ナタリー PowerPush - 摩天楼オペラ
新境地を切り開く新曲とヴィジュアル系へのこだわり
理不尽な死を歌った「落とし穴の底はこんな世界」
──今回のシングル「落とし穴の底はこんな世界」は前作「Helios」と比べてダークな印象が強いですね。タイトルもここ何作かは英語でしたが、今回はイメージが膨らむ、印象深いタイトルですし。どういった流れでこの曲は生まれたんですか?
苑 まず最初に曲からできたんですけど、最初はこういう狂気を感じさせる歌詞を乗せようとは思ってなくて。でも、作業を続けていくうちにどんどんダークな色が強まっていって、曲に歌詞を引き出されて書けたような気がします。
──「落とし穴」という言葉が印象的ですが、どういうイメージで使おうと思ったんですか?
苑 今回の歌詞のテーマは少年犯罪なんですけど、大事な人を殺されてしまって復讐をしようって決心する男の話がフッと湧いてきて。突然理不尽な死に方をして、今まで普通に生活していた世界が突然真っ暗になる。落とし穴にスッと落ちてしまう、そういうイメージですね。
──落ちようと思って落ちるわけじゃないし、急に足元をすくわれて周りの環境が一切遮断されてしまうような。
苑 だけど、今までと同じ場所なんです。「落とし穴の底はこんな世界」っていうのは今いる、今までいた世界のことなんですよ。
──なるほど。作詞の際に注意していることってありますか?
苑 以前は聴いてる人が共感できて、勇気づけられる歌詞が多かったんですけど、最近はもっとディープで自分にしかない世界を表現していきたいと考えていて。歌詞の言葉1つにしても、こういう言葉ってほかのアーティストさんはあまり使わないだろうってものを意図的に使うようにしてます。
──そう考えるようになったきっかけって、なにかあったんですか?
苑 自分の作品なんだから決まりなんてないし、何をやったっていいんだよっていうイメージですね。そう思ったらどんどん作詞が楽しくなって、いい言葉が生まれてくるようになって。その流れで今回のタイトルも出てきたんだと思うし、ある意味成長なんだと思います。
凶暴な内容の歌詞に導かれたアレンジ
──楽器隊の皆さんは、苑さんから歌詞を渡されたときに歌詞のテーマを聞いてアレンジしていくんですか?
Anzi いつも歌詞と一緒にこういうコンセプトなんだよっていう説明書きが送られてくるんで、それを理解した上でアレンジしてます。
──歌詞同様、演奏面もアグレッシブさがかなり前面に出てますね。
悠 曲の冒頭とBメロ、それとギターソロの部分にブラストビートを取り入れていて。これも考えて決めたことではなくて、やってるうちにそうなったんです。
──叩いてみたら「いいんじゃないの?」みたいな?
悠 そうです。曲自体は今年前半に「Abyss」ツアーを回っているときにできたんですが、最初の原型からかなり変化しましたね。
──最初はどんな感じだったんですか?
悠 イントロが今みたいにスリリングな感じではなくて、もっとハードロックっぽくて。サビのメロディも違ったよね。
苑 今よりもメロディアスではない感じで。
悠 凶暴な内容の歌詞がきたんで、それを演奏とサウンドで表現しようっていう気持ちで最終的なアレンジを詰めていきました。だから、歌詞に導かれた部分も大きいんですよ。
アー写を撮ってから曲の世界観が固まった
苑 実はこのシングル用のアーティスト写真を撮ってから、曲の世界観が固まってきたっていうのもあって。アー写を撮ってから間奏部分にシャウトを入れようと思い付いたので、曲、歌詞、演奏、ビジュアル、PV、すべてに意味があるというか。
悠 今までの作品で一番、すべてが合致してるっていう気がしますね。
──アー写を撮ってから、曲に新たな色が加わっていくっていうのは面白いですね。
悠 アー写を撮ったあとにシャウトを入れてみようと思うって言われたときには、「え、入れんの!?」っていう感じで(笑)。
苑 あははは。
悠 今のままでも十分カッコいいけどなと思ったんですけど、入れたら入れたでよりカッコよくなりました。
──ビデオクリップもかなり面白い感じに仕上がりましたね。
Anzi 洞窟みたいなところに入って撮りました。地面がぬかるんでいて、おどろおどろしい雰囲気の場所でしたね。
──まさに曲のイメージにぴったりで。
Anzi もっと広い場所もあったんですけど、あえてすごく狭っ苦しい一角を使ったので、より陰湿な仕上がりで(笑)。
悠 インディーズの頃はまずロケーションを考えてから撮影に臨むことが多かったんですけど、メジャーになってからは曲の雰囲気をもっと大切にして作るようになりましたね。これからもその辺を強く意識して、PVを作っていきたいと思ってます。
収録曲
- 落とし穴の底はこんな世界
- Sleeping Beauty
初回限定盤DVD収録内容
- 「落とし穴の底はこんな世界」MUSIC CLIP+ディレクターズカット
収録曲
- 落とし穴の底はこんな世界
- Diorama Wonderland
摩天楼オペラ(まてんろうおぺら)
2007年に結成されたヴィジュアル系ロックバンド。2008年に苑(Vo)、Anzi(G)、燿(B)、悠(Dr)、彩雨(Key)という現在の編成になる。叙情的な歌詞とシンフォニックメタルからの影響が強いサウンドが特徴で、国内のみならず海外でもCDリリースやライブ活動を展開。2010年5月に初のホールワンマンライブを渋谷公会堂(当時・渋谷C.C.Lemonホール)で実施した。同年12月にはミニアルバム「Abyss」でメジャーデビュー。2011年7月にリリースしたメジャー1stシングル「Helios」は、オリコンウィークリーチャート初登場16位を記録した。