ナタリー PowerPush - MAY'S
最大の逆境を乗り越え「Smiling」完成
ボーカルの片桐舞子が声帯結節を患い、その手術と治療のため、昨年10月に一時的な活動休止を発表したMAY'S。彼らがそのアクシデントを乗り越え、通算4作目となるアルバム「Smiling」を完成させた。初の夏に向けてのリリースとなる本作は以前に比べて陽気さや爽快さがアップ。復帰を祝福するような晴れやかなムードが満ちあふれている。
また、本作と同時に、MAY'Sのトラックメイカーである河井純一 a.k.a. NAUGHTY BO-Zの他、STUDIO APARTMENT、DJ WATARAI、TSUGE(LIL)らが参加したメジャー初のリミックスアルバム「Remaking ~Remix Collection Vol.2~」もリリース。片桐の手術を受け、今回の2枚はどのように制作が進められたのか。アルバムに込めた2人の思いを訊いた。
取材・文 / 猪又孝
手術が終わってからが大変だった
──昨年10月に片桐さんが声帯結節の治療のため、活動休止するという発表がありました。喉は昨年夏頃から不調だったと聞きましたが、どんな感じだったんですか?
片桐舞子(Vo) 声帯結節って、簡単に説明すると、マンガ家さんのペンダコみたいなもので、声帯の使いすぎてる部分にタコができる状態なんですね。私の場合は5~6年前に最初の発見をしていたんですけど、取り急ぎ手術をするような状態ではないということでケアをしながら歌ってきたんです。ただ、この3年くらいは年間で100本程ライブをやりながら、リリースも多かったので、どうしても喉に負担がかかってくるようになって、去年はいよいよ深刻な状態になってきたんです。で、去年の「Live Tour 2011 Cruising」はなんとか乗り切れたんですけど、ツアーが終わって「ホッとしたあ」と思ったら、自分の喉も「お疲れさん!」みたいになったんだと思うんです。「俺が今できることはやったぞ」みたいな(笑)。
──河井さんは病状を聞いたとき、どんな気持ちでした?
河井純一 a.k.a. NAUGHTY BO-Z(Track Making) 今思えば、しゃべり声も去年の後半からおかしかったんですよ。インタビュー映像とか見ると、場末のスナックのママみたいなガラガラ声で(笑)。でも、当時はそれが半年くらい続いてたから、周りも慣れちゃってたんですよね。冷静に考えれば、喉が悪化してるのは目に見えてるんだけど、「あ、そんなにひどかったんだ」みたいな。でも、主治医の先生に訊いたら「手術したら絶対治る、きれいになるから」っていうことだったし、手術するって決めた時点では、悲観的にならず、ポジティブに受け止めてましたね。
──3月9日に復帰ライブ「THE FACTORY presents MAY'S RETURN LIVE "39"」を行いましたが、当然、その前に歌い始めたわけですよね。それはいつ頃だったんですか?
片桐 今年の2月くらいから、今回のリミックスアルバムのレコーディングを少しずつ始めたんです。だけど、実はそれからが大変だったんですよ。
河井 肩の悪いピッチャーが肩をかばいながら投げるのに慣れ過ぎてた、みたいなね。なのに、手術して急に動くようになったら全然投げられなくなっちゃった、っていう感じだったんですよ(笑)。
片桐 結節があるときって、要はシコリがあるところを力で押しつぶして声を出してたんで、めちゃくちゃパワーを使ってたんですね。それがつるんとした状態になったし、手術で声帯の筋肉も落ちちゃってるので、パワーを支える筋力もないから、喉自体が鳴るまでに時間がかかって。声も出ないし、ピッチも悪いし、何よりもそれまでの歌い方がまったく通用しないから、最初は本当どうしようか?と思いました。
河井 だから、結構焦りましたよ。あれ、手術前の予想とちょっと違うぞって(笑)。
片桐 それで急いでボイストレーニングの先生を探して、週に2~3回ボイトレに通って。とにかく今までのことを一回忘れようと。もう一回、今からデビューする人くらいの気持ちでやろうと。そうやって気持ちを切り替えて制作に取り組んでいって、少しずつ自分でも調子をつかんでいった感じですね。
私たち自身を象徴する言葉が「Smiling」
──最新アルバムの「Smiling」は、いつ頃から制作を始めてたんですか?
河井 手術前に制作プランは立ち上がってたんです。ただ、手術前と手術後の声が1枚に混在するのはどうなんだろう?っていう気持ちがあって。それで、手術して声を出せるようになってから一気に録ったんです。
──手術を受けるということで、アルバムコンセプトなどに変更はあったんですか?
