ナタリー PowerPush - 摩天楼オペラ

メジャー初フルアルバムで新世代バンドヒーローを目指す

<「Justice」を制作する上で強く影響を受けたアルバム5選>

Anzi's select
YNGWIE J. MALMSTEEN'S RISING FORCE「MARCHING OUT」(1985年)

YNGWIE J. MALMSTEEN'S RISING FORCE「MARCHING OUT」

Anzi 僕が一番影響を受けたのはイングヴェイ・マルムスティーンっていうギタリスト。「MARCHING OUT」での彼のプレイが僕は一番好きなんですよ。これを聴けば、なんとなく僕のルーツがわかってもらえるんじゃないかなと。世間的には「TRILOGY」(1986年)が一番評価されてますけど、僕は「MARCHING OUT」でのギターソロのフレージングや作り込んだ感じが好みなんです。

──イングヴェイのアルバムにはギターインスト曲も多いですが、アルバム「Justice」における「Just Be Myself」にもそのへんの影響は出てるんでしょうか。

Anzi イングヴェイだけじゃなくていろんなギタリストを聴いてきてるし、その影響は自分の中でミックスされてると思うので、「Just Be Myself」は自分流っていう感じじゃないですかね。でも、新作の収録曲「アポトーシス」はレコーディングしてたときはあんまり思わなかったんですけど、あとで冷静になって聴いたらALCATRAZZ(イングヴェイが80年代前半に在籍したバンド)みたいだなって思って。それをディレクターに言ったら「確かにそうかも」って言ってたので、結局イングヴェイなんでしょうね(笑)。

悠's select
HELLOWEEN「KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PT.2」(1988年)

HELLOWEEN「KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PT.2」

 本当は「KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PT.1」(1987年)と2枚合わせてオススメしたいんですけど、僕はどちらかと言うとパート2のほうが好きで。このアルバムってスピードメタルの教科書みたいに言われがちですけど、実は楽曲がバラエティに富んでいて、ストレートなハードロックもあれば、壮大な組曲もあって、そういうところが「Justice」に近い気がしています。このアルバムを筆頭にいろいろ聴いてきましたけど、これを超えるアルバムにはまだ出会えてないですね。

──なるほど。

 そして何より、僕はあの時期のHELLOWEENが本当に大好きなんです。あの頃のHELLOWEENはボーカルもギターもベースもドラムも、全てが噛み合っていて。ドラムプレイだけじゃなくて、いろんな影響を受けていて、それを「Justice」というアルバムに昇華しているんです。

──当時のHELLOWEENのドラマーはインゴ・シュヴィヒテンバーグでしたね。

 インゴはもう亡くなってしまったんですけど、彼はかっちりしたテクニシャンというよりも自分の鳴らしたい音をドラムで自由に表現していた人で。そういうプレイヤーこそ、僕がもっとも目指しているところなんです。もちろんテクニック的にもうまくなりたいですけど、それ以上にドラムを通じて自分自身をどう表現するかっていうところなんですよね。

──偶然かもしれないんですけど、「アポトーシス」を聴いたときにHELLOWEENの「Eagle Fly Free」(「KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PT.2」収録曲)を思い出したんですよ。

一同 ああー。

 そうですね。ちょっとしたドラムプレイですけど、曲に合うと思って「アポトーシス」で試してみたんです。オマージュというか。

──聴き比べって言ったら変ですけど、HELLOWEENから受けた影響がここにたどり着いたんだと言えるかもしれないですね。

 アルバムを聴いたキッズがニヤッとするところなのかなと。このインタビューを読んでもらって、HELLOWEENのほうを聴いたら「あ、この曲のここが……」って気付いてもらえると思うし、それも音楽の楽しみ方の1つだと思うんですよ。特に楽器を弾ける人が聴いたら、ちょっと面白いかもしれないですね。

燿's select
DREAM THEATER「METROPOLIS PT.2 : SCENES FROM A MEMORY」(1999年)

DREAM THEATER「METROPOLIS PT.2 : SCENES FROM A MEMORY」

 僕はDREAM THEATERが好きで、一番影響を受けているベーシストは、ジョン・マイアングなんです。DREAM THEATERはギタリストとキーボーディストがすごく華やかなプレイをするんですよ。で、ドラマーも手数も多くて、ベースのジョンはそれらのプレイを下で支えながら、前に出るところは出るっていうすごくセンスの良いベースプレイをするんです。「METROPOLIS PT.2 : SCENES FROM A MEMORY」はコンセプトアルバムなんですけど、このアルバムを聴いたら僕がベーシストとしてやりたいことがなんとなくわかってもらえるのかなと。

