当時ハスキンの何が衝撃的だったのか

──このインタビューが始まる前に、「なんでハスキンのためにここまで来なきゃいけないんだよ」ってイチさんがぶつくさ悪態をついていたのが、逆に2人の仲のよさを感じさせていいなあと思いました。

LOW IQ 01　違うんだよ！（笑） 今日の取材場所が俺の思ってたところと違ってたうえに、現場に着いたらイッソンがタバコ吸ってて俺のことを待たせるからさあ。

磯部正文　申し訳ございません！

──アーティスト同士がこういう関係性なのって今あまり見かけないですよね。

LOW IQ 01　いやいや、TOSHI-LOW（BRAHMAN）はいろんなところで誰かしらの文句を言ってますよ！（笑）

──確かにそうですね（笑）。

LOW IQ 01　まあ、俺とイッソンは付き合いが長いから！

──お二人の関係はいつから始まったんですか？

磯部　僕は19歳のときに東京へ出てきて、それから2年ぐらいライブを観に行くだけのような生活をしてたんです。ニューキー（NUKEY PIKES）とかをよく観てたんですけど、彼らがライブをやらなくなったあと、友達が組んでたGMFとかを観に行くようになった頃に、市川くん（LOW IQ 01）がSUPER STUPIDをやってて、そこで見かけるようになりました。「ヤベえ人がいるぞ」って。

LOW IQ 01　俺は1996年ぐらいに、横山健が「このバンド、カッコいいんだよ！」って言うからハスキン（HUSKING BEE）のライブを初めて観て、そこでけっこう衝撃を受けた。彼らのルックスに。

磯部　そうそう、僕のことを最初はローディだと思ってたみたいで（笑）。

LOW IQ 01　ローディがギター背負ってステージに出てくるから、本番になったら誰かに渡すのかなと思ってたら、「えー！ そのまま歌うのー!? 嘘でしょー!?」って。

磯部　まあ、その気持ちもわからんでもない。

LOW IQ 01　今じゃありえないからね？ 今の子はみんな背が高くてさ、ルックスもよくてシャレてるけど、イッソンは小汚ねえTシャツでステージに出てきてさ。あの頃だったらOKだけど、今だったらアウトだよ、アウト！

磯部　アウトですよねえ、ヤバいっすよねえ。

──当時のシーンには今みたいにスタイリッシュなバンドがいなかったですからね。

LOW IQ 01　当時はルックスで勝負しているバンドはいなかったもん。

磯部　そうそう。

LOW IQ 01　そんな中でもハスキンは衝撃だった。デブ、チビ、ハゲの3拍子がそろったバンドだったからね（笑）。

磯部　あっはっは！ そう！ でも当時は、それがほかのバンドにはない自分たちの武器だと思ってましたから。この見た目で歌ったらびっくりするだろうなあって。「お前が歌うんかい！」みたいなね。

LOW IQ 01　今なら予選落ち！ 書類審査で写真見た瞬間に「こりゃダメだ」って。でもね、かと言ってハスキンは実力があったわけでもないのよ。下手でひどかったの。チューニングも合ってない。でもそれがすべていいほうに行ってたんだよね。気持ちだけでやってるって言うか。そういうのも含めて衝撃だった。横山健が「このバンド、カッコいいんだよ！」って言ってたのはそういうことだったんだろうね。

──ああ、なるほど。

LOW IQ 01　しかも、当時は誰もメジャーというものを目指してやってたわけではないから。

磯部　うんうん。

LOW IQ 01　町の兄ちゃんが「CD1枚出せれば記念になるわ」とか、「ちょっとだけ有名になれたらいいかな」ぐらいの気持ちでやってたから、別に大きなステージを目指してたわけではないし。あの頃はフェスもない時代だったからね。