ナタリー PowerPush - 摩天楼オペラ

新境地を切り開く新曲とヴィジュアル系へのこだわり

摩天楼オペラのニューシングル「落とし穴の底はこんな世界」がリリースされた。インディーズでの活動を経て、昨年12月にミニアルバム「Abyss」でメジャー進出を果たした彼ら。ドラマチックな展開を持つシンフォニックメタルサウンドはヴィジュアル系シーンの中で独特の個性を放ち、着実に知名度を高めている。今回のシングルでも、摩天楼オペラならではの幻想的なサウンドは健在。そこにかつてないほど猟奇的でブルータルな要素が持ち込まれ、バンドとしての成長を伺わせる仕上がりとなっている。

今回ナタリーでは、メンバーの苑(Vo)、Anzi(G)、悠(Dr)にインタビューを実施。音楽との出会いからバンド結成、楽曲制作やレコーディングの裏側、そして「ヴィジュアル系」というジャンルに対するこだわりまで、興味深い話をたっぷり語ってもらった。

取材・文 / 西廣智一

音楽への目覚めはヴィジュアル系とヘヴィメタル

──最初に音楽に興味を持ったのはいつ頃ですか?

苑(Vo) 僕は小学校6年生のときにX JAPANに出会いまして、その頃からヴィジュアル系とメタルが好きになりました。

──X JAPANの持っていたビジュアル面とサウンド面の両方に惹かれたんですね。

 そうです。ヴィジュアル系はLUNA SEAやPENICILLIN、メタルはHELLOWEENやANGRAを並行して聴いていました。

──X JAPANといい、HELLOWEENやANGRAといい、ドラマチックな展開をする楽曲が好みなんですか?

苑(Vo)

 はい。ドラマチックでメロディアスで、壮大なキーボードが入ってるバンドが好きで。それが今やっている音楽のルーツになってると思います。

──バンドを始めようと思ったきっかけは?

 最初はドラムがやりたかったんですけど、中学のときに「俺がドラムやるよ」っていう人がいて、「じゃあしょうがないからボーカルやろうかな」って歌ったのが最初です。でも、突然X JAPANみたいに高いキーが出るわけないじゃないですか。それで、自分の中で「ハードルを超えたい」っていう目標ができて、練習して歌い込んで、どんどんキーを高くしていきました。

──Anziさんの最初のきっかけは?

Anzi(G) 音楽に触れたのは幼稚園のとき、親にバイオリンを習わせてもらったのが最初。そのときは特にバイオリンにハマることはなくて、中学くらいで辞めちゃったんです。そのあと高校まで全然音楽に興味がなかったんですけど、高2の夏にできた友達がヘヴィメタルが好きで。聴かせてもらったらすごくカッコよくて、衝撃が走りましたね。で、メタルを聴くようになって、エレキギターに魅力を感じるようになったんです。

──最初にハマッたバンドって覚えてますか?

Anzi 最初はIRON MAIDENで、そのあとにイングヴェイ・マルムスティーンに出会いまして。彼はバイオリンの旋律をエレキギターで弾くんですけど、元々クラシック育ちの僕はクラシックの旋律を不良な感じで弾いてるところにカッコよさを覚えて、よりメタルやギターにのめり込んでいきました。

──そこからは独学でギターを?

Anzi 途中まではそうですね。高校を卒業したあとには音楽の専門学校に行って、理論を学びました。

──ギターを弾く上で、子供の頃に習ったバイオリンは役立ちましたか?

Anzi 中学高校からギターを弾き始めた人には、小指をうまく使えない人が多いんですよ。でも、僕はギターを初めて弾いたときから指が自由に動いたので、上達するまでは早かったです。

──なるほど。では悠さんは?

悠(Dr) 音楽を好きになったきっかけはX JAPANのYOSHIKIさんですが、最初は観て憧れてるだけ。僕は田舎育ちなんですけど、田舎でドラムやる人なんてあまりいなかったし、全然そんな発想もなくて。でも中学に入って、だんだんバンドをやってみようかって思ったときに、自分の貯金で安いドラムセット、それも最初からツーバス仕様で買ってしまったんです。そこから今の自分のドラムスタイルに落ち着いて。ラーズ(・ウルリッヒ / METALLICAのドラマー)のあの大味なプレイと(笑)、HELLOWEENのスピード面からは大きな影響を受けてますね。

メジャーデビューしてプロ意識が強くなった

──そこから、どういった経緯で摩天楼オペラを結成することになったんですか?

