ナタリー PowerPush - 摩天楼オペラ
メジャー初フルアルバムで新世代バンドヒーローを目指す
ちっぽけな人間の重さを「21mg」というタイトルに例えた
──「21mg」という曲もタイトルがすごく印象的ですね。
苑 「21mg」というのは魂の重さのことを指していて。人は死んでから21gだけ体重が減るという話があるんです。それより少ない重さを表すこの曲では、1人の人間が「これでいいのかな?」って葛藤するんですけど、「こんなちっぽけな人間1人が消えようが消えまいが、世界は変わらない。だったらこの世界を楽しんでやろう」という結論に達する。そのちっぽけな人間の重さを「21mg」というタイトルに例えたんです。ネガティブな感じだけど、実は結構前向きな曲なんですよ、小さいなりにも生きてやるぜっていう。
──それと、この曲のギターリフはいわゆる70年代のハードロック的で、ほかの曲とちょっと違う印象を受けました。
Anzi 僕自身のスタイルが70年代、80年代のハードロックからの影響が強いんですけど、この曲のデモを苑が持ってきたときに自然とこのリフが出てきたんです。意識してなかったんですけど、染みついたものなんでしょうね(笑)。
感心されるよりも感動してもらえるギタープレイ
──今作には「Just Be Myself」というインストゥルメンタル曲も収録されています。インスト曲を演奏する際は、どういったところに注意しますか?
Anzi インストナンバーってボーカルナンバーに比べて、そんなに世の中の人が聴くものではないと思うんですけど、今回は聴いていて退屈に思われないように、歌詞はないけど歌ってるようなギタープレイを心がけました。
──アルバムが終盤に差し掛かったところに収録されていますが、それまで続いたボーカルナンバーにも負けてないし、メロディアスという意味ではほかの楽曲との違和感は全くないし、アルバムに自然な形で溶け込んでいると思います。
Anzi ありがとうございます。僕はただ単にうまいプレイヤーよりも、「音色がきれいだね」とか「聴いていて気持ちいい」って言ってもらえるプレイヤーになりたいので、この曲も自分のプレイに感心されるよりも感動してもらえるように、ということはとても意識して制作しました。
2012年の今だから作れた「摩天楼オペラ流のロック」
──そして、アルバムを締めくくる「絆」は、勝手なイメージなんですが東日本大震災の被災者に向けた曲なのかなと思いました。
苑 そのとおりです。「絆」は震災のすぐ後に作った曲で、被災された方や震災で傷ついた方たちを僕らなりに応援する、すごく意味のある曲なんです。
──最初にシングル「Helios」で発表されたバージョンは、もっと短くて、アレンジもアコースティック調でしたが、アルバムのフルバージョンとどちらが先にできていたんですか?
彩雨 アコースティックバージョンをレコーディングする前の段階で、今とは多少違うけどギターやストリングスを入れたアレンジが存在してたので、アルバムに入ってるフルバージョンが先ですね。最初からフルバージョンで制作するつもりだったんですけど、震災後しばらくは計画停電があったから電気を使うのは極力抑えようということで、僕らからレコード会社にアコースティックバージョンを提案したんです。
──シングルバージョンから音数が増えたり、曲の構成が変わったこともあって、別の曲のように新鮮な気持ちで楽しむことができました。また、歌詞の響き方もより強くなった印象があります。
苑 シングルバージョンもアルバムバージョンも歌詞は同じなんですけど、震災から1年経ってみて実際に歌ってみると、歌詞に込めた自分の思いはより強くなってる気がします。アルバムバージョンをレコーディングするときも、シングルバージョンのとき以上に「被災に遭われ、懸命にがんばっている人たちを包み込んであげたい」という気持ちで歌いました。
──アルバム全体を通して聴くと、ストーリー性が強く感じられて、なおかついろんな要素が入った、現時点での摩天楼オペラの集大成と言える1枚なんじゃないかという気がします。
苑 2012年の今だから作ることができた作品なのかなと。「これが摩天楼オペラ流のロック」だと胸を張って言い切れる1枚だと思います。でも、実はもう次の作品のアイデアが生まれてきていて。この「Justice」というアルバムを作ったからこそ、またさらに成長できる道が見えてきてるんです。
──これが答えというわけではなく、さらに新しい摩天楼オペラへと進化していくための通過点なのかもしれないですね。
苑 そうなってくれたらうれしいですね。
CD収録曲
- Justice
- 濡らした唇でキスをして
- 落とし穴の底はこんな世界
- Helios
- IMPERIAL RIOT
- Mermaid
- 21mg
- AGE
- Just Be Myself
- アポトーシス
- ニューシネマパラダイス
- 絆 -full chorus-
- Designer Baby(bonus track)
摩天楼オペラ(まてんろうおぺら)
2007年に結成されたヴィジュアル系ロックバンド。2008年に苑(Vo)、Anzi(G)、燿(B)、悠(Dr)、彩雨(Key)という現在の編成になる。叙情的な歌詞とシンフォニックメタルからの影響が強いサウンドが特徴で、国内のみならず海外でもCDリリースやライブ活動を展開。2010年5月に初のホールワンマンライブを渋谷公会堂(当時・渋谷C.C.Lemonホール)で実施した。同年12月にはミニアルバム「Abyss」でメジャーデビュー。2011年7月にリリースしたメジャー1stシングル「Helios」は、オリコンウィークリーチャート初登場16位を記録した。同年10月にはメジャー2ndシングル「落とし穴の底はこんな世界」を発売。同月にさいたまスーパーアリーナで行われた「V-ROCK FESTIVAL '11」にも出演し、大きな注目を集めた。2012年3月、メジャー1stフルアルバム「Justice」をリリース。