ナタリー PowerPush - 水樹奈々

強い絆を胸に次の一歩へ

「STAR ROAD」誕生秘話

──9曲目の「STAR ROAD」は作詞のみならず作曲まで水樹さん自身が手がけています。この曲ができあがった背景を詳しく聞かせてもらえますか?

私、歌詞を書くときは家にこもってないと書けないんですけど、曲については不意に降りてくるというか、リラックスした状態のときに突然降りてくる傾向がどうやらあるんです(笑)。今回もアルバムのために曲作りをしようと思って、いざお家でキーボードの前に座って「うーん、うーん」と粘ってみたものの、なかなかメロディが降りてこなくって。これはちょっと気分を変えて、新しい刺激を得たほうがいいかもしれないと思って、ある日「朝までに帰ってくれば仕事に間に合う!」と思って、軽井沢のほうにビューッと(笑)。

──おお(笑)。

「生活のテリトリーを脱出することで、何か得るものがあるんじゃないか」って。これで曲ができなかったらただ遊びに行っただけになっちゃうな……ってちょっとドキドキしながら(笑)。で、温泉に入って美味しいものを食べて、ちょっとリラックスしたところでさあ制作しようと思ってふと夜空を見上げたら……本当にきれいな星空がパーッと広がってたんです! その日はすっごく天気が良くて、流れ星をいくつも見ました。しかもほかのお客さんはみんなもう寝静まっていて、私以外誰もこの空を見てないわけですよ! 紅葉し始めたばかりの頃の軽井沢で、気温は5度、6度くらいだったんですけど、これって今回のアルバムがリリースされる頃の東京と同じくらいかなーって。キーンと寒い冬の夜、東京でも空気が澄んで空がすごくきれいに見えますよね。みんながアルバムを耳にする頃、きっとこういう気温でこんな情景が浮かぶのかなって想像してたら、キーになるメロディがスッと降りてきて。そのフレーズを大事に持ち帰って、2~3日かけて作ったのがこの曲です。

──思い切って旅に出た結果、偶然にも季節感まで先取りすることができたと。その賭けは大成功でしたね。

はい。思い切って行って良かったなあとしみじみ。あったかい東京にいたら、もしかしたらこの感覚はつかめなかったかもしれないですね。冷たーい空気の中で、でも輝いてる星はすごくあったかい。そういう温度感の曲ができたかなと思います。

学生時代の“約束”が現実に

──そしてアルバムのラストを飾る「約束」ですが、この曲で歌詞を共作されているSAYURIさんは、学生時代の同級生なんですよね。

高校時代からの大親友なんですよ、実は。彼女も歌を歌っていて、今は作詞家として活動しているんです。彼女とは15歳のときに出会って以来、17年間にわたってずっと親友で、15歳で上京した私にとってはもしかしたら一緒にいる時間は家族以上に長いかもしれません。家族みたいな存在であり、良きライバルであり、なんでも話せる親友でもある、特別な関係なんです。そんなつながりの深い人と一緒に言葉を紡げたらいいな、と考えて彼女に共作をお願いしました。

──なるほど。では2人の中でテーマをどのように膨らませたのでしょうか。

夢を目指す人たちへのメッセージソングだったり、いつも応援してくれてるみなさんへの「ありがとう」っていう感謝の気持ちを伝える歌、みんながそれぞれ大事な人のことを思いながら聴いてもらえる歌にしたいねって。2人でちょっとずつ言葉を出し合って「2人で見た学生時代の情景を入れたいよね」とかいろいろ話しながら「このフレーズ入れたらいいんじゃない?」「だったらこれはこうじゃない?」っていろんな意見を交わしながら作っていきました。

──長年の親友としての感覚を残しつつ、プロ同士として歌詞を作り上げていくという。

本当に感慨深いです。2人とも昔から本当に夢だけは大きくて(笑)……お互いまだデビュー前の卵だった頃、電車の中で大きな夢を熱く語ってたんです。そしたら隣に座ってたおじさんが「子供のくせに生意気なんだよ!」って言い残して新宿駅で降りていったんですよ。

──あはははは!(笑)

それがもう、ずーっと忘れられなくて(笑)。だから「電車に揺られ語り合ったよね」という歌詞が入ってるんですけど(笑)、そんな実際のエピソードも入ってたりして。「お互いの夢を叶えられたら、2人でこういうことやって……」と話してたことが、今まさに現実になったんだ! ということを、作詞をしながら改めて感じられて、すごくうれしかったです。夢はどんなに時間がかかっても、諦めずにがんばれば叶うんだって。

