センスとアンテナ感覚

──松下さんの音楽活動の中で、ここだけは譲れないという部分はどこですか？

それは、センスとアンテナ感覚ですね。ここは一番負けたくない部分。僕はちっちゃい頃から、自分が良いと思うことは絶対的に信じてるんですよ。「誰が何を言おうとこれがカッコいい」って、一度そう思ったら絶っ対に曲げないんで、そういう自分が鍛えたセンスと張ってるアンテナにはすごく自信を持ってます。この世界、僕よりすごいアーティストはいっぱいいますけど、ほかの人と比べて自信を持てる部分はセンスやアンテナの面ですかね。で、それを音楽で表現できるように、スキルを高めていかないといけないんですけど……。

──今はまだ技術力に自信がない？

やっぱ技術の面ではまだまだ（笑）。つまり、考えてることとか脳内にあるイメージが、自分の体を通してパフォーマンスで表現できたら最高。そのために、もっとスキルを磨かないといけないなと。でも、そこに重点を置きすぎてセンスとか感覚の部分がおろそかになると、僕が僕でなくなっちゃう気がするんです。

やっぱり伝説に行き着きたい

──この数年忙しく活動している中で、単純にCDの売上やライブの規模が上がり、支持してくれるファンの数も増え続けていると思うんです。ご自身でその実感や手応えはありますか？

確かに、リリースイベントをする度に応援してくれている方が増えてるのは実感しています。「あの曲からファンになりました」っていう声もファンの方から聞いたりします。そういうのを聞くと、出会いってホント面白いなと思いますね。CMとか、ライブとか、舞台とか、いつどこで僕を知ってくれるか予想できなくて。あと、このアルバムを引っさげてのツアーでは全国22カ所を回らせてもらうし、Zeppの公演もあったりして、自分でも知っていただける機会が多くなったなと思います。

──なるほど。

でもその裏で「まだまだだな」って気持ちもあるんですよ。まあ、一番になりたいですね、まずは。

──なんの一番ですか？

ランキングだけじゃなくて、自分の中で一番になりたいんです。何かのランキングで1位になってみんなに認められるってすごい難しいことだと思うけど、何々がこうだったから一番という理屈じゃなくて、自分が自分のことを一番良いと思えるようになりたい。

──それはランキング以上に難しいことかもしれないですね。

自分との戦いなんでね。きっとそこを目指していけば、結果も勝手に付いてくると思うんです。だから今は、ランキング1位を目指すよりも自分の認める一番になるほうが目標ですね。

──なんだか、それを聞いて前回のインタビューで出た名言を思い出しました。

ほんまですか。なんて言ってましたっけ？（笑）

──「松下優也の最終到達点はどこですか？」とお訊きしたら、「……伝説？」って。

あははは（笑）。いいですね。

──その目標ブレてないなあって。

ブレてないですね。やっぱり夢見ることはずっと忘れたくないです。マイケルを見て「こんなふうになりたい」って思って歌手を目指した頃の自分と、その感覚は同じですね。もちろんその中でいろんな悩みも葛藤もありますけど、自分はやっぱり伝説に行き着きたいなって思ってます。

パラレルワールドの中で一番優れた自分に！

──松下さんって「一番になりたい」「自分の信じたものは絶対」みたいな強気な発言がある反面、「やっぱり技術はまだまだ」「僕よりすごい人はたくさんいる」といった謙虚な姿勢も必ずどこかにありますよね。

そこも忘れたくない部分なんですよね。いかに自分を客観視できるかっていうのはすごい大事だし、ちっちゃい頃の自分が今の自分を見たときにどう思うか、を大切にしてるんです。あの頃の自分が今の自分を見て「すげえ、カッコいい」って思える自分でありたい。

──今、そうなってます？

いや、まだたどり着けてないです。あの、わけわからん話になりますけど、パラレルワールドってあるじゃないですか？ 全ての選択がバラバラになって枝分かれした未来が無限に重なり合ってる世界。例えば俺が歌手を目指さなかった世界、そもそも俺が生まれなかった世界、1％でも可能性があることは全部パラレルワールドの一部になってるわけだけど、そのパラレルワールドに存在する中で一番になりたいですね！

──あははは（笑）。すごい発想ですね！

パラレルワールドの中には、めっちゃ落ちぶれてる自分も、普通の会社員になってる自分もいる。音楽はやってるけど音楽のジャンルが違うかもしれない。けど、その中で一番優れた自分でありたい。だから、自分を甘やかしたりしてる暇はないんです（笑）。