音楽ナタリー PowerPush - スキマスイッチ

MY SOUND ROOTS presented by Sony's Headphones

ハイレゾで感じる作り手の気概

アーティストがルーツである楽曲や自身の楽曲をハイレゾで聴き、その魅力を語る動画コンテンツ「MY SOUND ROOTS」の第3回がソニー ヘッドホンのスペシャルサイト(参照:MY SOUND ROOTSスペシャルサイト)とYouTubeで公開された。

「MY SOUND ROOTS」の最終回を飾るのは、スキマスイッチの大橋卓弥(Vo, G)と常田真太郎(Key)。2人は“サウンドルーツ”であるキリンジの「千年紀末に降る雪は」と、スキマスイッチが11月19日にリリースする「パラボラヴァ」をソニーのハイレゾ向けヘッドホン・MDR-1Aでリスニングしている。

今回ナタリーでは、動画で未公開だった2人の言葉からハイレゾやMDR-1Aの魅力に迫った。

取材 / 熊谷朋哉 文・構成 / 加藤一陽 撮影 / 小坂茂雄

“スタジオで聴いた音をそのまま届けるのが理想的”

キリンジの緻密なアレンジが余すところなく楽しめる

──お2人はキリンジが2000年に発表した「千年紀末に降る雪は」を“サウンドルーツ”として挙げています。「MY SOUND ROOTS」本編ではキリンジから「影響を受けた」と話していましたね。

常田真太郎(Key) はい、キリンジさんは大好きなアーティストなんです。中でも「千年紀末に降る雪は」にはかなり影響を受けているし、何度も聴いているから曲に対する思い出もたくさん詰まっていて。

大橋卓弥(Vo, G)

大橋卓弥(Vo, G) あの時代にこういう音楽をやっているというのがすごく新鮮でしたね。聴いた瞬間に「オシャレでカッコいい!」って思ったのを覚えています。当時僕たちがやりたかった音楽に通じるところがありましたし。

常田 ウチらがやっている音楽って、最初は「ちょっと大人びてはいやしないか?」ってよく言われていたんです(笑)。そういう意味でも、こういった音楽で評価されるキリンジさんたちの存在には助けられたというか、救われたところがありました。あとキリンジさんのアルバムって、僕らの初期のアルバムを録ってくださっていた松田龍太さんがエンジニアだったんですけど、その方にいろいろレコーディングの裏話を聞いて勉強していましたね。

──今回は「千年紀末に降る雪は」のハイレゾバージョンをMDR-1Aで聴いていただきました。いかがでしたか?

大橋 いろんな音が細かいところまではっきり聞こえました。「こういうサウンドを作りたかったんだろうな」というのがわかりやすい……キリンジのお2人が求めていた音に近いんじゃないかな。

──細かいところというのは?

大橋 例えば、ピアノの低音とベースの低音がちゃんと聴きわけられたりして。あの曲って、そういう部分がわかるとキリンジさんたちの意図がもっと伝わる気がするんです。逆に本人たちが聴いてほしくないところもわかってしまうかもしれないですけど……(笑)。でも細かいところまで再現されてるっていうのはアーティストとしてもうれしいと思います。

常田 松田さんが昔、「キリンジのリスナーはオーディオ好きの方が多くて、ちょっとした“にじみ”みたいなものにもすぐ気付くから、エンジニア泣かせなんだよね」って苦笑していたんですけど。今回ハイレゾ版をMDR-1Aで聴いてみて、そういう作品に向き合うエンジニアの気概だったり、キリンジのお2人やプロデューサーの冨田恵一さんによる計算しつくされたアレンジだったりを余すところなく楽しむには打ってつけだと思いました。ハイレゾ音源のよさがしっかりと伝わってきましたね。

大橋 キリンジさんって細かいところまで自分たちで考え計算しながら音楽を作っているユニットなので、彼らの楽曲は何かをしながら聴くBGMという感じじゃなくて、「よしこれを今から聴こう」っていうモードで音楽を聴くっていう楽しみ方もできると思うんです。このヘッドホンはそういう聴き方をするには最適でしょうね。ハイレゾじゃない音源とハイレゾ音源を比べてみても、よりハイレゾの魅力が感じられて楽しそうですね。

“ハイレゾはアーティストの気持ちも表現できる”

「こういう音にしたい」って気持ちが無駄にならない

──お2人は7月に発表した「Ah Yeah!!」で初めてハイレゾ音源の配信を行いましたが、ハイレゾ配信に踏み切った意図は?

