音楽ナタリー Power Push - LiSA
失敗も後悔も超えて届ける今の歌
締め切りギリギリまで歌詞を書けないのには理由がある
──「みんなのうた」用の歌を作詞するにあたって、気負ってしまったとか、苦労した部分はありますか?
いや、書きたいことのイメージが固まってしまえばわりとスラスラ書けてしまうほうだと思うので、特には。強いて言えば、「みんなのうた」とは関係なく、こういうミドルテンポの曲やバラードの作詞はけっこう苦手です。ごまかしがきかないというか、全部の言葉に気持ちが乗ってないといけないので。
──逆にアップテンポの曲だと、言葉の意味よりもメロディやリズムとの相性を優先するみたいな。それこそ先ほどの田淵さんのお話にあったように。
そうそう。もちろん、速い曲だからといって言葉の意味をないがしろにしているわけでは決してなくて。要は、速い曲の場合はまず曲に乗る言葉を選んで、そこにあとから意味を付加していくような書き方をすることが多いんですね。でも、ミドルやバラードって、思いが先行するんです。だからラブレターを書いてるような感覚なんですよね。
──言葉選びにより慎重にならなければいけないから、大変ではあれど、歌詞がまったく出てこないようなことはない?
いや、ありますね。たぶん、物を書く人に一番多いタイプだと思いますけど、締め切りギリギリにならないと出てこない。
──出てこないし、書き始めない。例えば締め切りまで1週間あっても、本腰を入れて取りかかるのは前日だったり。
そうそうそう(笑)。でも、それにも私は理由付けができるんです。だって、その1週間のうちに私たちはいろんなものを見聞きして、吸収できるわけじゃないですか。
──なるほど、その間に新しい語彙が備わっているかもしれない。
そう! 「今よりも1週間後のほうが、いい言葉が出てくるはずじゃん!」……って自分を正当化します(笑)。
前山田健一×ロカビリー×モーニング娘。=?
──さて、幼い少年のちょっと寂しい気持ちを優しく描いた「リングアベル」の余韻を見事に打ち消してくれるのが、3曲目の「Merry Hurry Berry」です。
あはははは(笑)。いや、これめっちゃ楽しかったですよ、歌ってて。
──でしょうね。前2曲との落差がとんでもねえなって思いました。2球続けてど真ん中のストレートが来たと思ったら、3球目は変化球というか、魔球みたいな。でも、3曲通して聴くと不思議と収まりがいい。この「Merry Hurry Berry」の作曲は前山田健一さんですが、LiSAさんの楽曲を手がけるのは初めてですよね?
初です。
──なぜ前山田さんに依頼されたんですか?
以前から前山田さんの曲はすごく好きだったんですけど、「私にはちょっとポップすぎるかな」「私がもう少し若かったら歌えたかも」ってずっと思ってたんですよ。でも、その気持ちを変えたのが、前山田さんがプロデュースしたMAXさんの「#SELFIE ~ONNA Now~」なんです。従来のMAXさんのカッコよさを引き出しつつ、一方で従来のMAXさんのイメージをぶち壊す、超最高な曲で。「私、この路線ならいける!」「こういうのなら私が歌っても許されるかも!」と思って(笑)。
──そして、編曲はTom-H@ckさんです。
はい。前山田さん特有の世界観、乱暴に言えば“電波”な感じを「1990年代のロカビリーにしてください」ってお願いしたのがTomさんで。私のイメージでは、ポニーテールにしてサーキュラースカート穿いてジャイブやバップを踊ってる感じ。だからピアノのフレーズとかも超カッコいいし、生の楽器がちゃんと遊んでるんです。
──仮に前山田さんに編曲まで依頼していたら、また違ったアレンジになっていたかもしれないですね。
Tomさんに編曲を頼んだ理由も、前山田さんとは別の方向で引っ掻き回してくれると思ったからなんですね。その思惑通り、仕上がりを聴いて、作詞の古屋(真)さんと「マジTomさん天才だね!」ってなりました。
──その古屋さんの歌詞も、やはり前2曲との落差がすごい。これは古屋さんをけなしているのではなく、むしろ褒めているんですけど、Aメロから「スクラッチでリゾート旅行 当てたいねぇ」とか、歌詞の内容が一気に浮ついた感じに。
ですよね(笑)。作詞に関しては、古屋さんと私の合言葉は「モーニング娘。」だったんです。具体的には、古屋さんにはモー娘。さんの「Mr.Moonlight ~愛のビッグバンド~」のように、子供から大人まで幅広い層の人が音楽で楽しめるような言葉選びで、かつさっき言ったロカビリー要素を加味した詞をお願いしました。
──前山田さんの曲をTom-H@ckさんがロカビリーアレンジして、それを古屋さんがモー娘。の世界観に落とし込む。見事な采配ですね。
はい。結果「何も考えずに楽しもうぜ!」って曲になりました。
LiSAの悩みには終わりがない
──LiSAさんは昨年デビュー5周年を迎えられましたが、それもあってか、ここ1、2年は心身共にすごく調子がよさそうに見えるんですよ。そんな絶好調のLiSAさんが、2017年1発目のシングルの表題曲で直球勝負を挑んできた。だから本当にいい調子なんだなあと思ったのですが、実際、いい調子なんですか?
いい調子……でしたね。
──「でした」?
