「あなたの子供が欲しい」みたいなことをすごく遠回しに言おうと
──そんなアルバムは「Femme Fatale」というタイトル曲から始まります。歌い出しで「自由なんて要らない」と繰り返していますが、2年前の「Liberty」では「自由を手に入れたい」と叫んでいましたよね?
そこ、ポイントなんです。「自由」の捉え方が前と違うんですけど、これは“あなたを一生愛する”っていうことを違う言葉で言いたかったんです。自分の生涯で愛する人はあなただけ。その決意を愛とか好きとか、そういう言葉を使わずに伝えようと。それって、もう自由なんて要らないってことだなと思ったんです。でも、これは男性にはわからないと思うな。
──自己犠牲の精神みたいなことですか? それとも無償の愛?
無償の愛に近いかな。多くの女性は結婚したら、旦那さんとかパートナーを中心に考えると思うから。そうすると、自分の生活や自分のやりたいこと、自分の時間っていうより、パートナーに合わせて動くようになる。少なくとも私の周りはそうだし、自分もそういうものだと思ってるから、そういう意味で自分の自由って要らないわって思うんです。
──リード曲の「あたしの細胞」はどんなふうに作ったんですか?
これはもともとスタジオセッションから生まれた曲ですね。私はインドが好きだから、最初はインド音楽をやりたかったんです。たとえばパンジャビMCがジェイZとやった「Beware Of The Boys」みたいな。
──バングラビートですね。
そう。で、最初はそれっぽく作っていったんですけど、私はレゲエも大好きだから、だんだんレゲエになっていっちゃって(笑)。あと、この曲では1個のフレーズを連呼するような単純なサビを作りたいと思っていたんですね。そしたら「あたしの細胞」っていうフレーズが浮かんできて。そこから歌詞を書いていったんですけど、「あなたの子供が欲しい」みたいなことをすごく遠回しに言おうと思ったんです。
──細かい部分ですが、タイトルの一人称を「わたし」じゃなくて「あたし」にしたのはどんな思いからなんですか? そこにこだわりを感じたんです。
基本「わたし」って言いたいんです。「わたし」のほうが品があるし。なんですけど、この曲とか、強めに意志がある女性を描きたいときは「あたし」になる。それは昔から意識的に書き分けてるんです。
──なるほど。
でも、デモを作ってる段階では「わたし」にしたときもあったんですよ。「わたしの細胞」のほうがきれいだなと思って。でも最終的に「あたし」に戻した。そっちのほうがアグレッシブ感があるなと思ったんです。
人を愛することを気付かせる歌になったらいいな
──では、今回のアルバムの裏リード的な曲はありますか?
「あたしの細胞」の次に推していくのは「貴方はまだ愛を知らない」です。あと、「私の名はイノセンス」。この2曲は特に好き。
──「貴方はまだ愛を知らない」のほうから制作エピソードを聞かせてください。
これも「知らない」を漢字にするか平仮名にするか、もう100万回くらい悩んで(笑)、結局漢字にしたんですけど。これはストックしていたトラックがあったことを思い出して……それこそ「リップスティック」を作っていた頃だから、2015年かな。そのトラックが気に入り過ぎてて、すでに2パターンくらい違う歌を書いてたんです。それを引っ張り出してきて、それとはまた違うパターンで作ったんです。もともとお気に入りだからサーッとメロディが出てきて、次に歌詞を付けようと思ったときに「貴方はまだ愛を知らない」っていう言葉が出てきたから「きた!」と思ってブワーッと書いていきました。
──「貴方はまだ愛を知らない」で歌いたかった思いは?
「こんなにあなたのことを愛してる」っていう気持ちが相手に本当に、本当に、伝わってるのか?って思いを込めた「貴方はまだ愛を知らない」なんです。それプラス、聴いてくださる方をハッとさせるような歌にしたくて。「私って本当に愛を知ってるの?」「っていうか愛って何?」みたいな。人を愛することを気付かせる歌になったらいいなと思ってます。いろんな愛の形があるけど、私はこの愛を見つけたから人にどう思われてもいいし本当のことは私たちしか知らない。なおかつ、私もまだ本当の愛を知らないかもしれないし、あなたもまだそれを知らないかもしれないですよね?って言う感じかな。
──この曲は、「I HATE YOU」に収録していた「二人の関係」の続きというようなところもあるんですか?
続きに近いと思います。あと、今回は自分と同世代の女性に絶対刺さるだろうと思える曲が多くて。「結婚したいのになかなかプロポーズされない」みたいな子もいっぱいいるだろうから、「本当はあなたとずっと一緒にいたいのに」みたいな気持ちを歌っている曲を作りたいなと思ってたんです。
──「私の名はイノセンス」は、どんなところがお気に入りなんですか?
これはアルバムの中で最初のほうにできた曲なんですけど、自分のピュアな部分を歌にできたっていう充実感がありました。これが今回の中でいちばん“マリア様”。
──最初の時期にできたということは、真情がまずバーッと発露したっていうことなんですかね。
そうかも。これを作ったときはけっこう神懸かっていて。ふと「あ、『私の名はイノセンス』っていう曲書こう」と思ってブワーッと歌詞を書いて、それを見ながらメロディを作っていったんですけど、10分くらいでできあがったから。歌詞の意味ははっきりとわからなくていいと思っていたし、感覚優先で作っていったんです。
──あと、「私の名はイノセンス」「貴方はまだ愛を知らない」「Funny Love」の曲間がほかと比べて短いところもこだわりですか?
