「劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD」が、<DAY 1><DAY 2>の2バージョンで全国の劇場にて“開催”されている。
この映画は、スマートフォン向けアプリを原作とするメディアミックスプロジェクト「アイドリッシュセブン」初の劇場ライブとして制作されたアニメーション。IDOLiSH7、TRIGGER、Re:vale、ŹOOĻという4グループ、総勢16人のアイドルが一堂に会し、個性あふれるパフォーマンスを披露する。音楽ナタリーでは同作の“開催”を記念して、「アイナナ」の核の1つである音楽面に携わるkz、結城アイラ、真崎エリカにインタビュー。3人に「劇場版アイドリッシュセブン」を観た感想や提供した楽曲にまつわるエピソード、クリエイター目線で感じる「アイナナ」の魅力を聞いた。
※本記事は「劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD」本編への言及も含まれます。
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取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 梁瀬玉実
「劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD」本予告
キラキラだけじゃないアイドル物語
──まずは、皆さんが「アイドリッシュセブン」というコンテンツに関わることになったときのお話から伺いたいんですが、当時の心境などは覚えていますか?
kz そうですねえ……印象的だったのは、プロデューサーの方から「男女問わず熱くなれる作品を目指していきたい」という話をされたことですかね。僕自身どちらかというとキャラクターよりもストーリーにフォーカスした作品が好みだし、アイドルのキラキラした部分だけを描こうとしているわけじゃないというところが意欲的だなと感じた覚えがあります。
真崎エリカ ビジュアルを見るとキラキラな物語に見えると思うのですが、第1部を読んだ段階でそのイメージを壊されてしまうかもしれませんね。
結城アイラ 「ちょっとしんどいな」って思うかもしれない(笑)。
kz それくらい硬派なストーリーだなと僕は感じました。とはいえ、その音楽を作るとなったときに最初は「どういうふうに作ったらいいんだろう?」と悩みました。もともと男性アイドル……というか男性の歌う曲をあまり作ってこなかったので、だいぶ不安な部分もあったんですよね。なので最初に作った「MONSTER GENERATiON」は特に、制作チームと綿密に話し合いながら作っていった感じでした。
真崎 私はその「MONSTER GENERATiON」の作詞をさせていただくところから「アイドリッシュセブン」に関わり始めたんですけど、その時点ですでにkzさんは私の中で伝説の人だったんですよね。「kzさんの曲に歌詞を書けるんだ!」とすごくワクワクしたのを覚えています。
kz そういうふうに持ち上げられると、やりづらいんだよなあ(笑)。
真崎 あははは。楽曲からは未来へ向かっていくようなイメージを受けて、大まかなストーリーについてもスタッフさんから伺っていたので、それをもとに歌詞を書かせていただいて……今思えばですけど、この歌詞にOKをいただけた最大の理由は、実はタイトルにあるんじゃないかと思っていて。というのも、当時のやりとりを改めて見返したら、制作サイドから「タイトル最高です!」みたいなお声をいただいていたんですよ。だから、一番刺さったポイントはもしかしてそこだったのかなと。
kz タイトルって、第1稿を提出する時点で付けるんですか?
真崎 付けてます。私、タイトルから先に考えるタイプなんですよ。
kz そうなんだ! へえー。
真崎 逆に、タイトルが決まらないとずーっと机の前でお地蔵さんみたいに固まってます(笑)。この曲は真夜中に書いていたのをよく覚えてるんですけど、だんだん夜から朝になっていく、まさにこれから「アイドリッシュセブン」というコンテンツが始まっていくイメージとリンクするような時間帯に書いていた記憶がすごく残っていますね。
結城 いい話! 私はIDOLiSH7のライバル的な立ち位置であるTRIGGERというグループの歌詞を書かせていただいたのが最初なんですけど、それが私の作詞家デビューになったんですね。それまで誰かに歌詞を提供するという経験自体がなかったので、実は当時は「これでいいのかな? 大丈夫かな、合ってるかな?」みたいな心境だったのですが、TRIGGERはIDOLiSH7よりも先にデビューをしていて、特に「SECRET NIGHT」は、彼らにとってのデビュー曲ではなかったですし、がむしゃら感を出してはいけないなと思い、余裕のある雰囲気の歌詞を目指した記憶があります。3人のパフォーマンスを見て、誰もが恋をしてしまうというイメージもそのときからなんとなく抱いていたので、艶っぽさのあるワードも意識してたと思います。
真崎 アイラさんの歌詞を最初に拝見したとき、「なんて切れ味が鋭いんだ! めちゃめちゃカッコいい!」とシビれました。
結城 わあ、ありがとうございます! 鋭いワードについてはŹOOĻの歌詞を書かせてもらうことになったときは特に気合い入れました!(笑)
真崎 そこにすごくIDOLiSH7との差異を感じましたし、いちファンとして「すごい」と思いました。
結城 逆に、エリカちゃんの詞はすごくキラキラしてますよね。キラキラしてるんだけど、それだけじゃないひと言にグッと込める、心に刺さるパワーワードが何かしら毎回あるなっていう印象です。
真崎 ええー、めっちゃうれしい。
──さすがタイトルから作る人というか。
結城 私はどちらかというと全体的な世界観を俯瞰で捉えてテーマを伝えるスタイルなので、特定のワードでグッと惹き付けるエリカちゃんの表現には学ぶところがたくさんあるなと思いました。
真崎 たぶん作り方が全然違うから、お互いにいいところが見えやすいという部分もあるような気がしますね。
結城 そうだね、確かに。
真崎 kzさんは主に作曲家 / 編曲家として「アイドリッシュセブン」に関わられていますけど、本来は歌詞も書かれる方じゃないですか。そういう方の作った曲に歌詞を乗せるのは、いつもすごく緊張します。
kz 確かに嫌ですよね、それは(笑)。
真崎 嫌じゃないですよ!むしろ光栄です!(笑)
kz 僕がお二人の歌詞を見て思うのは、男性アイドルというものの捉え方が自分とは全然違うなってことで。同性から見る場合とは、フォーカスするポイントがだいぶ違うんですよ。「アイナナ」の場合、メインのお客さんはやっぱり女性になってくると思うんで、だからこそお二人に書いてもらえて本当によかったなと。毎回めちゃくちゃ助けられてますね。
結城・真崎 こちらこそです!
