ナタリー PowerPush - 摩天楼オペラ

苦難を乗り越え到達した新境地「喝采と激情のグロリア」第1章

「GLORIA」以外はあくまでもカップリング曲

──今回のシングルにはタイトル曲以外にカップリング曲が3曲収録されていますが、これらのカップリング曲も「喝采と激情のグロリア」というテーマに沿って作られたものなんですか?

Anzi 「喝采と激情のグロリア」というテーマに沿ってる曲は「GLORIA」だけで。

 あくまでもカップリング曲なんですよね、「GLORIA」以外は。

──なるほど、テーマに合わせた4曲というわけではないんですね。今回のシングルはミニアルバム並に聴き応えのある構成だと思いますが、選曲や曲順という意味でそこを意識しましたか?

 タイプの似た曲を並べないようにしようとは考えてました。ちょうど今、12月のシングルのカップリングも作っているので、そこもバランスを見ながら選曲してます。

 実は4曲入りのシングルっていうのは初めてなんです。今までは最多で3曲だったのでボリュームっていう点でもそうかもしれませんし、最初の3曲(「GLORIA」「Psychic Paradise」「CAMEL」)はライブ向きの激しい曲で、そのあとにバラードの「初恋は永遠に」が続くから余計にミニアルバムのように感じるのかもしれませんね。

「CAMEL」は困難を乗り越えて前に進んでいく意思表示

──3曲目の「CAMEL」は冒頭のベースリフが印象的な楽曲です。作曲は燿さんと悠さんの共作ですが、どのように制作を進めたんですか?

 前作の「Justice」っていうアルバムから男っぽい要素がすごく増えてきたように感じていて。それで僕もベースの低音弦をメインに使った、リフ重視の骨太なロックナンバーを作ってみたくなったんです。悠が不調だったのと同時に、実は僕も調子が悪かった時期で。ちょっと左手の中指が不調だったんですけど、そういう困難も乗り越えて前に進んでいくぞっていう意思表示の曲でもあるんです。

──そうだったんですね。それを受けて悠さんは?

 燿の話はここ1カ月くらいの間に聞いたんですよ。だからそういう意味が込められていたことは知らなくて。レコーディング中は自分もドラムが叩けなくて落ち込んでいた時期で、僕はスタジオには顔を出して打ち込みでリズムトラックを作って、それを流す作業をしてたんです。その作業をしながら「なんで自分は叩けないんだろう」って結構沈んでたんですけど、この「CAMEL」を作ることでそういう気分が解消されたかなって今になって思いますね。

「初恋は永遠に」でクラシックのオマージュに初挑戦

──4曲目の「初恋は永遠に」は彩雨さんが作曲していますが、この曲は制作のときに何かイメージしていたことはありますか?

彩雨 この曲はバラードを作ろうということからスタートしたわけではなくて、クラシックのオマージュに挑戦した楽曲をやりたいっていうところから制作が始まったんです。最初はどの曲を使おうか迷ったんですけど、このベートーベンの曲(ピアノソナタ第8番「悲愴」第2楽章)のメロディが有名、なおかつバンドに馴染みやすいと思ったので、この曲を摩天楼オペラ流にアレンジしました。

──僕は初めてこの曲を聴いたとき、ベートーベンのメロディが取り入れられつつも、ちょっとゴスペルっぽいなと感じて。コーラスが入るとエモさが強調されるし、特に曲後半のリピート部分はその要素がより強まってると思いました。

彩雨 なるほど。主旋律をコーラス隊が歌ってボーカルはフェイクを入れるというのも初めての試みだったので、すごくうまくいったと完成して思いましたね。

──それと、この曲は特に音の隙間というか無音部分も印象的で。コーラスパートに入る前のブレイクでは聴いていてハッとさせられるし、すごく効果的だと思います。

彩雨 そうですね。まあ意識的に空けようと思ってたわけではないんですけど、結果的に良かったなと。こういうところも含めてこのバンドの持ち味なんでしょうね。

──ギターソロもベートーベンのメロディを主軸に構成されていますが、ソロを弾く際に意識したことってありましたか?

Anzi 僕は元々クラシック育ちなので、彩雨がやろうとしてることもすぐに理解できました。ピアノソナタをギターで表現する難しさはありましたけど、メロディの中に込められた悲しさや、ちょっとだけ感じられる狂気的な部分をうまく表現できたかなと思いますね。

摩天楼オペラ(まてんろうおぺら)

摩天楼オペラ

2007年に結成されたヴィジュアル系ロックバンド。2008年に苑(Vo)、Anzi(G)、燿(B)、悠(Dr)、彩雨(Key)という現在の編成になる。叙情的な歌詞とシンフォニックメタルからの影響が強いサウンドが特徴で、国内のみならず海外でもCDリリースやライブ活動を展開。2010年5月に初のホールワンマンライブを渋谷公会堂(当時・渋谷C.C.Lemonホール)で実施した。同年12月にはミニアルバム「Abyss」でメジャーデビュー。2011年7月にリリースしたメジャー1stシングル「Helios」は、オリコンウィークリーチャート初登場16位を記録した。同年10月にはメジャー2ndシングル「落とし穴の底はこんな世界」を発表。同月にさいたまスーパーアリーナで行われた「V-ROCK FESTIVAL '11」にも出演し、大きな注目を集めた。2012年3月、メジャー1stフルアルバム「Justice」を発売。4月からは全国ツアー「eyes of Justice Tour」をスタートさせ、ツアーファイナルでは東京・赤坂BLITZでワンマンライブを行う。10月にメジャー3rdシングル「GLORIA」をリリースする。