自分にとって本当のことをやる
僕はね、カッコいいものが評価されて大衆のものになるべきだと思うんですよ。例えばお笑いの芸人さん、俳優、タレント、文化人とかテレビに出る人はいっぱいいる。そこからちょっと離れたところにはファッションの人たちとか建築とかスポーツ選手とかがいて。その間……“1.5”ぐらいの位置にミュージシャンっていると思うんです。1でもなく2でもなく、表でもなく裏でもない位置にいる。めちゃくちゃ売れると1のほうに、つまりメジャーのほうに近づいていくんですけど、売れるためには1になる努力が必要で。それは売れるというよりは“カッコ悪くなる努力”なんですよね。
──カッコ悪くなる努力!
妥協する努力と言うか決断と言うか。僕はそれは嫌だというところから音楽に入ってるんで。もともと大売れしてる人は好きじゃないから、自分が売れたときには戸惑ったんです。こっちに行ききってしまうか辞めるか、そのジレンマがすごくあってライブをいっぱいするようになったりとか。海外のミュージシャンでも、数は少なくても髪を長くしてメイクしてグラマラスにやってる人がまだロックの第一線にいる。でも日本ではそれがほとんどないんですよ。カッコ悪くなることで大衆化される。でも中には大衆化されてもカッコいい人もいるんですよ。ミスチル(Mr.Children)とかね。でも彼らはあとから「カッコいいじゃん」と思えるんです。売れたことで内容までわかってくるから。でもいきなり「カッコいいじゃん」って思える例ってほとんどないんじゃないですか。売れたことであとから評価されることはあっても。僕らみたいな美学系のミュージシャンが本気で大衆化される時代ではもはやない。だからと言って辞めたくはない。
──つまりある種、カルトであることを引き受けざるをえない状況ということですか。
でも自分が好きでそれを始めたのでね。僕はMORRIEさん(DEAD END)が好きで、彼はいまだにそういう美学を貫いているわけです。歳を取ったからってブルースをやったり、あるいはヘンに大衆化されるんじゃなくて、より崇高になっていくというか。
──でも今の清春さんが例えばブルースをやったらめちゃくちゃカッコいいと思いますよ。
うん、練習したらできるかもしれないとは思うけど、でもそれでも普通のブルースの人がやるブルースとは違うものになると思うし、違うものにするべきだと思うんです。僕は自分がカッコいいと思うことをやりたいし、それしかやりたくない。若い頃はいろいろあったんでね。「売れたい」といういやらしい気持ち。「これちょっとイメージが違うけど売れるよなあ」と思った時期もあった。親を安心させたかったから。それがあったから今があるんですけど……でも終わりに向かっていくために、やはり“自分にとって本当のこと”をやって、悔いなく終わりたいんですよ。
──残りの時間って意識しますか。
ミュージシャンとしては意識します。
──「自分があと何枚アルバムを作れるか」。
それはすごく意識します。だからこそ悔いなく好きなことをやりたい。そういう気持ちは日々高まってますね。自分がいつ引退するかわからないけど、老後も死ぬまで自分がずっと聴いていられるようなアルバムが作れたらなと思います。
──まだ作れていないですか。
まだ全然作れてないです。何かが欠けるんですよ。歌はよかったけど歌詞がイマイチとか曲がダメとか音質がどうとか、いろいろ。自分の歌を最後まで聴いてられるってなかなかなくて。
──でも、どこか足りないところがあるからいんじゃないですか。
まあね! それがあるから次もやりたくなる。完璧なものを作ってしまったら、それ以上作れなくなってしまうかもしれない。
DISC 2はポエトリーリーディング
──DISC 2はポエトリーリーディングのアルバムです。これはどういう着想を得て制作したものなんですか?
