こゑだが約2年半ぶりとなる新作ミニアルバム「モンシロチョウ」をリリースした。
2015年リリースのミニアルバム「Nice to meet you.」では作詞作曲に挑戦し、アーティストとしての新しい一面を見せた彼女。このたび発表される「モンシロチョウ」でも全楽曲を自身で手がけている。また今作では田中潤(GENTOUKI)、二村学、和田たけあき、ryo(supercell)、buzzGといった面々をアレンジャーとして迎えており、バラエティに富んだサウンドが楽しめるこゑだの新たなスタートを示す内容となっている。
2年半ぶりとなる音楽ナタリーのインタビューでは、「Nice to meet you.」リリース以降から「モンシロチョウ」が生まれるまでの自身の変化を語ってもらった。
取材・文 / 北野創 撮影 / 星野耕作
やらないで後悔するよりは自分でやって後悔したほうがいい
──ついに2ndミニアルバムが完成しましたが、今の率直なお気持ちをお聞かせください。
もちろんうれしいんですけど「やったー!」という感じよりも「やっとできた……!」っていう気持ちのほうが強いですね。曲自体はずっと作ってたので、それをようやく世に出すことができるし、そのことによってライブとかいろんな動きができるから、作品を通してやっと私を応援してくれてる人に会える喜びも大きいです。
──前作「Nice to meet you.」から約2年半の期間が空きましたが、これには何か理由があるのですか?
いろいろあったんですけど……私も前作を出した頃は、自分で曲も作れるようになって表現の幅が増えたので、もっと自分のことをファンやたくさんの人たちに知ってもらう機会を設けようと思ったんです。でも、いろんな初めてが積み重なってできた作品だったので、やってみないとわからないことがたくさんあって、つまずいたり歯車がうまく噛み合わなかったりすることが多かったんですよ。私も活動したい気持ちはあったんですけど、それをどうしたら実現できるのかがわからなくて。待ってるだけでもダメだし、自分で行動するだけでもダメというのをいろいろ経験して、その山あり谷ありの中で「やっぱり自分はどうしても音楽がやりたい!」っていう気持ちがウワーッてなって作り上げたのが今回の作品なんです。
──気持ちがくすぶってる時期だったんですね。
そうですね。私の歌を聴いてほしいという気持ちはすごくあったんですけど、それがなかなかできなかった2年半で。自分がよかれと思ってやったことが実はそうでなかったりとか、自分がA地点にたどり着きたくてやってたことが全然違う道だって途中で気付いたりとか。でもその中で、じゃあ自分はこういう武器を身に付けるべきだとか、自分はこうあるべきだなっていうものを探すことができて、いろいろつかめました。
──新しくつかめたものというのは、例えば?
私はそれまであまり自分から何かを発信することがなくて、何事も人から与えられるものだと思ってたり、人に頼ってる部分があったので、そこをまるっきり変えないとダメだと気付かされたんです。やらないで後悔するよりは自分でやって後悔したほうがいいので、やれることは全部自分でやろうっていう意識が生まれて。だからそこが一番の収穫ですね。自分でも大人になれた感じがしてます。
コンセプトは「成長」と「モンシロチョウの物語」
──では、今回の新作も自分から率先して作っていったんでしょうか?
そうです。私から作りたいって言って、収録されてる8曲全部のデモを用意して。1stミニアルバム(「Nice to meet you.」)の頃からやりたいことがいろいろあったんですけど、なかなかうまくいかなかったので、今回のミニアルバムは新しい一歩と言うか、私の中では第2のスタートラインという気持ちがあったんです。あのときやりたかったことを次こそはリベンジしてやろうと言うか。
──作品全体のコンセプトは?
コンセプトはいくつかあるんですけど、まず「成長」というのが1つあって。私は15歳のときに音楽の仕事を始めたんですけど、最初はsupercellのゲストボーカルということで歌う以外のことは何も考えなくてよかったし、私自身が楽しければOKというスタンスだったんですよ。でも、歌をお仕事にしていく中で、どうしたらもっと多くの人に受け入れてもらえるのか、自分の歌の魅力はどういうところにあるのかを意識するようになって、自分の声質とか表現方法について研究するようになったんです。それと最初の頃は自分の歌についての批判を目にすると、それをすごく真に受けてしまって、そういう人も受け入れてくれるような音楽をやらなくちゃと思ってたんですけど、何年か続ける中で、私のことが苦手な人に向けてではなくて、私の音楽を好きな人にもっと魅力が伝わるように努力しなくちゃいけないことを学んで。今は曲を作るためにギターも弾くようになったし、作詞も自分でするし、自分でも意識の変化や成長を感じるようになったので、新作ではまずその部分を出そうと思ったんです。
──なるほど。ご自身の成長の過程を作品に込めたんですね。
今回の収録曲のうち「ヒースのかけら」「LinariaLisa」「パラノイアフォルテ」「あそびましょ」は、私が去年の20歳の誕生日のときに催したライブツアーのときに披露した曲なんですけど、それを収録したのは、そのときの自分が作った曲も成長の足跡として残したかったんです。歌詞にも自分のその頃の思いや感情の流れが反映されてるので。
──ほかのコンセプトというのは?
これは1stミニアルバムのときからそうなんですけど、私の作品には曲それぞれに物語があって、アルバム全体でも物語があって、さらにジャケットやブックレットのイラストの中にも物語を作ってるんです。今回のアルバムで言うと、タイトルにもなっている「モンシロチョウ」が全体の物語のモチーフになってて、収録曲をいろんな季節の花に見立てて、その花の蜜をモンシロチョウが吸っていくようなイメージで。チョウが飛ぶことが時間の流れを表してて、その中で私も成長していってるんです。
──だから花の名前を用いた曲名が多いんですね。
はい。「ヒースのかけら」のヒースや「LinariaLisa」のリナリア、「ネリネ」もお花ですし、「tobacco」もタバコのお花がありますからね。でもその花の部分に固執しないで自分の成長を示したい部分もあったので、「パラノイアフォルテ」や「あそびましょ」も収録して。
次のページ »
人間って生まれた頃は真っ白だけど……
- こゑだ「モンシロチョウ」
- 2017年11月29日発売 / BeanZoo
-
[CD]
2160円 / SNCL-00005
- 収録曲
-
- モンシロチョウは死なない
[作詞・作曲:こゑだ / 編曲:田中潤(GENTOUKI)] - ヒースのかけら
[作詞・作曲:こゑだ / 編曲:二村学] - LinariaLisa
[作詞・作曲:こゑだ / 編曲:田中潤(GENTOUKI)] - パラノイアフォルテ
[作詞・作曲:こゑだ / 編曲:二村学] - tobacco
[作詞・作曲:こゑだ / 編曲:和田たけあき] - あそびましょ
[作詞・作曲:こゑだ / 編曲:ryo(supercell)&二村学] - ネリネ
[作詞・作曲:こゑだ / 編曲:buzzG] - 小さなモンスター
[作詞・作曲:こゑだ / 編曲:和田たけあき]
- モンシロチョウは死なない
- こゑだ
- 福岡県出身の女性シンガーソングライター。2011年に開催されたsupercellのボーカリストオーディションで、当時15歳にして約2000人の応募者から選出され、2013年11月にリリースされたsupercellのアルバム「ZIGAEXPERIENTIA」でボーカルを担当した。2015年6月にミニアルバム「Nice to meet you.」でソロデビューし、2017年11月に2ndミニアルバム「モンシロチョウ」を発表。ソロ作品では自身で作詞作曲を行っている。