音楽ナタリー Power Push - LiSA
失敗も後悔も超えて届ける今の歌
LiSAが通算11枚目のシングル「Catch the Moment」を2月15日にリリースした。2月18日より全国公開されるアニメ映画「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」の主題歌でもある表題曲「Catch the Moment」は、本人いわく「言葉を届ける」ことを最優先したというド直球のギターロック。カップリングにはNHK「みんなのうた」のために書き下ろされた温かく優しいミディアムチューン「リングアベル」と、作曲に前山田健一を初起用した底抜けに楽しいロカビリーナンバー「Merry Hurry Berry」が収録される。
昨年はデビュー5周年ツアーや神奈川・横浜アリーナ2DAYS公演を見事成功させ、今年6月には初のアリーナツアーが決定しているなど、以前にも増して絶好調に見えるLiSAが今届けたかった言葉とは? そして実際のところ、彼女は本当に今絶好調なのか? 本人に話を聞いた。
なお映画ナタリーでは「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」の特集を同時展開中。劇中で主人公のキリトを演じる松岡禎丞と、ヒロイン・アスナ役の戸松遥による対談を掲載している。
取材・文 / 須藤輝 撮影 / 上山陽介
今をもっと楽しんでほしいし、その瞬間がずっと続けばいい
──「Catch the Moment」というタイトルは、実にLiSAさんらしいと思いました。
おっ、そうですか?
──常にLiSAさんと共にある言葉「今日もいい日だっ」や、最近のインタビューなどで見られる「今が一番楽しい」といった発言は、LiSAさんが楽しい瞬間をしっかりつかまえているからこそ出てくるのかなって。この曲はご自身で作詞をなさっていますし、そこにはLiSAさんの生き方、大げさに言えば人生観みたいなものが表れているのではないかと思ったのですが。
今回は「劇場版 ソードアート・オンライン」の主題歌ということもあって、作品のシナリオを読んだうえで「自分は今何が書けるだろう、何を書きたいだろう」ということを考えたので、きっかけをくれたのは作品ですね。ただ作品ありきとはいえ、自分が今思ってることをすごく素直に書かせてもらいました。
──作品がくれたきっかけとは、具体的には?
「ソードアート・オンライン」という作品では、それぞれのキャラクターがオンラインゲームの中で出会った仲間たちのことを、彼らと一緒に遊んだ思い出も含めて、ずっと大事にしながら生きているんですね。そんな彼らを見て、今をもっともっと楽しんでほしいし、その瞬間がずっと続けばいいなって思ったんです。それは、私がファンの子たちに対して抱いている気持ちと同じだなって。
今が楽しいぶんだけ、明日への不安も大きい
──ただ、その瞬間はずっとは続かない。つまり人生は有限であることが、歌詞にある「命のリミット」「あと何回キミと笑えるの?」といった一節で示唆されています。野暮なことを言いますけど、当然「キミ」というのはLiSAさんのファン、通称「LiSAッ子」のことでもある。
私は今、「キミ」と生きていることをすごく幸せに感じていて。特にライブをしているときは、このままみんなとずっと遊んでいられたらいいと思うし、今この瞬間を、一瞬一瞬を大事にしている間に気が付いたらおばあちゃんになってたらいいのにって思うんです。と同時に、明日への不安もすごく大きくて。
──何か事故に遭ってステージに立てなくなってしまうかもしれないとか。
そうそう。そんなことを考えながら詞を書いていたら、自分の机の斜め前に置いてあるアナログ時計が目に入ったんです。で、時計の針が追っかけっこしてるのを眺めてるうちに、「この針があと何周したら私の人生は終わるんだろう?」って思い始めて、今できることをやらなくちゃっていう気になったんですよ。「今のうちにブログ更新しとこ」とか(笑)。
──手近なところから(笑)。でも、その若さで人生のタイムリミットを意識するのは少し早いような気も。
たぶん、自分が今シンガーとして幸せだからこそ、そう感じるんでしょうね。夢見ていた場所に立てたから。私はデビューが遅かったし、夢が叶わなかった時間のほうが長いんですよね。だから、まさか武道館公演が現実のものになるとは思わなかったし。その武道館の先には何があるのか正直わからなかったんですけど、みんなと今できることを1つひとつ積み重ねていったらいつの間にか横浜アリーナ2DAYSになってたし(参照:LiSA、横アリ舞台に縦横無尽に遊びまくった“the Sun”&“the Moon”ライブ)、次は6月からのアリーナツアーが待ってる。そういうふうに“今”を大事に育てていたら、自分にとって自然な形で幸せがそこにあったし、そういうふうにしか自分の未来を信じていけないんだなって。
失敗も後悔もひっくるめて、運命を肯定したい
──ちょっと意地悪な質問なのですが、「デビューが遅かった」ということは、デビューできたかもしれないモーメントをキャッチし損ねていたという言い方もできますよね?
