潟で育った環境と、このチームで育った環境が私たちを作っているし、強みだと思います。

Kaede でも今の状態が続くと本当にしんどいよね。ライブ配信も私たちなりの見せ方、新潟ならではの見せ方をいろいろ試しながら楽しくやれているけど、それも続けていればネタがなくなっちゃうし……そんな中で、これまでリリースしてきた曲がどれもいい曲だというのは、本当に私たちにとっての強みだなと改めて思ったよね。まったく曲を被らせないで何公演もやれるというのは。