力を抜くことの格好よさ
──インタビュー冒頭、「KING / QUEEN」と「オンリー・ロンリーマン」に対して、「こういうタイプの曲を入れておきたかった」という発言がありましたが、それはサウンド的に、ということですか?
そうです。サウンド感と、それにどんなメロディを乗せるのかっていうところ。
──「KING / QUEEN」はサマーチューンなんだけどチルなテイストに仕上がっていて、そこがイマドキでいいなと思いました。浮遊感があって、まどろむ感じもあって、アンニュイでメランコリックなんだけど、心地よさもあるっていう。
うれしいです。その言葉だけで満足(笑)。自分はどっちかと言うとゴリゴリ歌っちゃうタイプだと思うんで。ちょっと力を抜くことの格好よさは今回勉強になりました。
──そのスタンスは「オンリー・ロンリーマン」にも感じました。「オンリー・ロンリーマン」はセカンドヴァースに出てくるエアリーな掠れ声も色気があって素晴らしかった。
「オンリー・ロンリーマン」は、種明かしをするとDOUBLEさんなんです。お姉さんと2人でやってた頃のDOUBLEさんのバラードって本当にカッコいいと思って最近またよく聴いていて。私は1人だけどそれをやりたい、みたいな。でも、新しいモノも好きなんで、そこに今の音楽感も合わせて作ったんですよ。
こんなに自分のことを誉めたいと思ったアルバムはない
──今回の通常盤は、初めて顔出しをしていないジャケットになりました。そこにはどんな意図があるんですか?
顔を見せるかどうか、ギリギリまで悩みました。昔から「顔が要る」「顔が写ってないと」って言われ続けて、過去9枚は作ってきたんです。でも今回もそうすることで「今までのミリヤと一緒」と評価されるのが嫌だったんです。だって、今回のアルバムは今までと全然違うものになったと思うから。加藤ミリヤから遠ざかってた人にも満足して聴いてもらえるものになってると思うから。それを表現する第一歩がジャケ写だとすると、今までの流れで顔がしっかり写ってるジャケ写にして、「ああ、今までのミリヤの感じか」と思われるのはもったいないなって。だったら、顔をあえて写さないほうがいいんじゃないかって私から言い出したんです。
──今回は10作目というキリ番のアルバムでもありますが、リセット感とか「加藤ミリヤ第2章スタート」みたいな思いはあるんですか?
生まれ変わった、みたいなのはないですけど、今回はいろんな細かいことを置いといて、好きなことを好きに表現してみたっていう。「Utopia」のときも結局自分で決めたことをやってるわけだから好きなことをやってるんですけど、そのときと違うのは、今回自分の感覚的なものだけで表現していくっていうことをやってみて、「私はすごい。これはすごい」と自分で思えてるんですよ。そうしてできあがった曲を最初に聴くのはスタッフのみんなですけど、スタッフも「これはすごいね」と大満足してくれて。いいんですよ、自己満でも。でも私はこれが素晴らしいと思ってるから。この先のことはわかりません。でもこんなに自分のことを誉めたいと思ったアルバムはない。
──そう、はっきり断言できると。
「これをできる人、ほかにいます? いたら連れて来て」って感じ。表現もそうだし歌詞も歌も、歌のテクニックも含めて、これは絶対日本では自分にしかできないはずって思ってます。
──そして今回はツアーの途中にアルバムをリリースされます。これも新しい試みですね。
これをやりたかったんです。私の場合、CDを作るのはレコード会社、ライブを作るのは事務所っていうふうに役割が分かれていて。ツアーは会場を押さえるために毎年早くから日程を決めなきゃならないけど、リリースのスケジュールはそこまで慌てることなく決められる。じゃあツアーは先に決めちゃおうと。けど、そのときにアルバムタイトルを冠に付けないとツアーはできないの? そういうのって自分たちで勝手に決めてない?って。
──暗黙のうちにルールになってない?と。
まずはそういう凝り固まった流れを打破しようというところから考えたんです。ただアルバムは出したいし、ツアーもやりたいから、だったらアルバムタイトルの冠を付けずにツアーを始めて、会場に来てくれたお客さんの何割かでもリリース後にアルバムを買ってくれたらすごくうれしいなって。こうやってCDを出した場合、ツアー先でどれくらい売れるのか知りたかったところもあるからこれは実験でもあるし、あと“ご祝儀”でもあるんです。
──ご祝儀?