いや、人ってたぶん、悩んでも悩んでも悩み終わらないんだなって。私は、周りの人からすると「そんなことで?」って思うようなことでいちいち悩んじゃうから。だから私にとっては去年もめちゃ大変な1年だったんです。もちろん、昔に比べればいろんな悩みを自分1人で解決できるようになったし、大変なことも乗り越えられるようになったけど、そしたら今度はまた別のことで悩むし、落ち込むし……。
──差し支えなければ、その悩みを教えていただいてもいいですか?
私は基本、人の感情で悩むことがとても多いんですけど、例えばTwitterを見てても「なぜこの人はこのタイミングでこんなことを言うんだろう?」とか、つぶやいた人の心の内や生い立ちなんかをいちいち考えちゃったり。結局、私は「Catch the Moment」の歌詞みたいに、いつまで経ってもどこまで行ってもずっと不安なんですよ。でも、一切の不安なく生きているように見える人もいるじゃないですか。
──はい。「キミ、どうしてそれを悩まないでいられるの?」って思っちゃう人、たまにいます。
そう。で、そういう人を目の当たりにすると、自分との差異や感覚のズレを感じて「私って考えすぎなのかな?」とか「いちいち悩む私はダメな子なのかな?」って、また悩む。それはTwitterでも、直接対面してもそう。私はファンの子たちにフォローを返してるから、いろんなツイートがタイムラインを流れてるんです。
──なかなかに難儀な性分ですが、自分とは価値観の異なる人を「理解できん」と切り捨てるよりは、よほど健全で建設的ではないかと。
なんか、理解したくなっちゃうんですよね。理解できる気がするというか、Twitterだったらなぜその人がそういう発言をするに至ったのか、原因を知りたい。それは誰かを傷付けるために発した言葉なのか、それとも何か別の意図があったのか……みたいに考えちゃいますね。
──そうやって蓄積された知識や語彙が、また次の歌詞に生かされるかもしれないですし。
そうですね。今度のアリーナツアー「LiTTLE DEViL PARADE」では、自分と人との違いとか、人のネガティブな感情も理解して、お互いに認め合おうよっていうのを1つのテーマにしているんですよ。今年はまず、アリーナツアーという自分にとってもびっくりな出来事が控えていますけど、その先もたくさん楽しいことを練り練りしていくので、その瞬間瞬間をみんなと思い切り楽しめたらいいなと思います。
- ニューシングル「Catch the Moment」 / 2017年2月15日発売 / アニプレックス
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1944円 / SVWC-70233~4
- 期間生産限定盤 [CD] 1404円 / SVWC-70235
- 通常盤 [CD] 1296円 / SVWC-70236
初回限定盤・通常盤CD収録曲
- Catch the Moment
[作詞:LiSA / 作曲:田淵智也 / 編曲:江口亮] - リングアベル
[作詞:LiSA / 作・編曲:野間康介(agehasprings)] - Merry Hurry Berry
[作詞:古屋真 / 作曲:前山田健一 / 編曲:Tom-H@ck]
初回限定盤 DVD収録内容
- 「Catch the Moment」ミュージッククリップ
- 「リングアベル」映像
期間生産限定盤 CD収録曲
- Catch the Moment
- リングアベル
- Catch the Moment -Instrumental-
スタッフ
- 原作:川原礫(電撃文庫 刊)
- 監督:伊藤智彦
- 脚本:川原礫、伊藤智彦
- キャラクターデザイン・総作画監督:足立慎吾
- 音楽:梶浦由記
- 主題歌:LiSA「Catch the Moment」(アニプレックス)
- 制作:A-1 Pictures
キャスト
- キリト:松岡禎丞
- アスナ:戸松遥
- ユイ:伊藤かな恵
- リーファ:竹達彩奈
- シリカ:日高里菜
- リズベット:高垣彩陽
- シノン:沢城みゆき
- クライン:平田広明
- エギル:安元洋貴
- 茅場晶彦:山寺宏一
- ユナ:神田沙也加
- エイジ:井上芳雄
- 重村:鹿賀丈史
- 「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」公式サイト
- 「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」 (@sao_anime) | Twitter
- 「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」作品情報
LiVE is Smile Always~LiTTLE DEViL PARADE~
- 2017年6月17日(土)
兵庫県 神戸ワールド記念ホール - 2017年6月24日(土)
埼玉県 さいたまスーパーアリーナ - 2017年6月25日(日)
埼玉県 さいたまスーパーアリーナ - 2017年7月1日(土)
愛知県 日本ガイシホール
LiSA(リサ)
6月24日、岐阜県生まれのボーカリスト。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビュー後はアニメ「Fate/Zero」1stシーズンのオープニングテーマ「oath sign」、「ソードアート・オンライン《アインクラッド》編」のオープニングテーマ「crossing field」などスマッシュヒットを連発。2013年にはシングル「best day, best way」がノンタイアップながらオリコン週間シングルランキング6位を記録し、また10月に発表したアルバム「LANDSPACE」がオリコン週間アルバムランキング2位をマークし、アニソンシーン内外で高い人気を誇る存在となる。2014年末には「COUNTDOWN JAPAN 14/15」に、2015年夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」や「氣志團万博」にも出演するなどさらに活動の幅を広げている。2017年2月には通算11枚目となるシングル「Catch the Moment」をリリース。6~7月には初のアリーナツアー「LiVE is Smile Always~LiTTLE DEViL PARADE~」を行う。