氣志團万博2019 ~房総ロックンロール最高びんびん物語~|「きっと正しい答えはない」台風15号が8年目の「万博」にもたらしたものとは

「親父が会場に来ない、初めての氣志團万博」

──そういえば、今では唯一の皆勤アクトとなったももいろクローバーZも、今年は初めてバンドセットで登場しました。

氣志團とももいろクローバーZ。(撮影:上山陽介)

毎回「氣志團万博」に出てくれて、ずっとバンドアクトの間に挟まれて毎年素晴らしいステージを見せてくれた彼女たちが、ついにバンドをバックにステージに上がってくれたのがすごくうれしくて。なんか、今年もいろんな偶然がたくさんあって。マキシマム ザ ホルモンがステージでトシちゃんの「ジャングルJungle」をネタにしてたら、トシちゃんのセットリストにも「ジャングルJungle」が入ってたり、2日目の最後に「明日があるさ」を歌ったんですが、あの曲は吉本オールスターズのRe:Japanと共に、1日目に出演してくださったウルフルズもカバーしていましたしね。あの「明日があるさ」では俺らはちょっとだけブラックジョークもかましましたけど、それを笑いにするのもエンタテインメントの世界じゃないですか。いろいろあったけど、前向いていくしかねえじゃんって。台風があったことで別の意味も出てしまいましたが、それも含めて、あの曲を最後にできてよかったです。

──「氣志團万博」では、氣志團が出演する時間帯は毎回違ってきましたが、今年に限って1日目のオープニングと2日目のトリが氣志團のステージだったというのも、ちょっと運命的なものを感じました。

そうですね……これは個人的な話ですけど、ちょうど今年の「氣志團万博」の準備が大詰めだった4月に父親が死んで。親父はずっとこの地元に住んでいて、毎年「氣志團万博」に遊びに来ることをすごく楽しみにしていたんです。

──氣志團のステージの前の煽りビデオでもお父様が登場されてましたね。「親父が会場に来ない、初めての『氣志團万博』」という内容で。

自分が生まれ育った町で、父が亡くなった年に、今回どうしてもやりたかったのが、自分が初めて音楽に夢中になった光GENJIの曲だったんです。それに加えて、トシちゃんも、新しい地図の3人も出てくれることになって、直前にはジャニー喜多川さんが亡くなって。どうしてもジャニーズリスペクトのステージをやりたいなって。

──これまでも近藤真彦さんがサプライズ出演されたり、山下達郎さんがジャニーズ提供曲を立て続けにやったりと、少なからず伏線もあったわけですけど、今年はそれがいろいろと重なったわけですね。

はい。何か周囲がザワザワするんですよね、なぜか。だけど氣志團がジャニーズの曲をライブでカバーすることになんの問題があるの? それが忖度ってやつなの?って。音楽の自由を示したかったんです。素晴らしいものを素晴らしいって言いたかった。まあ、うちのメンバーは別にジャニーズで育ってないから、最初は「?」って感じだったかもしれないけど(笑)、リハーサルでやっていくうちに「彼らはこんなすごいことをやってるんだ!」って曲の面白さにも気付いてくれて。

協力してくれたすべての人たちに恩返しする

──そういえば、1日目の森山良子さんのステージも大きな驚きでした。

毎年「氣志團万博」のあとに、近所のお祭りで直太朗となんとなく会って、そのままプチ打ち上げみたいになるんだけど、昨年は良子さんも合流して。そのときに「翔やん、私も『氣志團万博』出してよー!」って声をかけていただいて、「ホントにー?」なんて話していたんですけど、今年の春に改めて直太朗から「うちのお袋、本当に万博どうかな?」って相談されて。「こういうこと言うのは恥ずかしいけど、息子が聴いても今一番すごいんだよ、歌が。70歳超えてるけど、今もずっとボイトレに通い続けてて、家でもずっと練習してて。俺が尊敬するNo.1シンガーの最高のところを、『氣志團万博』のお客さんにも見てもらいたいんだ」って。それがちょうどうちの親父が死んだ直後くらいの頃で、俺は自分の親に対してそんなふうに思ったことなかったから、「直太朗すげえな」って。それで直太朗は自分は今回出ないで、良子さんのサポートに専念するって。

──そうだったんですね。

左から森山良子、森山直太朗。(撮影:上山陽介)

その直後、実際に良子さんの歌を聴かせてもらう機会をいただいて。俺が世界一歌がうまいと思っている直太朗が子供扱いですよ。ま、実の子供なんですが(笑)。で、「もうこれは出てもらうしかない!」となって。実際に素晴らしすぎるステージでした。俺らくらいの歳って、いつ親が死んでもおかしくないわけですが、あの人はあと50年は余裕で生きますね(笑)。ただ、今回の直太朗の強い思いには心を打たれたし、感銘を受けました。いろんなことを考えさせられましたね。