──知らないおじさんにまでバカにされたけど(笑)。

そうそうそう(笑)。「子供のくせに!」と言われて「いいじゃないですか子供なんだから!」って心の中で反論してましたけど(笑)。「いろんな人に笑い飛ばされても、信じてがんばっていれば少しずつでも形になって、いつかは花開くときが来るよ」って、今自分の夢、将来に向かってがんばってるみんなへの応援ソングにもなるといいなって。

──新宿駅のおじさんも、歌番組を観ながら「この水樹奈々って子はイイね」とか言ってるかもしれないですよ。当時怒鳴りつけた女の子とは知らずに。

ははははは(笑)。だったらうれしいですけどね(笑)。

収録曲
  1. アヴァロンの王冠 [作詞:Hibiki / 作曲:藤田淳平(Elements Garden)/ 編曲:Evan Call(Elements Garden)]
  2. Naked Soldier [作詞・作曲:KOUTAPAI / 編曲:中山真斗(Elements Garden)]
  3. Get my drift? [作詞:Hassy / 作曲:加藤肇 / 編曲:大西省吾]
  4. Lovely Fruit [作詞:Hibiki / 作曲・編曲:上松範康(Elements Garden)]
    フジテレビ系TVアニメ「トリコ」エンディングテーマ
  5. ダーリンプラスティック [作詞:藤林聖子 / 作曲・編曲:伊藤寛之]
  6. BRIGHT STREAM [作詞:水樹奈々 / 作曲:吉木絵里子 / 編曲:藤間仁(Elements Garden)]
    映画「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's」主題歌
  7. 星屑シンフォニー [作詞・作曲:しほり / 編曲:齋藤真也]
  8. LINKAGE [作詞:ゆうまお / 作曲:俊龍 / 編曲:加藤裕介]
    ニンテンドー3DS・PSP専用ゲームソフト「アンチェインブレイズエクシブ」主題歌
  9. STAR ROAD [作詞・作曲:水樹奈々 / 編曲:藤間仁(Elements Garden)]
  10. Synchrogazer -Aufwachen Form- [作詞:水樹奈々 / 作曲・編曲:上松範康(Elements Garden)]
    TVアニメ「戦姫絶唱シンフォギア」オープニングテーマ
  11. Crescent Child [作詞:藤林聖子 / 作曲:松井喬樹 / 編曲:Integral Clover]
  12. 奇跡のメロディア [作詞:水樹奈々 / 作曲:上松範康(Elements Garden) 編曲:藤間仁(Elements Garden)]
    PSP専用ソフト「シャイニング・アーク」主題歌
  13. METRO BAROQUE [作詞:水樹奈々 / 作曲:やしきん / 編曲:中山真斗(Elements Garden)]
    劇場版「BLOOD-C The Last Dark」主題歌
  14. Happy☆Go-Round! [作詞:Rico / 作曲・編曲:齋藤真也] フジテレビTWOオリジナルドラマ「スイッチガール!!2」主題歌
  15. Sacred Force -Extended Mix- [作詞:Hibiki / 作曲:しほり / 編曲:藤間仁(Elements Garden)]
    劇場版「魔法少女リリカルなのはThe MOVIE 2nd A's」挿入歌
  16. 約束 [作詞:SAYURI、水樹奈々 / 作曲:吉木絵里子 / 編曲:陶山隼]
水樹奈々(みずきなな)

プロフィール画像

愛媛県出身の声優アーティスト。1997年に声優としてデビューし、「魔法少女リリカルなのは」「シスター・プリンセス」「NARUTO -ナルト-」といったアニメ作品で人気を集める。2000年にはシングル「想い」で歌手デビュー。2009年6月にリリースされたアルバム「ULTIMATE DIAMOND」で、声優アーティストとして初のオリコンウイークリーチャート1位を獲得した。同年12月には「NHK紅白歌合戦」に初出場。2011年12月には声優アーティスト初の東京ドームコンサートを2日間にわたって開催し、大成功に収めた。2012年12月12日に通算9枚目のオリジナルアルバム「ROCKBOUND NEIGHBORS」をリリース。年末には4年連続となる「NHK紅白歌合戦」への出演が決定している。