清春|リズムレス作品で証明したいこと

本当の意味でのソロを目指して

──楽曲の構想として、ボーカルも楽器の1つとしてサウンドを構成する場合と、あくまでもボーカルが中心で、ほかの楽器はそれをバックアップするという考え方があるとしたら、清春さんの場合は後者ということですね。

そうですね。特にバンドでない場合は。かと言ってボーカルだけのアルバムを作る気はなくて。あるじゃないですか。伴奏部分まで全部自分で歌ってるような。

──ビョークがやってますね(「Medúlla」2004年発表)。

それはちょっと難解すぎるし、できない。もっとポエトリーリーディングに伴奏が付いているようなニュアンスを出せたらな、と思ったんです。

──この間、SUGIZOさんのアルバムに参加されてましたよね(11月発売「ONENESS M」収録の「VOICE」)。あれも素晴らしい出来でしたが、SUGIZOさんの作るサウンドの中に清春さんのボーカルが配置されている。それとは対照的なやり方ということでしょうか。

そうですね。あれはシンガーとしてパーツになるための参加なので。あれもいいなと思いましたけど……ここにきてもうちょっと、何か面白いことができないかなと思ってます。本当の意味でのソロと言うか。

──バンドをやってる人はバンドの一員としてありたいという気持ちもあると思うんです。

うん、ありますよね。

──清春さんはもちろんバンドもやってらっしゃるけど、ソロをやる限りは自分のボーカルの可能性を追求したいという思いが強まってきたということでしょうか。

うん、そうですね。ボーカリストとしての追求、声の追求。ファンって声が好き、音楽が好き、曲が好き、歌詞が好き、顔が好き……とかいろいろあると思うんですけど、結局“匂い”だと思うんですよ。トータル的に僕が発してる“匂い”。でも僕はそれ以上のものを見せたい。濃厚であれ、と思ってるんです。

毎回「今日は半音下げてみよう」と変化を

──以前清春さんに取材したときおっしゃっていたのが、清春さんの中では作曲家としての意識が一番強い、2番目が作詞家で、3番目がシンガーだということでした(参照:黒夢 デビュー20周年記念ツアー 特集)。

うんうん、今でもそれはありますよ。

──そうですか。ここにきてシンガーとしての意識が強くなってきたとか……。

これに関して言うと、強いです。普通のライブだとまた違うし、曲を作るときは作曲家としての意識が高いんですけどね。

──これは基本的に既存の曲を歌うプロジェクトだから、パフォーマーとしての意識が強くなるのは当然ですね。

そうですね。どんな曲も全部新曲のつもりでやってるんですけどね。バンド時代のヒット曲を求められることも多いですが、あくまでもこの演出で生きる曲を選んでます。シーンとしたあの空間で自分の表現しやすい、パフォーマンスしやすい曲。

──今回のプロジェクトのために用意した105曲は、そういう基準で選ばれたわけですか。

もう何年もやってるんで、だいたいの曲は静かなアレンジでやったことがあるんですけど、どうしてもダメっていう曲はあるんですね。コードなのかなんなのか。

──バンドじゃなきゃできない?

バンドのほうがマシになる曲。一方でプラグレスのスタイルのほうが生きる曲もある。それは1回やったらわかるんで。それがファンの人の好きな曲かどうかはわからないですけど。

──ファンの人の要望に応えると言うよりは、歌いたい曲を選んでる。

そう。あとは歌いながらパフォーマンスしやすい曲ですね。このスタイルで、この会場(Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE)でやるときは、原曲から半音上げたり下げたりとかしてますね。あと何度もやるうちに、「今日は半音下げてみよう」とか「1音上げてみよう」と挑戦してみています。

──じゃあ同じ曲でもそのつどの状況によって、いろんな歌い方で目先を変えて、新鮮に聞かせるし新鮮に歌える。

そうですね。あと有名な曲はわりと引かれる傾向があるんですよ。なので「忘却の空」とかほとんどやったことがないですね。

清春

「エレジー」と「夜、カルメンの詩集」

──前作「SOLOIST」は、ツアーが終わったタイミングでリリースしたわけですが、今作も今回の長期にわたるコンサートが終わる直前に発表されます。昨日のMCでは「お土産的なもの」という言い方をされてましたね。

そうなっちゃいましたね。TRIADから出すことになって、何を出すかという話になり……何せいろんなことを並行してやってるので。そこで新しいアルバムも出したいし、「エレジー」も出したいし、あとカバーアルバムも出したいと言う話をしたら「多すぎです」と言われて(笑)。でも1枚じゃ嫌だから、「エレジー」と「夜、カルメンの詩集」(2018年2月28日発売)の2作を出すことになりました。

──で、105曲の中から今作のために選んだのが10曲(DISC 2のポエトリーリーディングでは11曲)です。

11曲録ったんですけど、長くなりすぎてCDに収まらなくなってしまったので1曲削ってます。

──1曲あたりがかなり長いですからね。この選曲の基準は?

