非常に頼りになるバンマスです

──ライブをやる上で、坂本さんからお2人に相談することもあるんですか？

坂本　北川さんはバンマスなので常になんでも相談してますね。

北川　去年のツアーは本当にいろんなアクシデントがあったというか……途中で震災があって、スタートしたときとはどんどん変わっていったので、それに対して「どういうふうにやっていこうか」という話はたくさんしましたね。曲順どうしようとか、この曲はやるべきかどうかとか、それはメンバーみんなで相談しました。

坂本　北川さんはバンマスをお願いしたあと、私がちょっと「どこそこで歌ってます」と言うと全部観に来てくれたり、ほかのプレイヤーのリサーチまで細かくやってくださるんですよ。私が知らない間にいろんなことを準備しまくってくれていて。しかも私の過去の曲もよく知ってくれているから、セットリストの会議前から「この曲とこの曲がやりたいんだよね」っておっしゃってくれたり（笑）。すごく深くまで関わってくれて、全てを把握してくれる、非常に頼りになるバンマスです。

──北川さんはその「バンマス」という立場はいかがですか？

北川　普段「バンマスです」と言うことはないけど（笑）、僕がやってるのはずっとそういうことなので。

奥田　そうだよね。ずっとバンマスだよね。

北川　ひとつのバンドがステージに立つ準備をしたり、そこまでの雰囲気作りをするというのが自分の役割だから。

理想のツインギターが実現

──自身のバンドだけじゃなく、いろんなアーティストと共演する機会の多いお2人から見て、坂本さんが「ほかのアーティストと違うな」と感じるのはどんなところですか？

奥田　声優をやられていることも大きいかもしれないけど、さっきも言ったように、言葉がダイレクトに伝わってくるところですね。もちろんメロディと同化してるんだけど、意味がすごく入ってくる。例えば歌詞の中に固有名詞が出てきたとき、誰の歌よりもドキッとするというか。独特のリアリティがあるんですよね。

──それは坂本さんの中で意識しているところなのでしょうか？

坂本　うーん。でも自分が音楽を聴くときも歌詞が重要なポイントなので、言葉に対するこだわりは確かに強いかもしれないですね。ライブで歌うときも歌詞が伝わるように歌いたいなとは思いますけど……私、歌詞を間違えなかったライブは1回もないので（笑）。大事にしてると言えるのかなーと。自分で歌詞を書いたものは特に、なぜそういう歌詞になったかというプロセスまで理解してるから、例えば「君」という言葉がどんな「君」なのかわかった上で歌うわけだから、そこまで伝わるように歌いたいなとは思いますね。

北川　持っているものが破格な感じはしますね。ステージ上の立ち姿も、本人は別に意識してないかもしれないけど、独特のものがあるんです。あれも持ってる、これも持ってるという、底知れないポテンシャルを感じるというか。

──そのポテンシャルを前にすると、想定よりもムチャな要求をバンド側からしたくはなりませんか？

北川　ムチャに引き出そうというのはないけど……それよりも真綾ちゃんの曲がむしろ僕らにムチャな要求をしてくるから（笑）。「さらっと演ってるけど、これ本当に特殊な曲なんだよ」というのが、完成版を聴いてる人には伝わらないところまでわかるんですよ、演奏してみると。ただ特殊なんじゃなくて、そこに素敵な魅力が込められているから、僕らはそれをさらに魅力的に伝えられるよう、日々チャレンジしているんです。

──音源としての完成形を、そのツアーのバンドの編成に落とし込むという作業があるわけですもんね。

坂本　そうなんですよ。CDの音を再現する魅力もあるけど、このバンドだからこそこういう音になる、というのもライブの醍醐味で。「You can't catch me」のツアーでは特にそう思いましたね。特に私「ツインギターでやりたい」というのはずーっと言ってたことなので、このバンドはそれが実現できたのもうれしいんですよね。鍵盤で作られた曲が多いので、ギターの人は大変だと思うんですけど（笑）。

奥田　そうなんだよ……。

坂本　あはは（笑）。でも、思い描いてたライブの音ができあがっているので。

北川　うん、チャレンジという意味では僕らもそうだけど、真綾ちゃんに一番チャレンジしてほしかったのがそこなんですよ。僕らバンドメンバーが集まった音で、CDとは違う音楽を楽しんでほしいなって。

奥田　ライブならではのね。

北川　自由に広がるところを納得して楽しんで「ライブって面白い」って感じてほしいな、って前回のツアーでは思ってましたね。僕らがやるからには。

坂本　私の場合、河野伸さんバンマスの大編成と、北川さんバンマスのツインギターという2つを交互にやったりしてますけど、両方とも性質は全く違うんですよ。やりたいライブの内容によって違ってくるんです。今回は「ミツバチ」を携えてのものだから、シングル曲をどんどんやる元気なツアーになるだろうということで、だったら北川バンドだろうなって。この学園祭の準備をしているような、和気あいあいとしたムードがね。

──ギターという楽器の特性でもあると思うんですけど、ギターの持つ自由度みたいなものを求めると、この北川バンド編成になるのかなと。

坂本　そうですね。あとは単純に見た目とかね（笑）。雰囲気的に2人のギタリストが自分の両脇に立ってるイメージだなあ、とか。

奥田　ホントは一番歌の邪魔になる楽器だからね、ギターって（笑）。音域的には一番邪魔者なんだけど。でも、このバンドの「ならでは感」みたいなのは多分あるでしょうね。共通の古い知り合いが去年のツアーを観て「真綾ちゃんのこんなガチャガチャしたライブ初めて観たよ」って言ってた（笑）。でもそれはある意味うれしい。

坂本　この2人がギターで両脇にいて、ほかのメンバーもそれぞれの性格と持ち味があって。絶妙なバランスで成り立ってるんですよ。やんちゃに行けるところは行き、誰かが手綱を引き。なんかいいバランスなんですよね。