大橋 リスナーの音楽の聴き方が増えている中で、僕らはどこに標準を合わせていこうかと考えていて。CDならCDの音を大切にしたいし、アナログレコードも作ってみたいなあとかいろいろ思っているんですけど、配信について考えたときに、ハイレゾだと自分たちが作ったままの音だったりレコーディングスタジオで聴いたサウンドをそのまま届けられるから理想的だと思ったんですね。

常田 レコーディングをある程度経験すると、例えば「あー、この音すごくいいけど、きっとCDにしたらこういう音になるだろうな」って予測できるようになるんですよね。

──マスターの音質が、CDにする時点で変わってしまうということですね。

常田真太郎(Key)

常田 はい。でもハイレゾで配信すれば、ほぼマスターと同じ状態でリスナーに届けられますから。それで作り手や演奏者のマインドの部分まで感じてもらえるんじゃないかと思って。

──では、今回新曲「パラボラヴァ」のハイレゾバージョンを聴いてみていかがでしたか?

大橋 自分たちがレコーディングのとき「こういう音にしたい」と思って作った音が再現されていますね。

常田 演奏家や歌い手の気概みたいなものが一番出ている場所……例えば間奏明けの最後のサビなんかはすごいキメッキメなんですけど、そこの空気感はハイレゾでかなりよく表現されていると思います。卓弥の息使いや息継ぎとかも生々しいですし。あと、「せーの」でガッと演奏を合わせて、途中にぶわっと離れて、さらにまたガッと合わせて……っていうレコーディング時のアンサンブルの緩急もしっかり感じられます。そういう意味で、ハイレゾはアーティストの気持ちの部分も表現できるなって。

大橋 タムの1個1個の音だったりとか、ベースの太さとか……細かい話になってきますけど、そういった部分もレコーディング時に求めていた音のままです。

常田 僕たちは「こういう音にしたい、ここまで拾ってほしい」と思いながらレコーディングに臨んでいるんですけど、このくらい再現してくれるとそういう気持ちが無駄にならないな。MDR-1Aにここまで再現してもらえると、「こういう音を届けたい」っていう気持ちもより強くなりますよね。これまでやってきたことが無駄にならないし、今後やり続ける意味も出てくる。

大橋 うん。僕らは2人組なので、バンド形態の曲を作るときって絶対にサポートミュージシャンに手伝ってもらうんですね。そういう楽曲のレコーディングのときには、彼らの演奏に僕らの意志を乗せて……つまり「こうしてほしいんです」「ああしてほしいんです」とかっていうのをミュージシャンの皆さんと話し合いながら音楽を作っていく。ただメロディに歌詞を乗っけて、ドラムを入れてベースを入れてっていうだけの作業じゃないんです。MDR-1Aで聴けば、そうやってみんなで作り上げているっていう、ハイレゾ音源でこそ楽しめる部分も感じてもらえると思いました。

楽器の再現性がすごいから、臨場感がある

──今回MDR-1Aを試してみて、どんなヘッドホンだと思いましたか?

常田 思ったのが、ボリュームを上げ下げしてもストレスを感じないというのがあって。音量を小さくしてもちゃんと歌が立っていましたし、音量を大きくすると楽器が立ってくる感じといいますか。高域の再現性が影響しているのかもしれませんけど。

大橋 僕はこのヘッドホン、好きでしたね。長時間使うことを考えると着け心地って重要な部分なんですけど、MDR-1Aは装着感がよくて軽い。ヘッドホンって合わないものを使うと耳が痛くなってくるんです。でもこのMDR-1Aはそういうこともないと思いますね。

常田 うん。そもそもイヤーパッドの部分が耳に当たらず、耳の周りを包み込んでくれているからね。密閉されているから低音は逃げないし。

──では、音質的な部分はいかがでしたか?