──今年の「氣志團万博」は、本当にいろんなことが重なった年だったんですね。

そうですね。こういう状況下で「氣志團万博」をやったことによって見えてきたことは、本当にいっぱいあります。8年続けてきて、そこでできあがってきた関係性も大きいですし。きっと1年目や2年目だったら、台風の直後ということで、出演者の皆さんに出ていただけなかった可能性だってあったと思うんです。でも、ここまでなんとか信頼と実績を築くことができた。これから「氣志團万博」は、例えば10-FEETの「京都大作戦」のように地域に深く愛されるフェスというのをさらに本気で目指していかなくてはいけないし、こういうときだからこそ、見えてきたいろんな事実もあります。とにかく、今年協力していただいた方々には、一生頭が上がらないし、これから恩返ししていきたいと思っています。今回お客さんが1つになれたのは、こういう大変な状況の中で、ステージ上も、お客さんも、少しでもここで何か残していこうという気持ちがあったからだったと思うんです。地域の方々が出していた飲食の売り上げは、過去の「氣志團万博」で今年が圧倒的に一番よかったんです。自分はこれからも、そういう些細なことでも地域に貢献できることを考えていきたいと思ってます。今後はどうなるかはまだわかりませんけど、今回協力してくれたすべての人たちに恩返しをしていくためにも、「氣志團万博」を続けていきたいです。あと最後になりますが、これだけ言わせてください。今回の「氣志團万博」のことで、千葉の実情を知ってくれたたくさんの仲間たちから多くのご支援をいただいています。改めて感謝をお伝えしたいです。また、中には誰にも、俺にすらも何も言わずに多額の寄付を「マブダチ募金」にしてくれているミュージシャンやコメディアンの方々がいます。ご出演者も、まったく関わられていない方からも。ものすごくお名前を言いたいけど、ご本人たちが何もおっしゃらないから言えない。心から尊敬します。みんなの信じているスーパースターは本当の優しさを持った方々です。ありがとうございます。必ず責任を持って届けます。ありがとう。‬‬

左から綾小路 翔、早乙女 光(氣志團)。(撮影:青木カズロー)

※記事初出時、一部曲名に誤りがありました。お詫びして訂正します。

シミズオクト Presents 氣志團万博2019
~房総ロックンロール最高びんびん物語~

氣志團の主催で9月14日、15日に千葉・袖ケ浦海浜公園にて行われた野外フェスティバル。2003年と2006年に氣志團の大型野外ライブとして開催された「氣志團万博」が、2012年より会場を袖ケ浦海浜公園に移し、フェス形式で行われるようになった。今年は台風15号が房総地方を直撃し、一時は開催が危ぶまれたものの無事に2日間とも開催。合計33組が出演した。

出演者

9月14日

YASSAI STAGE

森山直太朗(OPENING CEREMONY ACT) / 氣志團 / 東京スカパラダイスオーケストラ / PUFFY / SiM / 元祖万博ウルフルズ #ヤッサ / DA PUMP / Dragon Ash / 木梨憲武

MOSSAI STAGE

純烈(WELCOME ACT) / コロナナモレモモ(マキシマム ザ ホルモン2号店) / ROTTENGRAFFTY / BiSH / 森山良子 / HEY-SMITH / King Gnu / coldrain

9月15日

YASSAI STAGE

マキタスポーツ(OPENING CEREMONY ACT) / ゴールデンボンバー / ももいろクローバーZ / 10-FEET / ACE OF SPADES / マキシマム ザ ホルモン / 田原俊彦 / 稲垣吾郎・草彅剛・香取慎吾 / 氣志團

MOSSAI STAGE

DJダイノジ(WELCOME DJ) / 打首獄門同好会 / C&K / 私立恵比寿中学 / t-Ace / 大島渚 / SUPER BEAVER / ヤバイTシャツ屋さん

番組情報

WOWOWライブにて「氣志團万博2019」を12時間にわたり独占放送決定!

初日

  • 前編WOWOWライブ
    2019年11月16日(土)16:00~
  • 後編WOWOWライブ
    2019年11月16日(土)19:00~

2日目

  • 前編WOWOWライブ
    2019年11月17日(日)16:00~
  • 後編WOWOWライブ
    2019年11月17日(日)19:00~
氣志團(キシダン)
1997年に千葉県木更津で結成。メンバーは綾小路翔(Vo)、早乙女光(Dance & Scream)、西園寺瞳(G)、星グランマニエ(G)、白鳥松竹梅(B)、白鳥雪之丞(Dr / 2014年3月より活動休止中)の6名。“ヤンクロック”をキーワードに、学ランにリーゼントというスタイルでのパフォーマンスが話題を集め、2001年12月にVHSビデオで“メイジャーデビュー”を果たす。「One Night Carnival」「スウィンギン・ニッポン」などヒット曲を連発し、2004年には東京ドームでのワンマンライブも開催。2012年からは地元千葉県にて大規模な野外イベント「氣志團万博」を主催し、ほかのフェスとは一線を画するラインナップで多くの音楽ファンの支持を集めている。また台風15号の被災地支援のための募金活動「マブダチ募金」を行っている。

2019年10月30日更新