ナタリー PowerPush - livetune×ファンタジスタ歌磨呂

異業種クリエイター“ポップ”談義

livetuneがニューシングル「Transfer」をリリースする。ボーカリストに中島愛、Yun*chiを迎えた今作のアートワークを手がけたのは、カラフルな色彩と強烈なインパクトを持つ作風で注目を集めるクリエイター・ファンタジスタ歌磨呂だ。今年3月にリリースされた「Tell Your World EP」に続いてのタッグとなる今回、ファンタジスタ歌磨呂はジャケットだけでなくアニメ仕立てとなるビデオクリップも手がけた。

このシングルのリリースを記念し、ナタリーでは2人の対談を企画。楽曲の世界観やビデオクリップ制作の裏話から、両者が思うポップカルチャーの現在、そしてそこで2人が担おうとしている使命までを、じっくり語ってもらった。

取材・文 / 柴那典 インタビュー撮影 / 佐藤類

 
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インターネットカルチャーは自然発火的

──「Transfer」のビデオクリップがめちゃくちゃインパクトのある映像だったので、まずはこの映像がどういうふうに出来上がっていったかをお訊きできればと思います。kzさんからはどういうリクエストをファンタジスタ歌磨呂さんにしたんですか?

インタビュー写真

kz 実は僕、何も言ってないんですよ(笑)。基本的に、リクエストは一切してなくて。好きにやっちゃってくださいっていう。歌磨呂さんに限らずいつもそういう感じでやってるんです。やってもらう人を信頼して、好きなものを作ってくださいって。

──最初に打ち合わせがあって「今回はこういうテーマの曲なので?」みたいな話をしてるのかと思ってました。

ファンタジスタ歌磨呂 今回は打ち合わせもしてないですね。

kz そうですね。だって「Transfer」について会って話すの、この対談が初めてですよね?(笑)

ファンタジスタ歌磨呂 確かに(笑)。いろんな現場で会って雑談はしてたけど、ちゃんと話すのは初めてかも。

──歌磨呂さんは最初に「Transfer」の楽曲を聴いたときにどういう印象を持って、そこからどういうイメージを膨らませていったんですか?

ファンタジスタ歌磨呂 前回の「Tell Your World」のときにも一緒にお仕事をさせていただいたのですが、今回の曲も音を聴いて、歌詞を読んで「インターネットカルチャー」のイメージがビーンと浮かんだんですね。

──インターネットカルチャーのイメージというと?

ファンタジスタ歌磨呂 初音ミクにしてもそうなんですけど、どこか決め打ちしていない印象があって。元々僕は広告のお仕事をしていて、そういうところだと大抵は最初にゴールを設定して、プレゼンテーションをして、そこを目指して進んでいくっていう作業なんです。それって、僕にとっては全然クリエイティブじゃない気がして。でもインターネットカルチャーには自然発火的なところがある。初音ミクだってみんなで育ててきたみたいなものですからね。そういうところがすごい面白いし、今っぽい気がする。だから今回のビデオも核の部分以外は決め打ちしすぎずに、みんなで集まって作ろう!みたいなところがあって。

──kzさんにとっても、「Tell Your World」はまさにそういうインターネット以降、クリエイティブが新しい形で生まれているということをテーマにした楽曲ですよね。今回の「Transfer」には、その次にどういうものを打ち出していこうかといった思いもあったのでは?

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kz うーん、「Tell Your World」はテーマが大きすぎるんで、自分の中では切り離している部分がありますね。多分あれはもう人生で二度と作れないタイプの曲なんです。相手にしているのがインターネットそのものなんで。曲としてあれ以上のクオリティのものを作るという意識はもちろんありますけれど、ああいうバックボーンを持った曲を作る機会なんてなかなかないと思うし。

──例えばOASISがデビューアルバムをもう一度作れるかと言えば作れないわけで、そういう位置付けの曲だと?

kz そうですね、多分。RADIOHEADの「Creep」だったりOASISの「Don't Look Back In Anger」だったり、そういうもんじゃないかなと思います。だから今回の「Transfer」に関してはリセットして、心機一転でやろう、という感じです。

