ナタリー PowerPush - 片桐舞子(from MAY'S)

初ソロアルバムで対峙した「もう1人の自分」

今年メジャーデビュー5周年を迎えたMAY'S。そのMAY'Sを歌で支える片桐舞子が初のソロアルバム「Solo」をリリースした。

MAY'Sとしてのさらなる飛躍のためにトライすることになったという初めてのソロ活動は、果たして彼女にどんな思いをもたらしたのか? これまで見せたことのないディープな感情をスキルフルなボーカルセンスで紡いだ本作の話題を通して、その答えを紐解いていきたい。

取材・文 / もりひでゆき

ソロは考えたことがなかった

──今回、初のソロ作品をリリースすることになった経緯から教えていただけますか?

はい。MAY'Sとして、結成から11年、メジャーデビューから5年を迎えた今年は初めてのベストアルバム(2月発売の「BEST 2005-2013」)を出させていただくことができて、今までやってきたことの集大成を見ていただくことができたと思うんです。そこで、じゃここから先、MAY'Sとしてどんなものを築いていこうか、どんなものを見せていこうかっていうビジョンを考え始めたときに、「ソロ作品に興味はないんですか?」「聴いてみたいです」っていうことをたくさんのスタッフの方に言われたんですよ。そこで私たちは「あ、そっか。ソロね。そういう手があったね」っていうことになって(笑)。

──もともとまったく頭になかったと。

そうなんですよ! 私も河井(純一 / MAY'Sのトラックメーカー)もお互い全然考えてなくて。なので、ソロをやろうってことになったきっかけは、周りの方にユニットとしてではなく片桐舞子という1人のシンガーとしての作品を聴いてみたいって言ってもらえたことがうれしかったからっていうのが大きいんですよね。それに、ソロを通して個人としてレベルアップできれば、それはきっとまたMAY'Sにもいい形で還元できるんじゃないかなとも思いましたし。

──そこにはポジティブな要因しかなかったわけですね。

そうそう。一般的にグループをやっている人がソロ作品を出すってなると、「仲が悪いのかな?」とか「グループではやりたいことがやれてないのかな?」とか、ちょっとネガティブなイメージが伴ったりするじゃないですか。実際、私たちがソロ活動をするって発表したときも、ファンの子たちには「解散するんじゃないか?」ってすごく心配されましたからね。でも実際は真逆。そもそもソロ作品を作ってる間もMAY'Sとして死ぬほどライブの予定が入ってましたからね。ソロは考えたことがなかったっていう感じで(笑)。

──確かにそうですよね(笑)。そういったきっかけでスタートすることになったソロ活動、どんなことをやろうかっていうイメージはすぐ固まったんですか?

最初はなかなかイメージできなかったですね。MAY'Sとしてやりたいことは常に考えていたけど、ソロは考えたことがなかったので。だから最初はソロに対してのビジョン作りから始めていった感じでした。

こんなにドロドロしたところがたくさんあったんだな

──ビジョンを描く上で何かとっかかりになる出来事はありました?

MAY'Sとしてはいつも河井と2人でトータルプロデュースをしているんですけど、ソロとしては気になるクリエイターの方と組んで曲を作ってみようということをまず決めて。そこで最初に思い浮かんだのがJin Nakamuraさんだったんですよね。で、Jinさんと打ち合わせをさせてもらったんですけど、そこで片桐舞子がどんな女性か知りたいから自分の思ってること、歌ってみたいこと、なんでもいいからとにかく書き出してくれって言われて、作文を書いたんですよ、私(笑)。

──宿題を出されたわけですね。

そうそう。で、いかにもロマンチックなこととか、超くだらないこととか、とにかくいろんなことをぶわーっと書いて、それをJinさんに見てもらったんです。そうしたら、その作文のいくつかの事柄に対して「ここがすごく面白いからもうちょっと掘り下げたバージョンも書いてほしい」って言われたんで、またさらに作文を書き(笑)。そういうやり取りを、時間をかけてじっくりやらせてもらったんですよね。

──そういう作業はソロ作品を作る上で大きな指針になりそうですよね。

まさにそうでした。自分自身が今まで気付いていなかった、気付かないようにしてた自分をそこで見つけることができたりもしたので、いろんな部分でヒントになりましたね。アルバム制作の冒頭の時期にそういう作業をすることができたので、そこで見えたものは今回の作品作りに大きく生きてきた部分があったと思います。

──そこで見えた片桐舞子像ってどんなものでした?

MAY'Sの私っていうのは明るくて元気で、歌ってるときはいつも笑顔っていうイメージがあると思うんです。それは、そういう自分でありたいなっていう理想像でもあって。でもね、実は私にはこんなにドロドロしたところがたくさんあったんだなっていうことに今回気付かされたというか(笑)。そういう部分ってやっぱり隠しておきたいものだから自分の中の一番底のほうにあるんですよ。それをすくい取ってみたら、かなり暗雲立ち込めてる感じだったというか(笑)。それを世に出すのはいかがなものかなって一瞬考えちゃう感じもあったんですけど、でもせっかくソロをやるならばMAY'Sと同じことをやっても意味ないなと思ったので、思い切って出してみることにしたんですよね。

──うん、MAY'Sとは確実に感触が違う、かなりディープな作品になってると思います。

MAY'Sらしいハッピーなラブソングが好きな子たちは、この作品をどうやって受け止めるんだろうなっていう不安はあったんですよ。でも、もしこの作品がダメな子はMAY'Sを聴いてもらえばいいじゃんと思えたので(笑)、振り切って制作に臨むことができたっていう。逆にこのソロを経たことで、今度はMAY'Sとして思う存分明るいことをやってやろうとも思えますからね、きっと。ソロとしてはこういう形でよかったんじゃないかなって。

ミニアルバム「Solo」 / 2013年12月4日発売 / 1800円 / KING RECORDS / KICS-1996
ミニアルバム「Solo」
収録曲
  1. Deeper and Deeper
  2. Anytime, Anywhere ~恋焦がれてたあの頃~
  3. TOKYO BLUE
  4. V.I.P
  5. Ex-Boyfriend
  6. Beautiful
  7. True Love Story ~Luv behind the melody remix~
片桐舞子(from MAY'S)
(かたぎりまいこ ふろむめいず)

1982年5月31日生まれの女性シンガー。音楽ユニットMAY'Sのボーカリストとして、2008年7月にシングル「My Everything」でメジャーデビューを果たす。本格的R&Bと極上のポップスの要素を兼ね備えた楽曲が、幅広い層からの支持を獲得。2012年に公開された映画「今日、恋をはじめます」のテーマソングに新曲「ダイヤモンド」を提供し、話題を集めた。2013年2月には同曲を含むベストアルバム「BEST 2005-2013」を発表。同年12月に初のソロ作品となるミニアルバム「Solo」をリリースした。