ナタリー PowerPush - 摩天楼オペラ
メジャー初フルアルバムで新世代バンドヒーローを目指す
摩天楼オペラがメジャー1stフルアルバム「Justice」を3月7日にリリースする。2010年12月のメジャーデビュー以降、耽美なシンフォニックメタルサウンドと各メンバーの卓越した演奏技術、そしてボーカルの苑による独特な歌詞世界で着実に知名度を高めている彼ら。今回のフルアルバムには先行シングル「Helios」「落とし穴の底はこんな世界」をはじめ、きらびやかなナンバーがたっぷり収録されている。
インタビューでは、メンバー5人がアルバムに込めた思いやレコーディング時のエピソードについて言及。また、彼らがアルバム「Justice」を制作する上で強く感銘を受けたアーティストのアルバムも5枚ピックアップしてもらい、それぞれが受けた音楽的影響についてじっくり語ってもらった。
取材・文 / 西廣智一
バンドヒーローになってやろう
──このアルバムを制作するにあたって、コンセプトやテーマはありましたか?
Anzi(G) 僕の中には「バンドヒーローになってやろう」っていう大きな目標があって。やっぱりロックバンドって、ステージ上でもサウンドでも各メンバーといい意味で喧嘩してこそだと思うんですよ。だからメンバーそれぞれ自分のパートに誇りを持ってほしいんです。例えば僕だったら、ギターキッズに「この曲のギターを弾きたい」って思ってもらえるようなギタープレイを心がけてるし、苑なら自分の声を聴いて「こういうハイトーンで歌えるボーカリストになりたい」って思ってもらいたいはず。今回は各パートとも、特にそういう気持ちで制作に臨んでます。
──では、サウンド的にはどういったものを目指しましたか?
苑(Vo) 僕はバラードであったりすごく激しい曲であったり、シングルではできなかった側面を表現した新曲を用意しました。
彩雨(Key) 僕はそれまでにやったことないことに挑戦するのが好きなタイプで、それはキーボードプレイにおいてもそうなんですけど、楽曲制作に関しては特にそういう気持ちが強くて。例えば「Mermaid」に関しては、キーボードに打ち込みのシーケンストラックを用いたり、曲作りの面では今まで使ったことのないような転調やコード進行を取り入れたり、いろいろ試してます。
苑 で、完成したアルバムを聴いて思ったんですけど、これはもうヴィジュアル系とかヘヴィメタルとかいうよりも、摩天楼オペラ流ロックなんだと。アルバムを少しでも聴いてくれたら、摩天楼オペラがどういうバンドなのかがわかるんじゃないかなと思います。
Anzi 希望としては、摩天楼オペラっていう名前がひとつジャンルになればいいかなっていう感じですね。
「Justice」というテーマが生まれてアルバムが引き締まった
──アルバムのタイトルには「Justice」という非常に象徴的かつ力強い言葉が用いられてますね。
苑 今回のアルバム収録曲には「生きていく上でいろいろ不安なことがあるけど、それを乗り越えて自分を信じていこう」という内容の歌詞が多くて。アルバムのタイトル曲「Justice」は最後に作った曲なんですけど、そういったアルバムのテーマの受け皿という意味では非常にうってつけな曲ができたと思います。
──皆さんの心の奥深くに「Justice」という言葉があったのかもしれないですね。それを曲のタイトルにしたことで、アルバムのテーマがより明確になったっていうことなんでしょうか?
苑 そうです。「正義」は人それぞれにあるものだから、じゃあどの正義を信じるのか、人に流されないでどうやって生きていけるのか、最終的には自分の正義を信じるしかないんじゃないか。そういう思いがこの曲には詰まってるんです。それに「Justice」という曲の歌詞には、ほかの曲にもリンクする内容も入っているので、ここから2曲目、3曲目にアルバムの世界が広がっていくイメージがあります。
燿(B) 「Justice」というテーマが生まれたことで、より一層アルバムが締まったし、各メンバーの個性もより発揮することができたんじゃないかなと思います。
──自分の演奏やフレーズが歌詞からインスパイアされることはありますか?
Anzi 「Justice」は自分の正義を信じて貫こうよっていう歌詞なので、今世間で流行ってたり売れてたりするアーティストの物真似をするのではなく、自分がカッコイイと信じてるプレイスタイルを貫いてやろうっていう気持ちでレコーディングに入れました。
悠(Dr) 大まかな演奏は曲の構成ができた段階でイメージできるんですけど、細かいフレーズとかはギリギリまで悩むんですよ。最終的には歌を聴いてから「もうちょっとこの部分で盛り上げたほうが、曲が映えるんじゃないか」とか「ここは全体のグルーブを引っ張ることに徹しよう」とか判断するので、歌メロと歌詞を確認するのは重要ですね。
CD収録曲
- Justice
- 濡らした唇でキスをして
- 落とし穴の底はこんな世界
- Helios
- IMPERIAL RIOT
- Mermaid
- 21mg
- AGE
- Just Be Myself
- アポトーシス
- ニューシネマパラダイス
- 絆 -full chorus-
- Designer Baby(bonus track)
摩天楼オペラ(まてんろうおぺら)
2007年に結成されたヴィジュアル系ロックバンド。2008年に苑(Vo)、Anzi(G)、燿(B)、悠(Dr)、彩雨(Key)という現在の編成になる。叙情的な歌詞とシンフォニックメタルからの影響が強いサウンドが特徴で、国内のみならず海外でもCDリリースやライブ活動を展開。2010年5月に初のホールワンマンライブを渋谷公会堂(当時・渋谷C.C.Lemonホール)で実施した。同年12月にはミニアルバム「Abyss」でメジャーデビュー。2011年7月にリリースしたメジャー1stシングル「Helios」は、オリコンウィークリーチャート初登場16位を記録した。同年10月にはメジャー2ndシングル「落とし穴の底はこんな世界」を発売。同月にさいたまスーパーアリーナで行われた「V-ROCK FESTIVAL '11」にも出演し、大きな注目を集めた。2012年3月、メジャー1stフルアルバム「Justice」をリリース。