水樹奈々の第10子は「テンポ200の暴れん坊」

──そして「君よ叫べ」は通算10曲目となる水樹さん自身の作曲で、ブログでは「無事に水樹第10子が生まれました～っっ（≧∇≦）」と紹介してましたね。かつ「テンポ200の暴れん坊っ！（笑）」と。

三嶋プロデューサーからの私への作曲のテーマは、いつもアルバムが8割方完成した頃に届くんです。もっと早く言ってくれたら時間をかけて作れるのに（笑）。でも、アルバムの全体像が見えたところで最終的に必要な要素を加えるのが、水樹曲の役目になってるんですよね。

──今回はどんなテーマを？

今作はおっしゃっていただいた通り、生身感のある日常的なテーマの楽曲が多くなったので、そのぶん水樹奈々の代名詞的なシンフォニックロックがない。だから今回はそれにチャレンジしてみるのはどうだろうと。「いくつも歌ってきて体の中に染み付いているはずだから、書ける！」って言われて「そんなー！」みたいな（笑）。しかもマイナーコードではなく、「NEXT ARCADIA」（2010年7月発売の8thアルバム「IMPACT EXCITER」収録曲）や「VIRGIN CODE」（アルバム「SUPERNAL LIBERTY」収録曲）の血を継ぐメジャーコードの曲、明るくて泣ける曲、というオーダーでした。

──難しい発注ですね。

「上松さんですらいつも締切ギリギリまで悩んでるシンフォニックロックを私が!?」なんて言いながら、3週間ぐらい悩みました。「転調は絶対に入れたい」というオーダーもあったので、最終的に明るくするなら最初はマイナーから……と思ったけど、暗く聞こえるマイナーコードではイメージと違うから、ジャズで使うような変わった音を当てていく形でコードを構成して。メロディはアルバム全体のことを考えて、あまりトリッキーにしすぎない、素直なメロディラインにして、アレンジやコードの乗せ方で遊ぶように……。

──めちゃめちゃハイレベルな作業ですね！

そうやっていろいろ考えているうちに、BPMが200になってしまい（笑）。アレンジは自分の中で鳴っている音があったので、藤永（龍太郎 / Elements Garden）さんには「この曲はとにかくストリングスとベースを主役にしてください」とお願いしました。普段ならサポートに回る楽器を前に出して、面白い動きをさせたかったんです。アレンジのイメージを鼻歌で録音して、藤永さんにショートメールで送って……レコーディング1時間前までウンウン考えてました。ストリングスにはツアーでもいつもご一緒している門脇（大輔）さんが入ってくださっていたので、スタジオで「こんなふうにしたいんです！」と口頭でお伝えして（笑）。門脇さんは「奈々さんのやりたいことはよくわかりました」っておっしゃって、ガンガン弾いてくれました。長くサポートしてくださっているからこそ、私の好みの音使いや、やりたい表現を把握してくださっているので、私の右脳的な発言もすぐ理解してくださって。「こういうことですよね？」「そうです！ これこれ！」みたいな（笑）。

──ここまでずっと「生身で」「大人で」的な話に終始していたのに、自作曲だけは暴れん坊みたいな結論に（笑）。

あははは（笑）。そうですね。

「チャレンジと自己解放」の2017年

──1月からのツアーは、7年ぶりの冬ツアーになるということで。

はい。しかも1月“7”日からスタートするんですよ（笑）。201“7”年で3“7”歳……あまり大きい声で言えないですけど（笑）、7尽くしです。あと今回のツアーは誕生日を大阪で迎えるんですよ。誕生日当日にライブがあるのはひさしぶりなので楽しみです。

──アルバムを携えてのツアーであること、そして「ZIPANGU」というテーマが用意されたうえで、どのようなステージが展開されるのか。まずはアルバムをしっかり聴き込んで、というところでしょうか。

ぜひとも、しっかり聴き込んで来ていただけたら。夏ツアーとは選曲も違ってくると思いますので、そのへんも楽しみにしていただければと思います。アルバムの新曲も、Cherry Boys（水樹のライブサポートバンド）が演奏するとまた違った表情が見えてくると思うので、私も今からとても楽しみです。

──ツアーで始まる2017年は、どんな1年になりそうですか？

やっぱり“7”の年なので、最高な1年にしたいと思っています。声優デビュー20年目の年でもあって、夏にはまた新たな挑戦としてミュージカルも控えているので（2017年7月から8月に東京・帝国劇場で上演されるミュージカル「ビューティフル」。参照：水樹奈々＆平原綾香、帝国劇場でミュージカルW主演）、より自分の感情を放出する場所が増えてくると思います。ミュージカルは、これまで声優として重ねてきた演技の部分と、歌手として積み重ねてきた歌の両方が合わさる場所なので、今までとは違った水樹奈々の一面が出せるんじゃないかなって。今考えている2017年のテーマは「チャレンジと自己解放」ですね。