──DREAM THEATERは奇しくも摩天楼オペラと同じバンド編成ですよね。実は初めて摩天楼オペラの楽曲を聴いたときから、ちょっとしたキーボードのフレーズや音色、リズムの組み合わせ方にDREAM THEATERからの影響を感じていて。ベースにしても、普段はずっしりと構えたプレイをしていながら、いざ前に出るタイミングで個性的なプレイをするという意味でも共通する部分が多いなと。

 やっぱりボーカルを含め、全部が全部前に出たらただぶつかってしまうだけなんで。「引いて弾く」という部分ではかなり影響を受けてます。

彩雨's select
NIGHTWISH「IMAGINAERUM」(2011年)

NIGHTWISH「IMAGINAERUM」

彩雨 ちょうどアルバム「Justice」をレコーディングしてた頃に発売されたのかな。僕は元々NIGHTWISHからかなり影響を受けているので、「IMAGINAERUM」はずっと発売を楽しみにしてたアルバムなんです。摩天楼オペラもシンフォニックサウンドと呼ばれてますけど、僕にとっての「シンフォニック」のひとつの基準がNIGHTWISHなんですね。彼らはシンセサイザーだけじゃなくて、ストリングスやブラスのサウンドも取り入れながら独自の世界観を作り上げていて。そういうところからかなり影響を受けてます。特にこの「IMAGINAERUM」はミュージカルや映画のサウンドトラックみたいな内容で。僕らの「Justice」にはミュージカルや映画というようなコンセプトはないんですけど、サウンド的にはとても参考にしたアルバムなんですよ。

──「IMAGINAERUM」の終盤には13分もある組曲「Song Of Myself」が収録されていますが、摩天楼オペラでこういった壮大な組曲に挑戦してみたいとは思いませんか?

彩雨 しっかりとしたコンセプトがあれば、コンセプトアルバムとして挑戦したいという気持ちはあります。

苑's select
ANGRA「ANGELS CRY」(1993年)

ANGRA「ANGELS CRY」

 1990年代前半に出たアルバムなんですが、すごく大好きなんです。ANGRAってバンドの世界観とかサウンドが普通のメタルバンドと比べるとちょっと異色というか。ブラジルのバンドなんですけど、クラシックやオペラから影響を受けていて、ほかの誰にも似ていない独特な存在なんです。この「ANGELS CRY」はそういうANGRAの歴史が始まったアルバムで、聴いてると「俺たちはこういう世界観を作りたいんだよ」っていう強い意志がすごく伝わってきますね。ブラジルのバンドではあるけど、国境とか関係なくて、どこにも属さないバンドだと思います。

──ANGRAって登場した当時、メロディックメタルとかスピードメタルとかいろいろあるジャンルの括りが難しいバンドだなと思った記憶があります。

 そうですよね、難しかったですよね。

──今でこそANGRAフォロアーと呼べるバンドがどんどん出てきてると思いますけど、今でも特殊な存在だと思います。しかも、彼らが登場した1990年代前半ってハードロックやヘヴィメタルの人気が世界的に下火になり始めた時期で、そういうときにブラジルからANGRAみたいなバンドが出てきたっていうのはすごく興味深かったですね。

 僕はボーカルのアンドレ・マトス(2000年に脱退)がいた時代が特に好きで。彼の世界観って全くブレてなくて本当にすごいと思うし、僕もそういうアーティストになりたいなって思いますね。

ニューアルバム「Justice」/ 2012年3月7日発売 / 2500円(税込) / キングレコード / KICS-1749 / Amazon.co.jpへ

CD収録曲
  1. Justice
  2. 濡らした唇でキスをして
  3. 落とし穴の底はこんな世界
  4. Helios
  5. IMPERIAL RIOT
  6. Mermaid
  7. 21mg
  8. AGE
  9. Just Be Myself
  10. アポトーシス
  11. ニューシネマパラダイス
  12. 絆 -full chorus-
  13. Designer Baby(bonus track)
摩天楼オペラ(まてんろうおぺら)

2007年に結成されたヴィジュアル系ロックバンド。2008年に苑(Vo)、Anzi(G)、燿(B)、悠(Dr)、彩雨(Key)という現在の編成になる。叙情的な歌詞とシンフォニックメタルからの影響が強いサウンドが特徴で、国内のみならず海外でもCDリリースやライブ活動を展開。2010年5月に初のホールワンマンライブを渋谷公会堂(当時・渋谷C.C.Lemonホール)で実施した。同年12月にはミニアルバム「Abyss」でメジャーデビュー。2011年7月にリリースしたメジャー1stシングル「Helios」は、オリコンウィークリーチャート初登場16位を記録した。同年10月にはメジャー2ndシングル「落とし穴の底はこんな世界」を発売。同月にさいたまスーパーアリーナで行われた「V-ROCK FESTIVAL '11」にも出演し、大きな注目を集めた。2012年3月、メジャー1stフルアルバム「Justice」をリリース。