今回のツアーは母の結婚式がテーマなんです。自分が30歳を迎えるツアーということもあって、自分のルーツを考えたんですよ。二十代のときは母の結婚式に興味を持ったことなんてなかったのに、30歳を迎える今、「母ってどんな結婚式をしたんだろう?」とか「母の結婚式の写真を見たい」とか思うようになって。だから今回は結婚式のフォーマットでライブを作ってるんです。っていうことはご祝儀としてCDを買ってもらえばよくない?って(笑)。
──まあ、自分の結婚式じゃないのが寂しいところですが(笑)。
そうなんですけどね(笑)。だからツアー先で販売するアルバムには、“のしスリーブ”が付いてるんです。
──結婚式の招待客への引き出物、ってことで(笑)。
そう(笑)。私が買う立場だったら、そういうほうが面白いなと思ったんですよね。
- 加藤ミリヤ「Femme Fatale」
- 2018年6月20日発売 / Sony Music Records
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初回限定盤 [CD+DVD]
4860円 / SRCL-9817~8 -
通常盤 [CD]
3300円 / SRCL-9819
- CD収録曲
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- Femme Fatale
- I HATE YOU
- 私の名はイノセンス
- 貴方はまだ愛を知らない
- Funny Love
- あたしの細胞
- 新約ディアロンリーガール feat. ECD
- 顔も見たくない feat. JP THE WAVY
- KING / QUEEN
- オンリー・ロンリーマン
- Don't let me down
- BURN
- ROMANCE(Album Ver.)
- 初回限定盤DVD収録内容
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- “新約ディアロンリーガール feat. ECD”Music Video
- “I HATE YOU”Music Video
- “顔も見たくない feat. JP THE WAVY”Music Video
- ROMANCE Music Video~Bonus Movie~Making of “ROMANCE”Music Video
ライブ情報
- 「CELEBRATION」tour 2018 supported by KAWI JAMELE
- 2018年6月3日(日)大阪府 Zepp Namba
- 2018年6月6日(水)愛知県 Zepp Nagoya
- 2018年6月10日(日)東京都 Zepp Tokyo
- 2018年6月11日(月)東京都 Zepp Tokyo
- 2018年7月5日(木)北海道 Zepp Sapporo
- 2018年7月7日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2018年7月12日(木)広島県 JMSアステールプラザ 大ホール
- 2018年7月15日(日)鹿児島県 鹿児島市民文化ホール 第1ホール
- 2018年7月16日(月・祝)福岡県 福岡サンパレス
- 2018年7月23日(月)新潟県 新潟県民会館 大ホール
- 2018年7月25日(水)石川県 本多の森ホール
- 2018年7月28日(土)岐阜県 岐阜市民会館 大ホール
- 2018年7月29日(日)静岡県 静岡市清水文化会館(マリナート)大ホール
- 2018年7月31日(火)京都府 ロームシアター京都 メインホール
- 2018年8月5日(日)長野県 駒ケ根市文化会館
- 2018年8月12日(日)青森県 六ヶ所村文化交流プラザスワニー
- MILIYAH BIRTHDAY BASH LIVE 2018
- 2018年6月22日(金)東京都 新木場STUDIO COAST
- 加藤ミリヤ(カトウミリヤ)
- 1988年生まれ、愛知県出身のシンガーソングライター。2004年9月にシングル「Never let go / 夜空」でメジャーデビューする。その後「ECDのロンリーガール feat. K DUB SHINE」のアンサーソングである「ディア ロンリーガール」、UA「情熱」をサンプリングした楽曲「ジョウネツ」など話題作を数多く発表。女性からの共感を呼ぶリアルな歌詞が魅力で、同年代女性のカリスマとして支持されている。2009年5月には同い年の清水翔太とコラボシングル「Love Forever」を発表し、人気アーティスト同士の共演は大きな話題を集めた。また同年11月には初の日本武道館ワンマンライブを開催。2011年に初のベスト盤「M BEST」でオリコン週間ランキング初登場1位を記録した。2014年には清水とのコラボツアー「加藤ミリヤ・清水翔太 THE BEST 2MAN TOUR 2014」で全国を回る。翌年には峯田和伸(銀杏BOYZ)とのコラボシングル「ピース オブ ケイク ―愛を叫ぼう― feat. 峯田和伸」を発表。2016年には小説家として、自伝的小説「幸福の女神」を刊行する。2017年4月にはアルバム「Utopia」をリリースし、12月に「ディア ロンリーガール」を再構築した「新約ディアロンリーガール feat. ECD」を発表した。2018年5月に映画「ラブ×ドック」の主題歌を表題曲とするシングル「ROMANCE」を発売。6月に10枚目のアルバム「Femme Fatale」をリリースする。