スキマスイッチ

大橋 いい音かどうかと言えばもちろんいい音なんだけど、それ以前に個人的に好きなタイプのサウンドなので、いろいろな音源で試してみたいと思いました。あとさっきシンタくんも言っていたけど、試聴したときに僕もボリュームを上げ下げしながら聴いてみたんです。これ、聴きながらボリュームを下げていくのがかなり面白いですね。ボリュームを下げても低音がなくならなくて、音像のバランスが保たれたまま音量が下がっていく感じ。

常田 相当音量を小さくしても、最後まで歌もしっかり聞こえるし。あとドラムやパーカッションの再現性もすごいから、臨場感がある。

大橋 ヘッドホンで音楽を聴く意義みたいな話につながっていくところかもしれないんですけど、音源って、ミックスのときに各楽器の配置を決めているんですね。ギターが右、ベースが真ん中、とか。MDR-1Aのようなハイレゾ向けのヘッドホンでハイレゾ音源を聴くとそれがわかりやすいというか、スピーカーよりもそういうパンニングの意図が伝わりやすい。

常田 家でオーディオで聴くのもいいんですけど、MDR-1Aだったらあえて家でもヘッドホンでリスニングしてみるっていうのはいいですね。ひょっとしたら、好きになる音楽が変わってくるかもしれませんよ。

MY SOUND ROOTS Contents Index
第1回 Gotch×中村研一
第2回 茂木欣一(東京スカパラダイスオーケストラ)×渡邊省二郎
第3回 スキマスイッチ
特別企画 美濃隆章(toe)“ハイレゾ音源”ってどんなもの?
Pick Up Headphone
Sony MDR-1A
Sony MDR-1A
低域から100kHzの超高域までを再生する広帯域40mmHDドライバーユニットを搭載。耳を包み込むような快適な装着感のステレオヘッドホン。
  • 価格:オープンプライス
  • 形式:密閉式 / ダイナミック型
  • 周波数特性:3Hz~100kHz
  • インピーダンス:24Ω(@1kHz)
  • ドライバーユニット:40mmドーム型
  • ケーブル:1.2m着脱式 / 片出し
  • 重量:約225g(ケーブル除く)
  • カラーバリエーション:2色(ブラック、シルバー)
Pick Up Music
キリンジ「千年紀末に降る雪は」
アルバム「3」Warner Music Japan
「The Freewheelin' Bob Dylan」
mora
e-onkyo music
※24bit / 96kHz FLACでの配信。販売はアルバム単位のみ

キリンジが2000年に発表したアルバム「3」収録。代表曲「エイリアンズ」をはじめ、「グッデイ・グッバイ」「アルカディア」など多数のシングル曲を収めたアルバムのラストを飾る。プロデューサーは冨田恵一。

スキマスイッチ ニューシングル「パラボラヴァ」2014年11月19日発売 / アリオラジャパン
「パラボラヴァ」
初回限定盤 [Blu-spec CD2 + DVD] 1944円 / AUCL-30024~25
通常盤 [CD] 1296円 / AUCL-169
CD収録曲
  1. パラボラヴァ
  2. 僕の青い自転車
  3. 君の話(from 新宿LOFT 2014.4.9)
  4. パラボラヴァ(backing track)
初回限定盤DVD収録内容

スペシャル・コンテンツ「Uketometai THE MOVIE~I Wanna Catch~」

スキマスイッチ
スキマスイッチ

大橋卓弥、常田真太郎のソングライター2人からなるユニット。2003年「view」でデビューして以降、「奏(かなで)」「全力少年」 など、ヒット曲を次々と生み出す。2013年7月9日にデビュー満10周年を迎え、同年8月に初のオールタイム・ベストアルバム「POPMAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~」をリリース。2014年には「Ah Yeah!!」「パラボラヴァ」「星のうつわ」とシングルを立て続けに発表。12月3日にはセルフタイトルを冠した約3年ぶりのオリジナルアルバム「スキマスイッチ」をリリースする。さらに2015年1月からは全国28カ所32公演の全国ツアーも決定している。