結城 だってkzさんのメロディ、ホントよくないですか?
真崎 ねー! 今日ここに来るときApple Musicで「アイドリッシュセブン」のプレイリストをずっと聴いてきたんですけど、「WiSH VOYAGE」がかかった瞬間にテンション上がりましたもん。
結城 めちゃめちゃいい曲ですよね! メロディが本当に素敵で一度聴いたら絶対好きになるやつ!
kz ……やりづらいなあ(笑)。
結城・真崎 (笑)。
最前にめちゃくちゃはしゃいでる観客を発見
──では「劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD」のお話に移りたいんですけども、まずはご覧になった率直な感想を聞かせてください。
結城 いや、伝説が生まれたなって個人的には思いました!
真崎 私もです!
kz マジですごくないですか? あれ。
真崎 なんかもう、言葉にするとどうしたって陳腐になっちゃいそうで、もはや何も言えないです。
kz 「観ればわかる」としか言えない。
──そもそも「こういうものをやりますよ」と最初に聞いたときは、どんなふうに感じました?
kz 説明を聞いても、何を作るのか全然わからなかったんですよね。僕らは劇場ライブ自体の制作に関わっているわけではないから、「ライブを作ります」と言われて「何を言ってるんだろう?」みたいな(笑)。
結城 「どういうことなんだろう?」という感じでしたよね。
kz 僕が最初に想像したのは……例えばバックステージの様子とかも含めた、1本のライブを軸にしたストーリー映画になるのかなと思ってたんですよ。そしたら、本当にライブがまるごと表現されていて驚きました。
真崎 物語というよりは、本当にまっすぐライブを魅せるっていう。もちろんMCとかは笑って泣けて、物語性を感じるところではあるんですけど。
結城 <DAY 1><DAY 2>でMCの内容がちょっとずつ違っていたり、曲の並びも変更されていたりするので、同じ曲でも違う聞こえ方をしますし。
kz メンバー1人ひとりの表情もめちゃくちゃ細かく表現されてますよね。
結城 そうなんですよ! 会場のファンに向ける表情だけじゃなくて、メンバー同士でほほえみ合う表情なんかもすごく生き生きしていて、本当にそこに存在しているように思えてくる。衣装の揺れ方とかもそうですけど、とにかく演出の細かさがエグいです。
真崎 舞台の作り込みもすごいですしね。光の使い方とか演出効果も含めて、リアリティがすごくある。
結城 ミックスもすごく凝ってるんですよ。特に、各ボーカルの定位感には並々ならぬこだわりを感じました。
kz 随所にこだわりが詰まっていて、もはや狂気を感じるレベルですよね。お客さんのノリ方ひとつ取っても、ちゃんと楽曲やパフォーマンス、MCに沿った反応をしてるし……最前に1人、めちゃくちゃはしゃいでるお客さんがいるのを発見して。
結城・真崎 あはははは!
kz オープニングから、その1人だけが死ぬほど飛び跳ねたりしてるんですよ。「ああ今日をすごい楽しみにしてくれてたんだな」「最前の席が当たってうれしいんだな」って思いました。
結城 そりゃあ最前列はうれしいですもんね。
kz そうそう。そういう作り込みのすさまじさも含めて、とんでもないことになっていて。それって、今の時代だからこそ伝わるリアリティでもあると思うんですよ。ここ数年、コロナの影響もあってライブビューイングというものがすごく増えましたよね。メタバース空間で行うライブとかも含めて、映像を通してライブを鑑賞するという行為が多くの人にとって普通のものになったじゃないですか。そういう今だからこそ感じ取れるリアリティがあるというか。
真崎 確かに。
kz これが例えば5年前とかに公開されていたら、全然受け止められ方が違ったんじゃないかなと思いますね。
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やっぱり「モンジェネ」、そして意外な選曲