「Transfer」の“一期一会感”を表現した

──「Transfer」はどういうモチーフから作り始めたんでしょう?

kz スクウェア・エニックスさんのゲーム「ガンスリンガー ストラトス」っていうゲームのテーマソングを作ってくれないかとオファーをいただいて。そのゲームが時間軸みたいなものをテーマにしてるんです。「まどか☆マギカ」を書いた虚淵(玄)さんという方が世界観 / 原案を書いていて。なので、その「時間軸」をテーマに、自分なりの切り口や解釈で曲を作ってみようというところがスタートでした。

インタビュー写真

ファンタジスタ歌磨呂 そうなんだ! 僕はゲームの設定、全然知らなかったです(笑)。曲だけ聴いてイメージを湧かせたんで。

──歌詞にも映像にも多元的な世界というモチーフがあるので、共通したテーマ性を感じましたね。

kz 全然ズレてないですからね。何もリクエストせず、ゼロからスタートしてもらってむしろ良かったと思ってます。

──歌磨呂さんは、そういう多元的な世界のイメージは、歌詞から読み取ったんでしょうか?

ファンタジスタ歌磨呂 歌詞とかメロディとか、その世界観みたいなところですね。「一期一会感」みたいなものを感じたんです。偶然と必然とすれ違いと交差があって、それでも人生が進んでいくみたいなイメージ。そういうものがkzくんの曲の中にはすごくあるなと思うんです。きっかけとなる瞬間は常にあって、でもそこに気付けたり気付けなかったりする、という。kzくんの曲って、なんか人生っぽいんですよ。人生の流れで「あっ!」って思う瞬間があって、そこにコミットするときもあれば、しないときもある。すごく群像劇的な感じなんです。そういうところで生じる勇気とかパワーのうねり、そこをなんとか映像で表現したいなと思って作りました。僕はいかにkzくんの曲とかを良く見せるかっていう役回りなんで。

ニューシングル「Transfer」2012年9月26日発売 TOY'S FACTORY

収録曲
  1. livetune adding 中島愛「Transfer」
  2. livetune adding Yun*chi「Sign」
  3. livetune adding 中島愛「Transfer」(Avec Avec Remix)
  4. livetune adding 中島愛「Transfer」(Inst.)
  5. livetune adding Yun*chi「Sign」(Inst.)
初回限定盤DVD収録内容
  • Transfer(Music Video)
初回限定盤封入特典

「ガンスリンガー ストラトス」内で使用できるlivetuneコラボヘッドフォン&ポイント10000Pを入手するためのキャンペーンコード

Toy's Hop livetune「Transfer」限定アイテム販売中

livetune (らいぶちゅーん)

音楽プロデューサーのkzによるユニット。2007年9月、ボーカロイド「初音ミク」を使用して制作したオリジナル楽曲「Packaged」を動画サイトに投稿し、注目を浴びる存在となる。2008年8月にアルバム「Re:package」でデビュー。その後、さまざまなジャンルのアーティストの楽曲の作詞、作曲、リミックスなどを手がける人気クリエイターとして活動する。2011年12月に「Google Chrome “あなたのウェブを、はじめよう。”キャンペーン」のCMソングとしてlivetune名義の新曲「Tell Your World」を制作。YouTubeで公開されたCM映像は1週間で100万再生回数を超え、CM楽曲も話題に。2012年1月に同曲を配信リリースし、3月にミニアルバム「Tell Your World EP」を発表。同年8月には八王子Pとのコラボシングル「Weekender Girl / fake doll」をリリースした。

ファンタジスタ歌磨呂 (ふぁんたじすたうたまろ)

1979年生まれのクリエイター。イラスト、マンガ、アニメーション、テキスタイルなど多岐にわたり活躍している。カラフルでポップな作風に定評があり、アーティストとのコラボレーション作品も多数。livetuneとは「Google Chrome」のCMで使用された「Tell Your World」のビデオクリップでもコラボしている。