そうです。曲間はいつも超こだわるんで。でも今回はいつも以上に悩みました。
──曲間を詰めることで、この3曲で1ブロック、みたいな聴かせ方をしたいのかな?と考えたんです。
ブロックというよりもアルバム全体の流れですね。アルバムはやっぱり流れで聴かせたいんですよ。1曲目から最後までいい流れで聴くっていうところが大事だから、そのための曲間。
──曲間と同時に曲順でも、いくつかの世界観ごとに分けているように感じました。
それはあります。ざっくり流れを描きたいから、1曲目から5曲目まではひとくくり。で、「あたしの細胞」から8曲目の「顔も見たくない」までで1つ、「KING / QUEEN」から「BURN」までで1つの流れっていう。最後の「ROMANCE」は1曲だけタイプが違うんで、そこは曲間をなるべく空けて、最後の締めの曲っていうふうにしてるんです。
──その「ROMANCE」もillicit tsuboiさんにアルバム用にミックスしてもらうことで、全体のトーンになじむようになっていますね。
それは最初から決めてたんです。アルバムになったら絶対「ROMANCE」はミックスし直すって。もともとのミックスもメジャー感があって映画に合っていたけれど、これはこれでバッチリになってよかったなって思ってます。
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力を抜くことの格好よさ
- 加藤ミリヤ「Femme Fatale」
- 2018年6月20日発売 / Sony Music Records
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初回限定盤 [CD+DVD]
4860円 / SRCL-9817~8 -
通常盤 [CD]
3300円 / SRCL-9819
- CD収録曲
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- Femme Fatale
- I HATE YOU
- 私の名はイノセンス
- 貴方はまだ愛を知らない
- Funny Love
- あたしの細胞
- 新約ディアロンリーガール feat. ECD
- 顔も見たくない feat. JP THE WAVY
- KING / QUEEN
- オンリー・ロンリーマン
- Don't let me down
- BURN
- ROMANCE(Album Ver.)
- 初回限定盤DVD収録内容
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- “新約ディアロンリーガール feat. ECD”Music Video
- “I HATE YOU”Music Video
- “顔も見たくない feat. JP THE WAVY”Music Video
- ROMANCE Music Video~Bonus Movie~Making of “ROMANCE”Music Video
ライブ情報
- 「CELEBRATION」tour 2018 supported by KAWI JAMELE
- 2018年6月3日(日)大阪府 Zepp Namba
- 2018年6月6日(水)愛知県 Zepp Nagoya
- 2018年6月10日(日)東京都 Zepp Tokyo
- 2018年6月11日(月)東京都 Zepp Tokyo
- 2018年7月5日(木)北海道 Zepp Sapporo
- 2018年7月7日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2018年7月12日(木)広島県 JMSアステールプラザ 大ホール
- 2018年7月15日(日)鹿児島県 鹿児島市民文化ホール 第1ホール
- 2018年7月16日(月・祝)福岡県 福岡サンパレス
- 2018年7月23日(月)新潟県 新潟県民会館 大ホール
- 2018年7月25日(水)石川県 本多の森ホール
- 2018年7月28日(土)岐阜県 岐阜市民会館 大ホール
- 2018年7月29日(日)静岡県 静岡市清水文化会館(マリナート)大ホール
- 2018年7月31日(火)京都府 ロームシアター京都 メインホール
- 2018年8月5日(日)長野県 駒ケ根市文化会館
- 2018年8月12日(日)青森県 六ヶ所村文化交流プラザスワニー
- MILIYAH BIRTHDAY BASH LIVE 2018
- 2018年6月22日(金)東京都 新木場STUDIO COAST
- 加藤ミリヤ(カトウミリヤ)
- 1988年生まれ、愛知県出身のシンガーソングライター。2004年9月にシングル「Never let go / 夜空」でメジャーデビューする。その後「ECDのロンリーガール feat. K DUB SHINE」のアンサーソングである「ディア ロンリーガール」、UA「情熱」をサンプリングした楽曲「ジョウネツ」など話題作を数多く発表。女性からの共感を呼ぶリアルな歌詞が魅力で、同年代女性のカリスマとして支持されている。2009年5月には同い年の清水翔太とコラボシングル「Love Forever」を発表し、人気アーティスト同士の共演は大きな話題を集めた。また同年11月には初の日本武道館ワンマンライブを開催。2011年に初のベスト盤「M BEST」でオリコン週間ランキング初登場1位を記録した。2014年には清水とのコラボツアー「加藤ミリヤ・清水翔太 THE BEST 2MAN TOUR 2014」で全国を回る。翌年には峯田和伸(銀杏BOYZ)とのコラボシングル「ピース オブ ケイク ―愛を叫ぼう― feat. 峯田和伸」を発表。2016年には小説家として、自伝的小説「幸福の女神」を刊行する。2017年4月にはアルバム「Utopia」をリリースし、12月に「ディア ロンリーガール」を再構築した「新約ディアロンリーガール feat. ECD」を発表した。2018年5月に映画「ラブ×ドック」の主題歌を表題曲とするシングル「ROMANCE」を発売。6月に10枚目のアルバム「Femme Fatale」をリリースする。