ナタリー PowerPush - 摩天楼オペラ

苦難を乗り越え到達した新境地「喝采と激情のグロリア」第1章

摩天楼オペラがニューシングル「GLORIA」をリリースする。今年3月に発売されたメジャー1stアルバム「Justice」でバンドとしての個性を確立させた彼らは、今回のシングルで新たなステージに突入。「喝采と激情のグロリア」というテーマの元で制作された表題曲は、これまでの楽曲には見られなかった合唱の要素が新鮮な印象を与えてくれる。

しかしそんな順調そうな状況に反して、一部のメンバーは体に不調をきたしていた。バンドはこの苦難をどのように乗り越えたのか。そして完成した新作にどのような思いを込めたのか。メンバー5人に話を訊いた。

取材・文 / 西廣智一

腕の不調はメジャーデビュー時から感じていた

──3月のアルバム「Justice」発売とそれに伴うツアーを終えたあとに、悠さんが左腕の不調を訴えて摩天楼オペラはライブ活動を休止することになりました。現在は復帰して既にレコーディングでも叩いているとのことですが。

(Dr) はい、7月から「GLORIA」のレコーディングが始まったんですけど、その直前から叩き始めてます。

──ツアー中から腕に異変を感じていたんですか?

 実は異変自体はメジャー1枚目のミニアルバム「Abyss」(2010年12月発売)を出したあとのツアーの頃から感じていて。その蓄積が「Justice」のときに爆発して、うまく腕が振れないという形で出てきてしまったんですね。

──皆さんは、悠さんの調子がおかしいことには気付いていたんですか?

(Vo) 気付いてましたね。ツアー中もスネアの音が出たり出なかったりすることがあったんで、「これはいよいよヤバイな」って。

 ツアーが5月上旬に終わって、お医者さんからの診断で最初の1カ月はドラムを叩かないで様子を見たんですけど、全く良くならなくて。それで僕からみんなに「ちょっと休みたい」ということを伝えたんです。本当はツアー後もライブの予定は入れるはずだったんですけどね。でも今は次のツアーに向けて、着々と準備をしているところです。

長いスパンでいろんなタイプの合唱を見せていきたい

──さて、今回のシングル「GLORIA」について話を聞かせてください。今作に続いて12月には4thシングル「Innovational Symphonia」の発売を控えています。この2作品は「喝采と激情のグロリア」というテーマの元に制作されるそうですね。これは「GLORIA」を制作し始めたときからあったものなんですか?

 このテーマは、シングルの表題曲「GLORIA」を作ってから出てきた言葉です。この曲を作るときに、みんなで合唱する曲を作りたいなと思って。合唱をひとつのキーワードにするんであれば、シングル1枚で終わらせずに長いスパンでいろんなタイプの合唱を見せていきたかったんです。それで歌詞を書いたり曲の構想を練っていたときに、「喝采と激情のグロリア」という言葉がパッと浮かんできて。

──なるほど。実は前回のインタビューで苑さんは「実はもう次の作品のアイデアが生まれてきていて。この『Justice』というアルバムを作ったからこそ、またさらに成長できる道が見えてきてるんです」と言っていたんですが、もしかしてあの時点で今回のテーマは見えていたんでしょうか?

 そうです、次の曲では合唱しようっていうことを心に決めてた頃ですね。アルバム「Justice」には人間味あふれる楽曲が多かったし、続くツアーでも人間味が強く感じられるライブをやれたので、今度はその人間味をもっと違う形で表現したいって考えたときに合唱っていうキーワードが出てきたんです。

その人なりのパワーで輝いて、一緒に合唱して生きていこう

──「GLORIA」は今までありそうでなかったタイプの楽曲ですね。疾走感があって明るい雰囲気なんだけど、どこか哀愁を感じさせる曲調や、3拍子で始まってサビで4拍子に変わるあたり、非常に面白いと思いました。

 「GLORIA」はデモの段階から3拍子だったんです。サビがすごくシンプルなメロディとコード進行なので、AメロとBメロまでシンプルにしてしまうと全体的に引っかかりがなくなってしまうと思って。少し面白みが欲しくてこういう形に作っていきました。

──ほかの皆さんはこの曲を最初に聴いたときの印象って覚えてますか?

彩雨(Key) 僕はサビメロを最初に聴いて「あ、これは今までの摩天楼オペラの曲とは違う。合唱を軸に作られた曲だな」と感じたので、それを念頭に置いてアレンジしていきました。一度聴いただけで合唱が間違いなくハマる曲だと思いましたね。

Anzi(G) 合唱というコンセプトと上がってきたメロディがすごくリンクしていて、大勢で歌ったら面白いんじゃないかっていうのはすぐ感じました。あと3拍子っていうのもちょっと舞踏会みたいで、全体的にミュージカルっぽい印象がありましたね。

(B) 僕も初めて聴いたとき本当に合唱にぴったりな曲だと思って、実際に歌ってみて改めて「ああ、合唱のための曲だな」と実感しました。僕はスタジオで苑くんに「Bメロいいね」って言った気がします。

──その合唱パートでは英詞を多用して、ちゃんと訳詞も用意されています。これは歌う際に歌詞の意味を理解してもらおうと思ってブックレットに載せているんですか?

 そうですね。英詞の部分が長くて、しかも一番伝えたい内容なので、何を歌ってるのか意味がわかったほうがいいだろうなって。意味を理解し合った上で合唱したいですね。はい。

──ちなみにこの「GLORIA」っていう曲の中で特に伝えたかったことは?

 人は決して1人で生きているんじゃないんだよっていうことかな。その人なりのパワーで輝いて、一緒に合唱して生きていこうよっていうことが伝えたかったんです。

摩天楼オペラ(まてんろうおぺら)

摩天楼オペラ

2007年に結成されたヴィジュアル系ロックバンド。2008年に苑(Vo)、Anzi(G)、燿(B)、悠(Dr)、彩雨(Key)という現在の編成になる。叙情的な歌詞とシンフォニックメタルからの影響が強いサウンドが特徴で、国内のみならず海外でもCDリリースやライブ活動を展開。2010年5月に初のホールワンマンライブを渋谷公会堂(当時・渋谷C.C.Lemonホール)で実施した。同年12月にはミニアルバム「Abyss」でメジャーデビュー。2011年7月にリリースしたメジャー1stシングル「Helios」は、オリコンウィークリーチャート初登場16位を記録した。同年10月にはメジャー2ndシングル「落とし穴の底はこんな世界」を発表。同月にさいたまスーパーアリーナで行われた「V-ROCK FESTIVAL '11」にも出演し、大きな注目を集めた。2012年3月、メジャー1stフルアルバム「Justice」を発売。4月からは全国ツアー「eyes of Justice Tour」をスタートさせ、ツアーファイナルでは東京・赤坂BLITZでワンマンライブを行う。10月にメジャー3rdシングル「GLORIA」をリリースする。