単に音楽をやりたいだけじゃないんだって示したかったということですかね。特典を考えてるときに、買い物に行ったんです、Yohji Yamamotoに。そうしたら昔、森雪之丞さんがプロデュースした「TOKYO POETS Vol.1」(1997年発売)というポエトリーリーディングのアルバムに、僕も山本燿司さんも参加したなと思い出して。全曲ポエトリーリーディングのアルバムを作って特典にしたらいいんじゃないかと思いついたんです。「TOKYO POETS Vol.1」に参加したのは28歳ぐらいだったので、今の歳でまたやったら面白いんじゃないかと。
──なるほど。
今回、全部一発で録ったんですけど、もしかしたら歌よりも得意かもと思いました。これ面白いのは、どの詞をどのオケでやってもいいんですよ。音程もないし。時間がなかったので、全部のトラックをあらかじめ聴いて詞をあてはめてやり方を考えたんじゃなくて、初聴きで全部やってるんです。三代堅さんがアレンジしてくれてるので、なんとなくクセはわかってるし。でも一発でOKでしたね。歌もこうだったらいいのになあとか思ったり。これ、いい特典ですよね。みんなやったらいいのにと思いましたね。
──次のバンドアレンジのアルバム「夜、カルメンの詩集」も完成間近ということですが。
うん、歌入れはまだですが、オケ撮りはほとんど終わってます。
──昨日のライブでは「けっこう新しいこともやってる」とおっしゃってましたね。
うん。スパニッシュの要素がありますね。カルメンで想像できるような。フラメンコギターの人を呼んで3、4曲やってもらってます。すごく面白かった。その人も年齢的に僕のことを知ってくれてて「光栄です」と言って汗かきながら弾いてくれたんですけど、そばで見るとものすごいですよ。片腕だけで指が10本ぐらいあるような動きでしたね。
──楽しみです。
うん、がんばります。
- 清春「エレジー」
- 2017年12月13日発売 / TRIAD
-
初回限定盤 [CD2枚組+DVD]
5400円 / COZP-1402~4
- DISC 1(CD)収録曲
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- LAW'S
- ゲルニカ
- アロン
- rally
- GENTLE DARKNESS
- 夢
- カーネーション
- この孤独な景色を与えたまえ
- 輪廻
- 空白ノ世界
- DISC 2(CD「"elegy" poetry reading」)収録曲
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- LAW'S
- ゲルニカ
- アロン
- rally
- GENTLE DARKNESS
- 夢
- カーネーション
- この孤独な景色を与えたまえ
- 輪廻
- 空白ノ世界
- YOU
- DISC 3(DVD「"elegy" performance」)収録内容
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LIVE AT Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
- サロメ
- 陽炎
- 瑠璃色
- lyrical
- rally
- alice
- シャレード
MUSIC VIDEO
- LAW'S
- 清春「夜、カルメンの詩集」
- 2018年2月28日発売 / TRIAD
-
初回限定盤 [CD2枚組+DVD]
5400円 / COZP-1411~3 -
通常盤 [CD]
3240円 / COCP-40251
公演情報
- KIYOHARU 25 TIMES DEBUT DAY
- 2018年2月9日(金)岐阜県 岐阜club-G
- KIYOHARU TOUR 天使の詩2018
「LYRIC IN SCARLET」 - 2018年2月23日(金)大阪府 BIGCAT
- 2018年2月24日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
- 2018年3月2日(金)宮城県 Rensa
- 2018年3月16日(金)京都府 KYOTO MUSE
- 2018年3月17日(土)京都府 KYOTO MUSE
- 2018年3月21日(水・祝)千葉県 KASHIWA PALOOZA
- 2018年3月24日(土)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2018年3月31日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2018年4月7日(土)青森県 青森Quarter
- 2018年4月8日(日)岩手県 Club Change Wave
- 2018年4月13日(金)愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2018年4月14日(土)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2018年4月28日(土)鹿児島県 CAPARVO HALL
- 2018年4月29日(日)長崎県 DRUM Be-7
- 2018年5月3日(木・祝)東京都 EX THEATER ROPPONGI
- 清春(キヨハル)
- 1968年生まれ、岐阜県出身。1991年にロックバンド・黒夢を結成し、ハードかつグラマラスなサウンドで人気を集める。1994年にメジャーデビューを果たし、1999年に活動停止。その後自身のレーベルを立ち上げ新バンド・SADSを率いて活動を行う。2003年からはソロ活動を開始。2010年には黒夢とSADSを再開させ、ソロと並行して精力的な活動を展開している。2015年2月から11月にかけては、全34日間68公演にわたるソロライブ「MONTHLY PLUGLESS LIMITED 2015 MARDI GRAS KIYOHARU Livin'in Mt.RAINIER HALL」を行った。2016年3月に約3年ぶりのソロアルバム「SOLOIST」をリリース。2017年TRIADに移籍し、12月に“リズムレスアルバム”「エレジー」、翌2018年2月にオリジナルアルバム「夜、カルメンの詩集」を発表する。