桜井のサックスに気付かない
──「禁断の実」は、尽きることがない欲望をテーマにした楽曲です。ソプラノサックスの演奏も桜井さんですね。
すみません(笑)。今日はインタビューだから、車の中でアルバムをかけてたんですけど「ヘタだな」って。
──そんな(笑)。
8ビートからスウィングするリズムに変わるパートがあるんですけど、メロディ楽器がないとイメージしにくいんじゃないかなと思って入れてみたんです。コンピューターの音源でデモを作って、最初は山本拓夫さんに吹いてもらおうと考えてたんだけど、自分で試しにやってみたら「けっこういいかも」と気に入っちゃった。でも、メンバーが誰もそのことに触れてくれないんですよ(笑)。どうやらソフト音源で入れてると思ってたみたいで、みんなで集まったときに「自分で吹いてるんだけど」って言ったら、「すごいじゃん!」って(笑)。
──そもそもサックスを始めたのはどういうきっかけだったんですか?
3年前くらいなんですけど、きっかけはホントにくだらないことなんですよ。僕、青いものが好きなんですね。ついつい青いギターとかを検索しちゃうんですけど、あるとき、青いおもちゃのサックスのAI広告が画面に表示されて。それに乗せられて、買っちゃったんですよ。指の使い方はサックスと同じみたいだったので、拓夫さんに教わってみようと。そしたら「これより本物のサックスのほうがラクだよ」と言われて、それで始めたんです。エンニオ・モリコーネの音楽が好きなので、モリコーネのメロディをサックスで吹いてみたくて。やってみるとけっこう面白かったんです。あと、サックスの経験がボーカルにも生きてくるんですよ。
──新しい楽器を演奏すること自体、楽しいですからね。それにしてもAIに勧められておもちゃのサックスを買うなんて、「禁断の実」の歌詞みたいじゃないですか。
ははははは。そうかもしれないですね。
「Nowhere Man」の面白味は
──「Nowhere Man ~喝采が聞こえる」もアルバムの軸になる楽曲だと感じました。多くの人がイメージする“Mr.Childrenのポップス”的な曲だと思うのですが、どんなテーマで制作されたのでしょうか?
これは初期の(エルヴィス・)コステロのイメージですね。曲ができると、今までに何度となく“コステロ”という仮タイトルを付けてきましたけど、これもその1つで。「Nowhere Man」に関しては、Aメロがコステロっぽいんだけど、Bメロでいきなりシャッフルしてて、そこが面白味だなと思ってます。歌詞はかなり悩みましたね。そもそもこの曲、「アルバムに入れなくてもいいんじゃないかな」と思ってたんですよ。9曲目の「Stupid hero」がその前にできていて、「ポップな曲調にポジティブな歌詞を乗せる」というのはもうやったなと。結局「Nowhere Man」を入れることになったんですけど、だったら歌詞はあえて意味を持たせないのはどうだろうと思って。「はぐらかしてはぐらかして」という戦法なんですけど、そこで行き着いたのが、どこにもたどり着かない「Nowhere Man」だったという。絞り出せば出てくるもんだなと思いました(笑)。
──「Nowhere Man」というThe Beatlesの名曲もありますね。The Beatlesの曲名をタイトルにするのは「Tomorrow never knows」以来かも。
そうですね。The Beatlesの「Nowhere Man」の邦題は「ひとりぼっちのあいつ」じゃないですか。なのでこの曲の歌詞にも「ひとりぼっちの Nowhere Man」と書いたんですよ。
聴き手としても音楽に力をもらってきた
──もう1曲お聞きしておきたいのが、「Umbrella」について。ソウルミュージックの雰囲気を感じさせるベースライン、憂いを帯びたメロディが印象的なミディアムチューンですが、どういう曲想から始まったんですか?
この曲はずいぶん前からあって、最初の段階ではもうちょっとフォーキーだったんです。制作期間中に沖縄に旅行したんですけど、さすがにコンピューターを持っていくのはどうかなと思って、iPadだけ鞄に入れたんですよ。コードを打ち込んだらAIがベースやキーボードを弾いてくれるソフトがあるんですけど、それを使ってるときに「あれ? これは面白いものができるかも」と思って。それがヒントになって、今の形に近付いていった感じですね。
──どうにもならない現実もある。それでも「明日が手招きしている」という歌詞もアルバムのコンセプトにつながっていると思います。やはりこのテーマを伝えたかったのでしょうか?