確かに、キャッチできなかったモーメントもいっぱいありますね。去年の横浜アリーナで、たった1回しかないウェーブをキャッチできなかったり(笑)。でも、私のキャリアを振り返った場合、逃した瞬間のほうが多いかも。だからデビューするまでに何度も挑戦したし、たくさん傷付いたし、周りの人もたくさん傷付けてしまったし。どちらかというと、私は後悔が多い人だと思います。
──でも、その後悔の上に「楽しい今」が成り立ってもいる。前回のインタビュー(参照:LiSA「Brave Freak Out」インタビュー)で、LiSAさんは「一番なりたいもの」にはなれなかったけれども、それに不満があるかといったらそうではないと話されていました。
はいはいはい。
──「Catch the Moment」の歌詞も「嫌になった運命を ナイフで切り刻んで もう一度やり直したら キミに出会えないかも」とあるように、失敗も後悔も全部ひっくるめて運命を肯定してらっしゃいます。それが、インタビューでの発言を裏付けているようで。
おっしゃる通りだと思います。失敗も後悔もあったからみんなに出会えて、今この場所にいられるわけですから。くどいようですけど、今、スゲー楽しいです(笑)。
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- ニューシングル「Catch the Moment」 / 2017年2月15日発売 / アニプレックス
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1944円 / SVWC-70233~4
- 期間生産限定盤 [CD] 1404円 / SVWC-70235
- 通常盤 [CD] 1296円 / SVWC-70236
初回限定盤・通常盤CD収録曲
- Catch the Moment
[作詞:LiSA / 作曲:田淵智也 / 編曲:江口亮] - リングアベル
[作詞:LiSA / 作・編曲:野間康介(agehasprings)] - Merry Hurry Berry
[作詞:古屋真 / 作曲:前山田健一 / 編曲:Tom-H@ck]
初回限定盤 DVD収録内容
- 「Catch the Moment」ミュージッククリップ
- 「リングアベル」映像
期間生産限定盤 CD収録曲
- Catch the Moment
- リングアベル
- Catch the Moment -Instrumental-
スタッフ
- 原作:川原礫(電撃文庫 刊)
- 監督:伊藤智彦
- 脚本:川原礫、伊藤智彦
- キャラクターデザイン・総作画監督:足立慎吾
- 音楽:梶浦由記
- 主題歌:LiSA「Catch the Moment」(アニプレックス)
- 制作:A-1 Pictures
キャスト
- キリト:松岡禎丞
- アスナ:戸松遥
- ユイ:伊藤かな恵
- リーファ:竹達彩奈
- シリカ:日高里菜
- リズベット:高垣彩陽
- シノン:沢城みゆき
- クライン:平田広明
- エギル:安元洋貴
- 茅場晶彦:山寺宏一
- ユナ:神田沙也加
- エイジ:井上芳雄
- 重村:鹿賀丈史
- 「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」公式サイト
- 「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」 (@sao_anime) | Twitter
- 「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」作品情報
LiVE is Smile Always~LiTTLE DEViL PARADE~
- 2017年6月17日(土)
兵庫県 神戸ワールド記念ホール - 2017年6月24日(土)
埼玉県 さいたまスーパーアリーナ - 2017年6月25日(日)
埼玉県 さいたまスーパーアリーナ - 2017年7月1日(土)
愛知県 日本ガイシホール
LiSA(リサ)
6月24日、岐阜県生まれのボーカリスト。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビュー後はアニメ「Fate/Zero」1stシーズンのオープニングテーマ「oath sign」、「ソードアート・オンライン《アインクラッド》編」のオープニングテーマ「crossing field」などスマッシュヒットを連発。2013年にはシングル「best day, best way」がノンタイアップながらオリコン週間シングルランキング6位を記録し、また10月に発表したアルバム「LANDSPACE」がオリコン週間アルバムランキング2位をマークし、アニソンシーン内外で高い人気を誇る存在となる。2014年末には「COUNTDOWN JAPAN 14/15」に、2015年夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」や「氣志團万博」にも出演するなどさらに活動の幅を広げている。2017年2月には通算11枚目となるシングル「Catch the Moment」をリリース。6~7月には初のアリーナツアー「LiVE is Smile Always~LiTTLE DEViL PARADE~」を行う。