新しい音楽をレコメンドする役割

──Shimamuraさんは2013年に「BEMANI」シリーズに楽曲提供をしています。当時のShimamuraさんは音ゲーのシーンをどう見ていたんでしょうか？

DJ Shimamura　僕が「BEMANI」シリーズに曲を提供した頃って、海外で開催されるアニメコンベンションみたいな、日本のアニメやゲームの見本市に呼ばれて行く機会が多くて。お客さんは日本好きが多いし、「beatmania」とかのゲーム機は海外にも置いてあるから、音ゲーの曲がすごく盛り上がるんですよ。ファンが世界中にいるんだなっていうのが、「BEMANI」のイメージですね。

kors k　DJ Shimamuraって、「BEMANI」の新規参入希望ランキングみたいなのにずっとランクインしてたんですよね。

DJ Shimamura　ずっと常連だったらしいね（笑）。だから曲を作るときは相当プレッシャーを感じていて。でも最初にL.E.D.（角田利之）さんと打ち合わせしたとき「『beatmania』っていうゲームの中にはいろんな音楽が入ってて、ゲームを通じて世の中にはこれだけ面白い音楽がいっぱいあるんだっていうのを伝えたい」って話を聞いて、すごく感動したんです。だから僕が「BEMANI」に参加するんだったら、一番の得意分野であるUKハードコアのよさを存分に引き出したトラックを遊んでもらおうと思って「Overload Frontier」って曲を提供したんです。

──ユーザーからの反応はどうでしたか？

DJ Shimamura　すごくたくさんの反響をいただいて、みんなが好意的に受け入れてくれたみたいなのでよかったです。「難しい！」って反応もたくさんあって、僕の中ではガッツポーズでしたね（笑）。

kors k　実際プレイしてみました？

DJ Shimamura　いや、見せてもらった。自分では絶対できないから上手な友達にプレイしてもらって。横で見てて「これは作るほうが楽だな」って思いましたね（笑）。

──kors kさんも海外のイベントに出演することがありますが、そのときのお客さんの反応ってどうですか？

kors k　海外に行っても「『BEMANI』のあれかけてほしい」とか、「あの曲最高だったからまたああいうの作ってよ」とか、熱く語られることはたくさんありますね。みんな音ゲーを愛してくれてるんだなあって実感します。

DJ Shimamura　「BEMANI」シリーズって10代の子たちにとって、いろんな音楽のジャンルにハマってく入り口になってるんだよね。

kors k　DJのポーター・ロビンソンも、もともとは音ゲーが好きで音楽の世界に入ってきてるし。

DJ Shimamura　クラブシーンで活動してるアーティストとかに、「音楽にハマったキッカケは？」って聞くと、「BEMANI」って答える人がけっこう増えてきてる。やっぱり音楽を知るきっかけというか、今までだったらクラブに足を運ぶか、CDを選んで買わないと聴けなかった音楽がゲームセンターですぐ聴けるわけだから。

kors k　そうなんだよね。DJって“音楽を紹介する”役割もあると思うんですよ。だから「BEMANI」シリーズの中で、僕は新しいものをレコメンドするポジションでいたいなと考えていて。いろんな音楽を吸収して、それを僕がみんなに伝えて楽しんでもらう。今回のアルバムはそういう流れを意識した、ある意味集大成的な作品になってますね。

Twitterのリプライに触発されて

──いろいろ話を伺っていて、kors kさんのリスナーへのサービス精神をすごく感じました。リスナーが楽しめるものや求めるものを先読みして楽曲を作っているというか。

kors k　実は今回このアルバムを作るときにまずTwitterでハッシュタグを作ったんですよ。「Let's Do It Again!!」の頭文字を取って「#LDIA」って。それでどんな曲を聴きたいか、アルバムに入っててほしいかをTwitter上で募集したんです。アルバムのCDを取った奥のインサートのところにTwitterで意見をくれた人たちの名前を載せてるんですよ。

DJ Shimamura　すごくきめ細やかだね。それはみんな喜ぶよ。

kors k　やっぱりTwitterとかが流行すると、みんなの反応がダイレクトに伝わってくるから。1人で作ったものを一方的にぶつけるより、みんなにとっても思い出に残るようなものにしたいと思うんですよね。そうやって投げかけることで僕も新しい刺激を受けることができますし。

──Twitterのリプライがもとになってできた曲はどれですか？

kors k　「レイブみたいなサウンドがいい」っていう声があって作ったのが「I'm On Fire」で、「ハードスタイルを聴きたい」という声から生まれたのが「Raise Your Hands Up」ですね。「Weekend」はちょっと違う感じの声をもとに作った曲で。女の子かな、「金曜の夜に仕事終わりで帰って、嫌なこともあったんだけど聴いたら忘れられるようなキラキラした曲を」みたいなことをハッシュタグを付けて書いてくれて。その発言にすごく触発されて作った曲が「Weekend」なんです。

DJ Shimamura　注文が来たからそれ通り作るんじゃなくて、1個のテーマとしてもらったものを“kors kサウンド”にしてどうアウトプットするかっていうのが、外から見てても一番面白いんだよね。だからリスナーも喜んでると思うよ。

kors k　やっぱり1人で作ってると煮詰まっちゃうし、どこがゴールかわからなくなってしまいますから。みんなが求めていないものを作っても虚しいし。だったら最初にリサーチして、喜んでもらえる曲を作ったほうが面白いかなって思ったんです。