 僕と悠は元々別のヴィジュアル系バンドをやっていて、それを解散したあとにまた一緒にやることになって。そこにベースの燿と、前任のギタリストとキーボーディストが入ったんですけど、ギターとキーボードが抜けてしまって。それで悠とずっと一緒にやってたAnziを誘って、さらに彩雨(Key)を誘ったんです。それが2008年ですね。

──摩天楼オペラでは、最初から今のようなスタイル?

 そうですね。僕と苑が専門学校から一緒で、そのときから一緒にやってきたバンドはメタル。そのあとにヴィジュアル系をやるようになったんです。

──ヴィジュアル系って特定の音楽ジャンルの括りではないし、その中にはいろんなタイプの音楽があると思うんです。そこで、なぜ摩天楼オペラはヴィジュアル系というスタイルと、メロディアスなヘヴィメタルをかけ合わせようと思ったんですか?

 当初の摩天楼オペラって実はそんなにメタル指向じゃなくて、どちらかというとミクスチャー寄りで。メタル風になったのって結構最近なんですよね。

──じゃあ、徐々に自分たちの中にあったものを出していったと。

 そうです。このバンドを始めた頃って、メタル要素を持ったバンドがあまり多くなくて。

 それより昔はもっとたくさんいたんだけど。

 そうだよね。僕たちはそういうバンドが少なくなった時代に活動し始めたけど、逆にいないからこそ個性的と言われるようになって。それと同時にVersaillesやNoGoD、DELUHIみたいなメタル要素を持ったバンドがどんどん出てきて、より注目されるようになったんだと思います。

Anzi(G)

──昨年12月のミニアルバム「Abyss」でメジャーデビューしましたが、それ以前と「Abyss」以降で大きな変化ってありましたか?

 心境の変化はありましたね。「プロなんだぞ」っていう意識も強くなりましたし。

Anzi レコーディング環境も大きく変わって。よりいい音で聴かせられる設備でレコーディングできるようになったのはうれしいです。

──自分たちの追及したい音楽により近づける?

Anzi はい。

──インディーズ時代のレコーディングは全部自分たちで?

 以前所属していた事務所のスタジオを使っていて、もうちょっとセルフプロデュース感が強かったかな。今は収録曲も自分たちだけじゃなくてスタッフも交えて決めていて、そういう外からのインプットが増えたのも大きな違いですね。

セカンドシングル「落とし穴の底はこんな世界」 / 2011年10月19日発売 / キングレコード

  • セカンドシングル「落とし穴の底はこんな世界」 / 2011年10月19日発売 / 1500円(税込) / KICM-91364 / Amazon.co.jpへ
収録曲
  1. 落とし穴の底はこんな世界
  2. Sleeping Beauty
初回限定盤DVD収録内容
  • 「落とし穴の底はこんな世界」MUSIC CLIP+ディレクターズカット
セカンドシングル「落とし穴の底はこんな世界」 / 2011年10月19日発売 / 1050円(税込) / KICM-1365 / Amazon.co.jpへ
収録曲
  1. 落とし穴の底はこんな世界
  2. Diorama Wonderland
摩天楼オペラ(まてんろうおぺら)

アーティスト写真

2007年に結成されたヴィジュアル系ロックバンド。2008年に苑(Vo)、Anzi(G)、燿(B)、悠(Dr)、彩雨(Key)という現在の編成になる。叙情的な歌詞とシンフォニックメタルからの影響が強いサウンドが特徴で、国内のみならず海外でもCDリリースやライブ活動を展開。2010年5月に初のホールワンマンライブを渋谷公会堂(当時・渋谷C.C.Lemonホール)で実施した。同年12月にはミニアルバム「Abyss」でメジャーデビュー。2011年7月にリリースしたメジャー1stシングル「Helios」は、オリコンウィークリーチャート初登場16位を記録した。