音楽ナタリー PowerPush - kors k×DJ Shimamura

盟友との対話から紐解くkors kの新たなモード

新作は自分で使える曲を

──前回のインタビューでkors kさんは「『BEMANI』シリーズのファンだけでなく、もっと幅広い人たちに作品が届いてほしい」とおっしゃってました(参照:kors k「Let's Do It Now!!」インタビュー)。前作をリリースして、リスナーからの反響はkors kさんの思い通りのものでしたか?

kors k 思い通りというわけではなかったですね。もちろん「BEMANI」ファンの人以外にも注目してもらえたのはよかったんですけど、そういうポジティブな面とちょっと苦戦したなと思うことの両方があって。

──具体的にはどういうことでしょうか?

kors k

kors k やっぱり僕は、よくも悪くも「ゲーム音楽プロデューサー」っていうイメージが強いんです。僕の曲をずっと聴いていてくれる人が「あ、メジャーなんだ」っていう安心感を得てくれて、みんなを喜ばせることができたのがポジティブなことでした。

──苦戦したことっていうのは?

kors k いろんなDJにアルバムを配ってみたんですけど、特にEDMのイベントって日本人の曲をかけないんですよ。海外の売れてる曲をとにかくかけるっていう風潮があって。そこに切り込む作品にするためにいろいろ研究してアルバムを作ったんですけど、現実にEDMのイベントで僕の曲をかけてもらうのは難しかったんです。

DJ Shimamura 今のEDMやクラブミュージックはとにかくヒットした曲を、みんなが知ってる曲を流そうって感じになってるんだよね。例えば「Beatport」(※ダンスミュージックやクラブミュージックのジャンルを中心に扱う音楽配信サイト)のデジタル配信ランキングのトップ10がメインになるみたいな。そういう風潮の中で、曲はいいんだけど知名度が高くない曲をチョイスしようっていうのは難しいのかもしれないね。

kors k そういうところに壁を感じてしまったんですよね。

DJ Shimamura でもDJがかけ続けることで無名だった曲が徐々に浸透して、フロアからヒット曲が生まれるみたいなこともあるから。だからあんまり心配しなくても大丈夫だよ。kors kくんの曲は全部いいから。

kors k ありがとうございます。あとは単純に、自分がEDMをメチャクチャ聴いてたけど、EDMのDJをそんなにやってなかったという背景もあって。だから自分がかけない曲は、やっぱり人もかけてくれないよなっていうのは痛感しました。失敗とまでは言わないですけど、反省点だったと思っています。

──前回の反省点を受けてできあがったのが、今作「Let's Do It Again!!」ということでしょうか?

kors k そうですね。前作で自分のポジションっていうのがけっこうハッキリしたと感じていて。今回は無理に広げていかないで、自分らしく楽しみながらやっていくのがやっぱり重要なのかなっていうところに立ち返ったんです。具体的には前作ですごく意識していたEDMって要素をもう取っ払っちゃって。そういうくくりで考えるのはやめようと思ったんです。

DJ Shimamura

DJ Shimamura 流行に合わせるより、自分の作りたいものを大事にしたのがこのアルバムなんだね。

kors k そうですね。前作を出してその反応を受けて逆に吹っ切れたというか。今回のアルバムに入ってる新曲はジャンルがいろいろ散らばっていて自分でも楽しんで作れましたね。バリエーションがあって新しい発見もありましたし、前回の経験を生かしてできたアルバムだなって思ってます。

──バリエーションが豊富な新曲の中でも、「TOKYO」は前作から引き続きEDMの要素が強いナンバーですね。

kors k サウンドはEDMっぽいんですけど、BPMが138くらいでちょっと速いんです。普通、EDMだとBPMが128とか130ぐらいなんですけど、自分がDJセットで使ったとき、そのぐらいのBPMだとちょっと物足りなく感じてしまうんですよね。だから「TOKYO」は、自分のセットで使えるぐらいの速めにして。誰も使わなくていいから、自分のテンポでいこうって気持ちで作りました。

DJ Shimamura 確かに、自分で使えるかどうかって大事だからね。

kors k 「Big Ship」に関してはさっきも少し話に出ましたけど、僕らがいるハッピーハードコアのシーンのアンセムになってほしいと思って作った曲なんです。だから今回はとにかくバリエーションが豊富なアルバムになったなと思っています。いろんな音を提示している僕本来の見せ方ができたんじゃないかな。

イメージより100倍緻密なリミックスも

──今作はkors kさんによる新曲だけではなく、Ryu☆さんやP*Lightさんによるリミックス音源も収録されています。なぜ新曲とリミックス音源の両方が入るアルバムになったんでしょうか?

kors k もともとはリミックスアルバムを出しましょうって企画だったんですよ。でも自分の名前が付いて出るものだったら、やっぱりアピールしたいなと思って。前回よりいろんなことができるようになってる実感もあったから、新曲をたくさん入れさせてもらいました。

──リミックス音源は6曲入っていますが、kors kさんが一番驚いた音源はどれですか?

kors k 一番バチコーンってきたのはlapixくんの「Shibuya Jungle」ですね。彼はイケイケなサイケトランスみたいなハイテックという音楽をやってるんです。僕は「Shibuya Jungle」っていう自分の曲とハイテックが合わさったサウンドをなんとなくイメージしながら彼にお願いしたんですけど、できあがった音源は想像の100倍くらい緻密なものになっていて。

