ナタリー PowerPush - LOW IQ 01
ソロの醍醐味を存分に楽しんだ3年ぶり新作「MASTER LOW GO」
ソロ10周年を迎えた一昨年には、自身のルーツを一望するカバーアルバムをリリース。また、Ken Yokoyama、SCAFULL KING、BACK DROP BOMBら盟友をはじめ、ACIDMANやTHE BAWDIESら、多彩な後輩バンドも参加したトリビュートアルバムも発表され、信望の厚さを改めて感じさせてくれた、いっちゃんことLOW IQ 01。彼のメロディは初期パンクのメンタリティから始まって、スカ、ボッサ、ソウル、ミクスチャー、オルタナ……と、時代を横断しつつ、あくまでもポップな印象を残す。変遷を続けるシーンにあって、無二でありつつ、その存在感はどこかとぼけた味わいさえ放つ。
そんな彼が約3年ぶりにオリジナルアルバムをリリースする。多彩でありつつ、ビシッとソリッドなサウンドデザインが施され、これまでよりフレッシュな聴感が楽しめる作品だ。快作をモノにした当人に心境を訊く。
取材・文/石角友香
カバーアルバムとトリビュートアルバムから得たもの
──ソロデビュー10周年の一昨年にはイチさんのトリビュートアルバムが出たり、ご自分でカバーアルバムを出したりしましたが、そこで改めて見つけたこと、感じたことはありましたか?
そうですね。僕の曲をカバーしてくれた「HELLO! LOW IQ 01」、あれは自分の曲をどう料理してくれるか?という点で各バンドのカラーが出てて、そこがすごく勉強になったというか。今までソロで10年やってきたことって、わかりやすく言うと、自分の家で作った料理しか食べたことがない人間みたいなもので。それがよそんち行ってご馳走になって、「あ! おんなじカレーでもこんなに味違うんだ」みたいな、そういう気持ちになれたんですよね。
──確かにわかりやすい例えですね(笑)。
もう1つの僕がカバーしたほうのアルバム(「MASTERPIECE MUSIC MAKES LOW IQ 01」)は、単にカバーするだけじゃなくて、アレンジ力っていうのも試されると考えて。歌メロがしっかりしてるものが好きだとか、原曲のスピードを上げれば派手になるとか、そういう考え方だけじゃなくて、逆にスピードを落として曲の良さを出したり。そういう、素材を活かしつつギミックを効かすっていうことに関しては、次のこのアルバムにすごくつながったなっていう気はしますね。
──イチさんの場合はバンドに縛られてない分、音楽性の幅が広がると思うんですが、そのことはポジティブに捉えているんですね。
そうですね。もともと僕は音楽が好きになって楽器を持つようになったのが13歳ぐらいなんですけど、若い頃にいろいろ音楽を教えてくれた先輩たちは、僕の音楽に対する引き出しにいろんなものを入れてくれたんです。そのたくさんの引き出しの中身を、実際の作品に対してもバランス良く出せるから、結果としてサウンドの幅が出てるのかもしれないです。なので、先輩たちにはすごく感謝してます。
曲作りは壁にブチ当たらないようにしている
──ソロで活動することについてはどう考えていますか?
1人でやることが好きなのかもしれないです。自分でも、すごい大変なことやってんのわかるんですけど。もちろん1人でやってるから1人で責任持たなきゃいけないし、ケツ拭かなきゃいけないな、と思うことはあるんですけど。その苦しみよりも、1人で作業をしていってできあがったときの喜びのほうがデカいから、苦じゃないっていうか、逆に好きでいられるなぁって感じがするんです。もちろんいろんな人のテイストが入ればもっと良くはなるとは思うんです。それがバンドの効果ですよね。1人が持ってきて、それに対して壊すなり、もしくはもっと肉付けするなりとか、そういうのはあると思います。でも僕の場合、曲を作ってる間に完成形をアタマに描いちゃうから、人の意見が入ってくると「違うの、違うの、これはこれでいいの!」って思っちゃう、そこに関しては譲れないっていうか。そういうのがあるから、ホントに好きでやれてんのかなって。
──なるほど。
ま、ホントはこんなことはできないんですけど、野球で言ったら1人で球投げて、1人で打って、1人で走って点入れる、みたいな(笑)。1人で野球は成立しないんですけど、でもソロで音楽やってレコーディングする場合は、そういう形でホントに自分の思うままできてるから、逆にラクなんですよね。ただ、曲作りに関しては、曲を作ろうと思って作ってないから、壁にブチ当たらないようにしてるんです。ほかのことは壁にブチ当たったら、ホントに壊していかなきゃいけないんですけど。
──現実的な障壁?
うん。現実的な壁はね。でも、音楽に関してはブチ当たったらちょっと距離を置こうかなと思って。「ちょっと待って。押してダメなら引いてみな」みたいな。「あっ、これ、良かったんだ」みたいな、そういう時期が来るまで待つようにしてます。そういう面もあって、どうしてもアルバムのリリースは間が空いてしまうんですけどね。でも、その分、濃いものはできたかなとは思います。
CD収録曲
- Master of Ceremony
- GARDEN
- Mr. Jones
- FINE LINE
- MUSIC MATCHES TUNING OF THE WORLD (English Ver)
- DISAPPEAR
- ADDICTED TO THAT FACE
- Don't Mean Nothing (ALT Ver)
- A MAP SONG
- Summer Night Scent
- PRETENDER
- DIS IT
- FIREWORKS
LOW IQ 01(ろうあいきゅーいち)
10代の頃から数々のバンドでベース、ボーカルなどを担当。アポロスのSAX奏者、會田茂一(EL-MALO、FOE)とのアクロバットパンチを経て、1994年にパンクロックバンドSUPER STUPIDを結成する。1996年にアルバム「WHAT A HELL'S GOING ON」でメジャーデビューを果たし、精力的な活動を展開。1999年にSUPER STUPIDが活動休止すると同時に、ソロ活動を開始。2007年1月発売のミニアルバム「THAT'S THE WAY IT IS」で、ソロ名義でもメジャーデビューした。2009年にはソロ活動10周年を記念し、彼の名曲をさまざまな世代のアーティストがカバーしたトリビュートアルバム「HELLO ! LOW IQ 01」が発売。さらに2010年には自身の愛する名曲カバーをコンパイルしたアルバム「MASTERPIECE MUSIC MAKES LOW IQ 01」もリリースされた。ライブではサポートメンバーを従えたバンドスタイルのLOW IQ 01 & MASTER LOW、恒岡章(Dr)とのユニット形式のLOW IQ & THE BEAT BREAKERなど、さまざまな形態でのパフォーマンスを行っている。