加藤ミリヤ|飛び立って“うちらの時代”を 今「ディア ロンリーガール」を歌う理由

今から12年前の2005年にヒットした加藤ミリヤの「ディア ロンリーガール」。12月6日にリリースされた彼女のニューシングルの表題曲「新約ディアロンリーガール feat. ECD」は、その「ディア ロンリーガール」の着想元である「ECDのロンリーガール feat. K DUB SHINE」を歌っていた本人・ECDをゲストに迎え、ビートも再構築して作られたものだ。リリックには「ディア ロンリーガール」で印象的だった人名の連呼が引用され、新たな名前も多く追加。さらに「ECDのロンリーガール feat. K DUB SHINE」のパンチラインも飛び出すなど、細かい部分まで聴きどころの多い楽曲に仕上がっている。なぜ今彼女はこの曲を再構築したのか。そして今回のリリックに並ぶ人名は誰のことなのか。「ディア ロンリーガール」を書いた高1の頃と29歳になった現在との心境の変化や、彼女の目に映る渋谷の移り変わり、さらには新曲に引用した「うちらの時代」という言葉の奥にある本音まで激白してもらった。

取材・文 / 猪又孝

もっと音を感じたい

──新曲「新約ディアロンリーガール feat. ECD」は、アルバム「Utopia」を経て最初のシングルになります。まずはどんなものを作りたいと考えたんですか?

「Utopia」ではとにかく普遍的なものをやりたいという気持ちがあったんです。でも、だんだん自分の中で鳴ってる音の感じが変わってきたと言うか、「もっと音を感じたいな」っていうふうにシフトしてきて。

──「音を感じたい」というのはビートを感じたいというようなことですか?

そうです。「Utopia」の前のアルバムの「LIBERTY」(2016年)のときにヒップホップやR&B的な解釈の曲をある程度やって、「次は違うかも」と思ったんです。と言うのは、音の印象が強いと歌の印象が弱まる場合があるじゃないですか。「もっと歌で評価されたかった」というのが一番の理由。歌とかメロディとか自分の歌のテクニックとかに気付いてもらうためには、音の存在感は控えめでいいという考えだったんです。「普遍的なものを求めるならメロディ先行だろう」と思ったし、メロディに音を付けていく感覚で作っていた。でも、そうやってみたことで「自分はトラック先行だな」って感じるところもあって。最近、ケレラというシンガーがすごく好きなんですね。ああいう“懐かしいんだけど、すごく新しい感じがする”っていうものに惹かれていってるんです。だから別に今回の曲は原点回帰したいとか、そういう感じでもないんです。

──原点回帰と言うより、振り子現象みたいな。

そうです。反動です(笑)。

自分を鼓舞してもらいたかった

──今回、自分の「ディア ロンリーガール」を再構築しようと考えた理由は?

今年7月から「an・an」で「28」っていうタイトルの小説を連載させてもらっていて、これを自分では“ガールズトーク小説”って言ってるんですけど、28歳の女の子が5人出てくるんです。

──実際に書いたのもミリヤさんが28歳のときなんですか?

そうです。28のときに高校の同窓会みたいな集まりに行ったんです。そのときは5人じゃなくて7、8人くらいいたかな。今までは誘われても行く気がしなかったんだけど(笑)、ひさしぶりだし行ってみようと思って顔を出したら、結婚して出産してる子もいたし、そろそろ結婚する予定っていう子もいっぱいいて。そのとき、ある子に「ミリヤっていつまで仕事しようと思ってる?」って言われて、ショックだったんですよ。

──ショック!?

なんかハッとしちゃって。「え、そういう考え方なんだ?」「一緒にしないで」と思っちゃった。「いや、私はこれが自分の人生だから」とか言ったら「ええ、カッコいいー」って言われたりして、「ナゾだ……」と思ったり(笑)。

──仕事にやり甲斐を感じている人もいれば、そうじゃない人もいますからね。そういう考えがわからないわけではないでしょう?

わからないわけではないんです。そうかと思えば、結婚という制度について異議があるって言い出す、今メキシコに住んでる子もいたりして。

加藤ミリヤ

──高校を卒業して10年も経つと、それぞれに価値観も変わってきて、ライフスタイルもさまざまになってきますよね。

そうなんですよね。この年になってくると、ファンの方からも「ミリヤの結婚観を知りたい」とか言われるようになって、徐々に“恋愛感”が“結婚観”になってきた。そういうところも含めて、自分を取り巻く同世代の状況が変わってきたなと感じて書いたのが「28」なんです。

──なるほど。

で、小説を書いてるときに改めて高校時代を思い返してみたら変わったこともあるし、変わってないこともいろいろある。「じゃあ、それを歌にしたい」と思ったんです。でも、そのときに十代の自分と今の自分を照らし合わせた新しい曲を作りたいという発想は浮かばなかったんですよね。むしろ「ディア ロンリーガール」は自分の中ですごく大きな存在だったし、あれを再構築してみようと考えたんです。

加藤ミリヤ
「新約ディアロンリーガール feat. ECD」
2017年12月6日発売 / Sony Music Records
加藤ミリヤ「新約ディアロンリーガール feat. ECD」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
1700円 / SRCL-9602~3

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加藤ミリヤ「新約ディアロンリーガール feat. ECD」通常盤

通常盤 [CD]
1300円 / SRCL-9604

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CD収録曲
  1. 新約ディアロンリーガール feat. ECD
  2. 迷宮
  3. 少女時代-DFT remix-
初回限定盤DVD収録内容
  • 「新約ディアロンリーガール feat. ECD」Music Video&Making

加藤ミリヤ Christmas Premium Live -歌の会 2017-

2017年12月11日(月)大阪府 Billboard Live OSAKA
[1st]OPEN 17:30 / START 18:30
[2nd]OPEN 20:30 / START 21:30
2017年12月18日(月)東京都 Billboard Live TOKYO
[1st]OPEN 17:30 / START 18:30
[2nd]OPEN 20:30 / START 21:30
加藤ミリヤ(カトウミリヤ)
加藤ミリヤ
1988年生まれ、愛知県出身のシンガーソングライター。2004年9月にシングル「Never let go / 夜空」でメジャーデビューする。その後「ECDのロンリーガール feat. K DUB SHINE」のアンサーソングである「ディア ロンリーガール」、UA「情熱」をサンプリングした楽曲「ジョウネツ」など話題作を数多く発表。女性からの共感を呼ぶリアルな歌詞が魅力で、同年代女性のカリスマとして支持されている。2009年5月には同い年の清水翔太とコラボシングル「Love Forever」を発表し、人気アーティスト同士の共演は大きな話題を集めた。また同年11月には初の日本武道館ワンマンライブを開催。2011年に初のベスト盤「M BEST」でオリコン週間ランキング初登場1位を記録した。2014年には清水とのコラボツアー「加藤ミリヤ・清水翔太 THE BEST 2MAN TOUR 2014」で全国を回る。翌年には峯田和伸(銀杏BOYZ)とのコラボシングル「ピース オブ ケイク -愛を叫ぼう- feat. 峯田和伸」を発表。2016年には小説家として、自伝的小説「幸福の女神」を刊行する。2017年4月にはアルバム「Utopia」をリリースし、12月に「ディア ロンリーガール」を再構築した「新約ディアロンリーガール feat. ECD」を発表した。