これは、マネージャーやアレンジャーの三代堅さんのリクエストですね。僕はどれでもよかった。ただ「得意なやつにして」とは言いました。何度も歌ってる曲とか、客観的にライブで見てよかった曲とかを選んだと思います。

──なるほど。

アコースティック系の曲でもアコースティック然としてない、“叫べる系”の曲だと思いますね。

──淡々と歌う曲ってないですよね。

ないですね、うん。

──ドラマがあると言うか、けれんみがある。原曲がバラードの曲もあるんですが、オリジナルがけっこうハードな曲も多いじゃないですか。「LAW'S」とか「ゲルニカ」とか。そのへんを移し替える苦労はありましたか。

歌のリズムが大事になってくるんです。ドラムがいないので。アコギがリズム代わりに入ってるんですけど、歌入ってきた瞬間に、歌でリズムを取ることになるんですよ。コブシとか歌い方の強弱とか全部リズムだと思ってやってるんです。歌だけで裏拍を感じられるようにしたいなと思って。

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歌が得意じゃない

清春「エレジー」
2017年12月13日発売 / TRIAD
清春「エレジー」

初回限定盤 [CD2枚組+DVD]
5400円 / COZP-1402~4

Amazon.co.jp

DISC 1(CD)収録曲
  1. LAW'S
  2. ゲルニカ
  3. アロン
  4. rally
  5. GENTLE DARKNESS
  6. カーネーション
  7. この孤独な景色を与えたまえ
  8. 輪廻
  9. 空白ノ世界
DISC 2(CD「"elegy" poetry reading」)収録曲
  1. LAW'S
  2. ゲルニカ
  3. アロン
  4. rally
  5. GENTLE DARKNESS
  6. カーネーション
  7. この孤独な景色を与えたまえ
  8. 輪廻
  9. 空白ノ世界
  10. YOU
DISC 3(DVD「"elegy" performance」)収録内容

LIVE AT Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

  • サロメ
  • 陽炎
  • 瑠璃色
  • lyrical
  • rally
  • alice
  • シャレード

MUSIC VIDEO

  • LAW'S
清春「夜、カルメンの詩集」
2018年2月28日発売 / TRIAD
清春「夜、カルメンの詩集」初回限定盤

初回限定盤 [CD2枚組+DVD]
5400円 / COZP-1411~3

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清春「夜、カルメンの詩集」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / COCP-40251

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公演情報

KIYOHARU 25 TIMES DEBUT DAY
2018年2月9日(金)岐阜県 岐阜club-G
KIYOHARU TOUR 天使の詩2018
「LYRIC IN SCARLET」
2018年2月23日(金)大阪府 BIGCAT
2018年2月24日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
2018年3月2日(金)宮城県 Rensa
2018年3月16日(金)京都府 KYOTO MUSE
2018年3月17日(土)京都府 KYOTO MUSE
2018年3月21日(水・祝)千葉県 KASHIWA PALOOZA
2018年3月24日(土)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
2018年3月31日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
2018年4月7日(土)青森県 青森Quarter
2018年4月8日(日)岩手県 Club Change Wave
2018年4月13日(金)愛知県 THE BOTTOM LINE
2018年4月14日(土)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
2018年4月28日(土)鹿児島県 CAPARVO HALL
2018年4月29日(日)長崎県 DRUM Be-7
2018年5月3日(木・祝)東京都 EX THEATER ROPPONGI
清春(キヨハル)
1968年生まれ、岐阜県出身。1991年にロックバンド・黒夢を結成し、ハードかつグラマラスなサウンドで人気を集める。1994年にメジャーデビューを果たし、1999年に活動停止。その後自身のレーベルを立ち上げ新バンド・SADSを率いて活動を行う。2003年からはソロ活動を開始。2010年には黒夢とSADSを再開させ、ソロと並行して精力的な活動を展開している。2015年2月から11月にかけては、全34日間68公演にわたるソロライブ「MONTHLY PLUGLESS LIMITED 2015 MARDI GRAS KIYOHARU Livin'in Mt.RAINIER HALL」を行った。2016年3月に約3年ぶりのソロアルバム「SOLOIST」をリリース。2017年TRIADに移籍し、12月に“リズムレスアルバム”「エレジー」、翌2018年2月にオリジナルアルバム「夜、カルメンの詩集」を発表する。