ナタリー PowerPush - livetune×ファンタジスタ歌磨呂

異業種クリエイター“ポップ”談義

livetuneのキーワードは「ポップ」

──ここからはお2人のクリエイターとしての価値観についてお伺いできればと思うんですけれども。まず一緒に仕事をしてきて、共通する感覚を感じることはありますか?

kz いや、ないんですよね。逆にそれがないから面白いって僕は思ってますね。あったら予想の範疇になるというか、自分が思い描いてるベストな作品は出してくれるだろうし、それはそれでありがたいんですけど、歌磨呂さんの場合は全く枠外から飛んでくる(笑)。それが僕はすごく面白いと思ってます。「Transfer」のPVみたいなものは、他の誰も絶対思いつかないから。共通言語がないからこそ生まれるものという捉え方をしてますね。

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ファンタジスタ歌磨呂 僕は、kzくんは勘とかイメージ力がずば抜けてるなと。僕にお任せしてもらえたのも、何かコミュニケーションを超越してるというか、ある種、見えなくても信頼し合えてる感じがしてて。通常の仕事に比べて、絵コンテとかがっちり描かないし。「やらしてください!」みたいな感じでやってるんで。それでまともなのができるのって、他のアーティストではなかなかできないし奇跡的だったりするんです。普通は作り手同士がぶつかることも多いし。でもkzくんはすごく寛容だし、そこがすごいと思います。

kz 確かに。基本出てきたものに「NO」とは言わないですね。基本的なクリエイティブに関して口は出さないです。

──kzさんの中でも、livetuneやRE:NDZや、いろんなチャンネルがありますよね。その中でlivetuneはこういうプロジェクトだという位置付けの共有もあったんじゃないかと思うんですが。

kz livetuneって、単純にポップミュージックを作ろうっていうすごいシンプルなものなんですよね。で、音楽とは別のカルチャーですけど、歌磨呂さんはアートカルチャーにおけるポップというものを持ってると思う。色合いとかデザインとか、そういう別の言語で解釈してくれるというのはあると思いますけど。

──いろんな表現の方法を持ってる中での一番ポップなものがlivetuneである、という?

kz そうですね。音楽としてはそうです。livetuneって別にダンスミュージックに限らないんですよ。「Transfer」はトランスと同じようなテンポでダンスミュージックの感じで作ってますけど、カップリングの「Sign」は普通のポップスだし。これからやってくのも別にダンスミュージックに限らない。そのときにできるポップさみたいなものを表現できればいいなっていう考え方になっている。やっぱり、キーワードはポップなんですよね。そこを拾って、違う形でアウトプットしてもらっている感じかもしれない。

中島愛さんは松田聖子の正統な後継者

──「Tell Your World」は初音ミクだったけれども、今回はボーカルに中島愛さんを迎えてますよね。それも最適なアウトプットを選んだみたいな感じだったんでしょうか?

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kz そうですね。中島さんは、元々「星間飛行」の頃から僕がすごい好きだったんですよ。あの人の声ってすごい独特で、なかなか今の時代にない声だと思うんです。松田聖子の正統な後継者のような感じを持ってるんですよ。ポップスっていうよりは歌謡というか。すごく普遍性を持った歌声だなと思ってて。だからずっと一緒に仕事してみたかったんです。でもまあ、やりたいって言ってもなかなかやれるわけじゃないし。それがたまたまタイミングがちょうど合ったのでお願いできることになったという。

ファンタジスタ歌磨呂 すげえなあ(笑)。僕も「マクロスF」のときから中島愛さんすごい好きだった。今でも相当好きです。

kz デビューしたときにすごいの来たな!って感がありましたからね。ただ、彼女の歌ってわりと純粋なポップスというか、明るい曲調が多いんですよ。「マクロスF」の劇場版の主題歌もそうだったし。だから、若干ハードエッジなサウンドで彼女の歌声を入れるっていうのは、それはそれで新しい試みにはなったのかなと思います。当てはめたらうまくいっちゃったという感じですね。

俺らはアニメとかマンガで育ってきた

──先ほどkzさんは歌磨呂さんの表現にポップさがあると言われてましたが、歌磨呂さんご自身はどう思ってますか?

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ファンタジスタ歌磨呂 ここ数年、インターネットカルチャーの発展もあり、日本のポップカルチャーとかサブカルチャーっていうものがサブではなくメインになってきていると思うんですね。僕が20歳ぐらいのときのデザインとかアート業界って、海外のクリエイティブがカッコいいみたいな空気がすごく強くて。でも俺らはアニメとかマンガで育ってきただろ、俺たちのオリジナルってなんだ?って話になって、学生のときに「mashcomix」っていうマンガサークルを作ったんです。それは既成概念を潰して新しいマンガのスタイルを作ろうと思ってやってたことで。そういうところが根本にあるんです。

──自分たちのルーツであるアニメとかマンガを使った表現をしているんですね。

ファンタジスタ歌磨呂 そうですね。これは絶対世界が真似できない表現方法ですから。あとは、ハイブリッドな感じがすごく大切。で、kzくんはそんな日本のシーンのすごく重要なポジションにいると思うんです。だから僕も心を入れてるところがあって。世界的に見てもめちゃくちゃクオリティの高いものにしなければいけないっていう自分の中のポリシー、プライドみたいなものがありました。

ニューシングル「Transfer」2012年9月26日発売 TOY'S FACTORY

収録曲
  1. livetune adding 中島愛「Transfer」
  2. livetune adding Yun*chi「Sign」
  3. livetune adding 中島愛「Transfer」(Avec Avec Remix)
  4. livetune adding 中島愛「Transfer」(Inst.)
  5. livetune adding Yun*chi「Sign」(Inst.)
初回限定盤DVD収録内容
  • Transfer(Music Video)
初回限定盤封入特典

「ガンスリンガー ストラトス」内で使用できるlivetuneコラボヘッドフォン&ポイント10000Pを入手するためのキャンペーンコード

Toy's Hop livetune「Transfer」限定アイテム販売中

livetune (らいぶちゅーん)

音楽プロデューサーのkzによるユニット。2007年9月、ボーカロイド「初音ミク」を使用して制作したオリジナル楽曲「Packaged」を動画サイトに投稿し、注目を浴びる存在となる。2008年8月にアルバム「Re:package」でデビュー。その後、さまざまなジャンルのアーティストの楽曲の作詞、作曲、リミックスなどを手がける人気クリエイターとして活動する。2011年12月に「Google Chrome “あなたのウェブを、はじめよう。”キャンペーン」のCMソングとしてlivetune名義の新曲「Tell Your World」を制作。YouTubeで公開されたCM映像は1週間で100万再生回数を超え、CM楽曲も話題に。2012年1月に同曲を配信リリースし、3月にミニアルバム「Tell Your World EP」を発表。同年8月には八王子Pとのコラボシングル「Weekender Girl / fake doll」をリリースした。

ファンタジスタ歌磨呂 (ふぁんたじすたうたまろ)

1979年生まれのクリエイター。イラスト、マンガ、アニメーション、テキスタイルなど多岐にわたり活躍している。カラフルでポップな作風に定評があり、アーティストとのコラボレーション作品も多数。livetuneとは「Google Chrome」のCMで使用された「Tell Your World」のビデオクリップでもコラボしている。