DJ Shimamura 100倍緻密ってヤバいね(笑)。

kors k 実際、リミックスに300トラックくらい使ってるらしいんですよ。もちろん曲もすごいカッコよくて、期待してる以上のものを返してくれるのがうれしいんですよね。それは彼に限らず、今回お願いしたみんなそうなんですけど。アメリカ人のAkira Complexは日本人とはちょっと違ったサウンドアプローチで、今まで僕が聴いたこともないような編集をしてきたりとか。彼に連絡すると音のネタばらしをいっぱいしてくれるんですけど、「あれはこういうプラグインを使って」とか「複数の編集ソフトを立ち上げて」とか、すごく面倒くさそうなことをやってましたね(笑)。

DJ Shimamura けっこういろいろ凝るkors kくんから見ても、面倒くさいって思うんだ。相当だね。

──Shimamuraさんが今回のリミックス音源の中で、注目した作品はどれですか?

左からkors k、DJ Shimamura。

DJ Shimamura 実は僕、まだリミックス音源は聴けてないんですよ。だから今、リスト見ながらすごくいろいろ想像してた(笑)。Camelliaくんとかどういうことをやってるんだろうなって、すごく気になりますね。

kors k すごくカッコよかったです。

DJ Shimamura みんな知ってるアーティストだから、ある程度予想はつくんだけど、聴いたら「そうくるのか」みたいなところが絶対あるので。CDを聴くのが楽しみですね。

kors k 今回のリミキサーは、DJ Shimamuraにリミックスを頼んだのと同じで僕の中ではテッパンな人たちなんです。今回のメンツは僕の予想を超えて、CDを買ってくれるファンのみんなを納得させられる音を作ってくれたと思っています。

kors k ニューアルバム「Let's Do It Again!!」 / 2015年3月18日発売 / 2700円 / EXIT TUNES / QWCE-00450
kors k ニューアルバム「Let's Do It Again!!」
収録曲
  1. Let's Do It Again!! Intro / kors k
  2. Big Ship / kors k feat. Yukacco & MC STONE
  3. TOKYO / kors k
  4. I'm On Fire / kors k
  5. Programmed GAIA / kors k feat. SH-01
  6. Raise Your Hands Up / The 4th
  7. Weekend / kors k feat. MAKINO
  8. New Lights(Extended Mix) / kors k
  9. On My Wings(Ryu☆ Remix) / kors k(Remixed by Ryu☆)
  10. Shibuya Jungle(lapix Remix) / kors k(Remixed by lapix)
  11. Because of You(Akira Complex Remix) / kors k(Remixed by Akira Complex)
  12. Ultra Hardcore(P*Light Remix) / kors k(Remixed by P*Light)
  13. Big Ship(Hommarju Remix) / kors k feat. Yukacco & MC STONE(Remixed by Hommarju)
  14. Nirvana(Camellia's "BinaryHeaven" Remix) / kors k feat. ЯIRE(Remixed by Camellia)
DJ Shimamura ニューアルバム「FENIX」 / 2015年4月26日発売 / 価格未定 / DNCD-010 / DYNASTY RECORDS
DJ Shimamura ニューアルバム「FENIX」
EXIT TUNES DANCE PARTY -beatnation summit 2015-

2015年3月22日(日)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
OPEN 15:00 / START 16:00

<出演者>
MAIN ACT:beatnation(dj TAKA / DJ YOSHITAKA / L.E.D. / Sota Fujimori / 猫叉Master / kors k / Ryu☆)

GUEST:TOMOSUKE / VENUS / wac / TAG / kradness / 松下 / Mayumi Morinaga / Xceon / Prim / Starving Trancer / Dai. / Halka / Yossy / and more

OPENING ACT:beatnation RHYZE(DJ TOTTO / PHQUASE / かめりあ / P*Light / Hommarju)

kors k(コースケ)

kors k

音楽プロデューサー、アーティスト、DJ。10代の頃からシンセサイザーで楽曲制作を始め、2000年にコナミの音楽ゲーム「beatmania IIDX 4th Style」に提供した「Clione」でデビュー。「beatmania」シリーズの主力トラックメーカーとして楽曲を提供し続けながら、アニメ関連の楽曲やJ-POPのリミックスなどを手がけ、トータルで400曲以上におよぶ楽曲群を世に送り出している。teranoidやEagle、StripE、Ryu☆とのユニット・The 4thといった名義でも活動。現在はDJとしてクラブやイベントのステージでも活躍しており、国内のみならずアメリカやアジア各国でもライブを重ねている。2014年6月に、アルバム「Let's Do It Now!!」をリリース。2015年3月に前作のリミックス音源と新曲を収めた「Let's Do It Again!!」を発表した。

DJ Shimamura(ディージェーシマムラ)

kors k

ハードコアレイブの分野で活躍するアーティスト、DJ。クラブミュージックシーンのみならず、PCゲーム「夜明け前より瑠璃色な」への楽曲提供など、ゲームミュージックの音楽プロデューサーとしても知られている。2009年に1stアルバム「SX」をリリース。2013年には「beatmania IIDX 21 SPADA」に「Overload Frontier」を提供した。音楽制作やDJとしてのみならず、CDジャケットのアートワークやTシャツなどを手がけるデザイナーとしても活躍している。2015年4月にニューアルバム「FENIX」を自身が主催するレーベルDYNASTY RECORDSから発表する。