片桐 私たち、今年で結成10周年なんですね。で、10年やってきた中で最大と言っていいほどのトラブルに見舞われつつも(笑)、それを乗り越えてカムバックできる年が偶然だけどアニバーサリーイヤーになって、自分たちとしても考えさせられるところがあったんです。で、アルバムタイトルはどうしようか?って話したときに、私たち自身を象徴する言葉が「Smiling」だなって。これはファンクラブの名前でもあるんですけど、私の歌詞には“笑う”とか“笑顔”っていう言葉がすごく多く出てくるし、Smiling=MAY'Sと思ってるくらい、すごく大切にしている言葉なので、だからこそ今だな、って。で、今回は最初に「Smiling」っていうアルバムタイトルを決めてから作り始めたんです。だから、内容もそれに従っていった部分が大きいですね。
──楽曲は手術後に書いたものが多いんですか?
片桐 ストックから引っ張ってきた曲もありますね。今回はすごく最近に作った曲か、5~6年前に作った曲かどっちかなんですよ。
──古いのはどの曲ですか?
河井 「日曜日の歌」と「夏がくれたストーリー」と「Devil's Girlfriend」ですね。今回は10周年っていう思いがあったので、インディーズ時代を含め、過去のMAY'Sのテイストをちょっとずつつまみ食いしたような感じにしたいなと思ってたんです。どの時期から好きになった人が聴いても、全ての時期を知ってる人が聴いてもビビッとくる感じにしたかったんですよ。
──今回は全体的に明るくてカラッとした曲調が多い印象を受けました。
河井 そうですね。ポジティブなものが多いと思います。
──あと、手術のせいか、歌声が軽やかというか、ライトになった気がします。湿り気がなくなったというか、粘度が低くなった気がするんです。
片桐 軽やかになったっていうのは自分でも思いますね。以前は力まないと声が出ないっていう状態になっていたので、自然とパワフルなボーカルになるしかなかったんですよ。それがひとつの持ち味だったと思うんですけど、今回は今の喉に合った声の出し方を見つけて歌っていくべきだと思ったんですね。そうなると、まずは力まずに歌ったほうが一番声が出る。そういう声は自分でも新しい発見だったし、新しい部分が出せて良かったなと思ってます。
CD収録曲
- Intro ~Prologue Of Smiling~
- SKY
- Smiling
- CrazyAboutYou
- Devil's Girlfriend
- あなたを愛してる feat. 中村舞子
- 日曜日の歌
- BONDS
- Bad Man feat. DOBERMAN INC
- 今宵、月の下で feat. 上妻宏光
- I Remember You
- Honey
- YOU & I feat. LL BROTHERS
- 夏がくれたストーリー
- 運命のバラード
- Outro ~Keep On Smiling~
- STAY TOGETHER / NATURAL8
(ボーナストラック)
初回限定盤DVD収録内容
- BONDS
- SKY
- Smiling
CD収録曲
- My Everything (NBZ House Remix)
- Forever (NBZ "Eien" Remix)
- Can't Say "I Love You" (STUDIO APARTMENT Remix)
- BONDS (TSUGE a.k.a. LIL Remix)
- ONE LOVE feat. Nieve, Tunji (NBZ Hip Hop Remix)
- Spread Your Wings (Dj Chika Remix) feat. M.V.P from M-ST★R
- Daydream (DJ Deckstream Remix)
- REAL (DJ WATARAI Remix)
- Appreciation (NBZ R&B Remix) feat. Herb "Q" Kentrick
- Brave Heart (NBZ Smooth Remix)
- I WISH (NBZ June Bride Remix)
- MaMa (NBZ 90's Remix)
- LOVE (Urban Mellow Remix)
- KISS ~Unforgettable "Aishiteru" ~ (NBZ Ballad Remix)
- My Love All For You (NBZ "Kimi ni Todoke..." Remix)
MAY'S(めいず)
片桐舞子(Vo)と河井純一a.k.a NAUGHTY BO-Z(トラックメーカー)による2人組ユニット。インディーズ時代よりR&Bシーンで注目を集め、2006年発売のアナログ12inchはCISCO、DMRのチャートで1位を記録。2008年7月にシングル「My Everything」でメジャーデビューを果たす。2011年秋には舞子が声帯結節をわずらい、およそ半年間の活動休止を余儀なくされたが、2012年3月9日に東京・Shibuya O-EASTで行われたワンマンライブ「THE FACTORY presents MAY'S RETURN LIVE "39"」で完全復活。6月13日にニューアルバム「Smiling」とリミックスアルバム「Remaking ~Remix Collection Vol.2~」を同時リリースする。