うーん、どうなんでしょうね。僕は何かを伝えたくて歌詞を書くことはあまりないんですよ。ただ、聴いてくださる方の心のどこか、想像力のどこかに光が差すような曲を届けたいという気持ちはあって。僕自身、聴き手として音楽に力をもらってきたから、作る側としてもそうありたいのかな。今はどちらかというと、聴くよりも歌うこと、プレイすることのほうが好きなんですけどね。
お客さんが歌っている姿を想像しながら
──4月には全国ツアー「Mr.Children Tour 2026 "Saturday in the park"」がスタートします。アルバム「産声」の楽曲がライブでどう表現されるか、どう変化するか楽しみです。
今回のアルバムはアリーナのライブを意識して作ったところがあって。前作の「miss you」はどちらかという閉鎖的、内向的なアルバムで、ツアーもそういう雰囲気で回ってたんですよ。お客さんにサビを歌ってもらったり、コミュニケーションを取る場面も少なくて、だんだんそれが物足りなくなってきてしまった。「もっと皆さんとコミュニケーションを取りたい」という気持ちがあったし、それが今回のアルバムのメロディやアレンジのモチーフにつながってるんですよ。コーラスパートもふんだんに入れているけど、それもアリーナでお客さんが歌っている姿を想像しながら作りました。
──ライブの影響はやはり大きいんですね。30周年を記念したベストアルバム「Mr.Children 2011 - 2015」「Mr.Children 2015 - 2021 & NOW」のインタビューで桜井さんは「51歳になったときに、なぜか『ここからまた始めるんだ』という気持ちになって」とコメントしていて(参照:Mr.Children桜井和寿ソロインタビュー|「30周年は単なる入り口でしかない」ミスチルが見据える未来への道のり)。今はどうですか?
そういうことはあまり考えなくなりました。いい曲ができると「これであと2年やれる」と思うし、ちょっと声の調子が悪ければ、明日にでも辞めたいと思う(笑)。そういうことを繰り返しながらやってますね、今は。
公演情報
FATHER&MOTHER Special Prelive "Saturday in the garden"
- 2026年3月24日(火)東京都 東京ガーデンシアター
- 2026年3月25日(水)東京都 東京ガーデンシアター
Mr.Children Tour 2026 "Saturday in the park"
- 2026年4月4日(土)千葉県 LaLa arena TOKYO-BAY
- 2026年4月5日(日)千葉県 LaLa arena TOKYO-BAY
- 2026年4月11日(土)神奈川県 横浜アリーナ
- 2026年4月12日(日)神奈川県 横浜アリーナ
- 2026年4月25日(土)愛知県 日本ガイシホール
- 2026年4月26日(日)愛知県 日本ガイシホール
- 2026年5月9日(土)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
- 2026年5月10日(日)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
- 2026年5月16日(土)福岡県 マリンメッセ福岡 A館
- 2026年5月17日(日)福岡県 マリンメッセ福岡 A館
- 2026年5月30日(土)大阪府 大阪城ホール
- 2026年5月31日(日)大阪府 大阪城ホール
- 2026年6月13日(土)香川県 あなぶきアリーナ香川
- 2026年6月14日(日)香川県 あなぶきアリーナ香川
- 2026年6月20日(土)神奈川県 ぴあアリーナMM
- 2026年6月21日(日)神奈川県 ぴあアリーナMM
- 2026年6月27日(土)北海道 北海道立総合体育センター 北海きたえーる
- 2026年6月28日(日)北海道 北海道立総合体育センター 北海きたえーる
- 2026年10月3日(土)福井県 サンドーム福井
- 2026年10月4日(日)福井県 サンドーム福井
- 2026年10月24日(土)静岡県 エコパアリーナ
- 2026年10月25日(日)静岡県 エコパアリーナ
- 2026年10月31日(土)東京都 有明アリーナ
- 2026年11月1日(日)東京都 有明アリーナ
- 2026年11月14日(土)佐賀県 SAGAアリーナ
- 2026年11月15日(日)佐賀県 SAGAアリーナ
- 2026年11月21日(土)広島県 広島グリーンアリーナ
- 2026年11月22日(日)広島県 広島グリーンアリーナ
プロフィール
Mr.Children(ミスターチルドレン)
1989年に結成されたロックバンド。メンバーは桜井和寿(Vo, G)、田原健一(G)、中川敬輔(B)、鈴木英哉(Dr)の4人。1992年5月にミニアルバム「EVERYTHING」でメジャーデビューを果たし、徐々に人気を高めていく。1993年11月発売の4thシングル「CROSS ROAD」がドラマ主題歌に使用されバンドにとって初のミリオンヒットとなる。その後も「innocent world」「Tomorrow never knows」「名もなき詩」「終わりなき旅」といったシングルや、「Atomic Heart」「深海」「BOLERO」「IT'S A WONDERFUL WORLD」「HOME」などのアルバムがミリオンセールスを記録。2022年4月から6月までデビュー30周年を記念した全国ツアー「Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス」を行い、5月にベストアルバム「Mr.Children 2011 - 2015」「Mr.Children 2015 - 2021 & NOW」を同時リリースした。最新アルバムは2026年3月25日リリースの「産声」。2026年4月から11月にかけて全国ツアー「Mr.Children Tour 2026 "Saturday in the park"」を実施する。
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