稲垣さん、草彅さん、香取さんは現在の環境を自由に楽しんでいる
──今年は「氣志團万博」の常連、あるいは常連になりつつあるバンド仲間が大集合していた一方で、1日目のYASSAI STAGEでトリを務めた木梨憲武さん、2日目のYASSAI STAGEでトリの氣志團の前に出演した稲垣吾郎さんと草彅剛さんと香取慎吾さんと、日本の芸能界的にも大きな事件というべきステージも実現しました。
稲垣さん、草彅さん、香取さんに関しては、昨年彼らの番組「7.2 新しい別の窓」に出演させていただいたとき、3人が現在の環境をものすごく自由に楽しんでいることが本当によくわかって。なんとかして皆さんにも今の3人の自由さを感じてほしいと思ったんです。「紅白歌合戦」のような歌番組を除いて、それ以前に自分がSMAPと関わってきたのって、仕事で2、3回だけだったんですけど。その頃と比べて、一番印象が変わったのが香取さんでした。SMAPって、中居(正広)さんがリーダーなわけですが、自分が氣志團でご一緒した時期には表面的に誰かが仕切ったり、言葉を交わし合うことは少ないけれど、実は互いにさりげなくフォローをし合っている、という印象で。リハーサルではみんなバラバラなのに、本番が始まったらバツーンと5人で完璧にキメて、本番が終わったらパッと現場からいなくなるみたいな、そういうカッコよさだったんですけど。
──目に浮かびます。
でも、今3人で動くときはとにかく香取さんがはっきりとリーダー的な役割をしている印象なんです。話の窓口にもなってくれるし、すべてのことに積極的で、今回の「氣志團万博」も、香取さんのほうから「事前に一度会えませんか?」って相談されて。
──へえ!
「『氣志團万博』で僕たちはどういうことをしたらいいと思いますか?」とか「会場に僕たちのファンが来てくれることで、何か気を付けておくべきことはありますか?」とか、初めてのフェスということで、すごくいろんなことを気にされていて。これはあくまでも俺の印象ですけど、香取さんからしたら、稲垣さんと草彅さんの2人にはこれまでのように、いい意味で“天然”のままでいてほしいから、自分がリーダーシップをとってその環境を作っていくっていう。今はそういうシステムになってるのかなって。
──なるほど。少なくとも3人での音楽活動に関しては、そうなのかもしれませんね。
とにかく今の3人は、自分たちのペースですべての仕事を心の底から楽しんでるんだなって。これは、一緒に仕事をさせてもらったからこそ、よくわかったことでした。で、俺からすると、今のノリさん(木梨憲武)もあのお三方にすごく近くて。これはどこまで本気で言ってるのかわからないんですけど、「もう俺、地上波は無理なのよ。収録中に眠くなっちゃうから」って。とにかく本当に夜が早いんですよ。一緒に飲ませてもらっても、18時にスタートして21時には解散みたいな。ノリさんの中では、昨年「とんねるずのみなさんのおかげでした」が終了したことで、「今までの俺、終了!」って感じだったのかなって思います。もちろん、それまでも絵画をはじめとする個人の活動を熱心にされてましたけど、もう完全にそっち側に全振りしていて。土曜日の早朝にTBSラジオで番組を始めた理由も「その時間、一番起きてるから」っておどけておっしゃってましたけど、本当にそれが素直な理由なんだろうなって。
ジャニー喜多川が作り上げた世界はこんなにすごいんだぜ
──無理をしないで楽しく仕事をするという、そういう生き方を見せている。新しい地図の3人も含め、もちろんそこにはずっとトップに立ってきたからこそ可能な生き方という側面もあるわけですけど、いろいろと示唆に富んでますよね。
本当にそう思います。両者とも、過去ではなく未来のことしか見てないんですよ。今年も氣志團万博のブッキングに関してはいろんな思いを込めて進めてきたわけですけど、ここ数カ月だけでも、吉本興業の騒動があったり、ジャニー喜多川さんが亡くなったり、あるいは俺たちに近いバンドの界隈や音楽業界周りでもいろいろ事件がたくさんあったじゃないですか。別にこの業界にいるからって──そりゃいろんな噂は飛び交うわけですけど──実際に何が本当かってことは僕にもわからないことばかりですよ。きっとその中には本当のこともあるし、まったくの嘘もあるし、そんな中で僕ら自身も結果的に“忖度”をしてきたり“静観”をしてきたこともあったかもしれない。でも、音楽の世界だけはそんなものとは関係ないものであってほしいというのが僕の強い願いで。「氣志團万博」という空間だけは、出演者も、お客さんも、2日間だけ外の世界のいろんな出来事とは関係なく、みんなフラットに、伸び伸びと、音楽をただ楽しんでもらいたいなって。
──オーディエンスの多様性がほかのフェスとは比べものにならない「氣志團万博」だからこそ、そういう空間を作ることに大きな意味があるということですよね。
はい。新しい地図の3人にしても、ノリさんにしても、もし今回の出演が「『氣志團万博』だったら」と思っていただけた結果だとしたら、こんなにうれしいことはないです。現場に来てもらったら、10-FEETやマキシマム ザ ホルモンで巻き起こるサークルモッシュとかを見て「なんだこれは!」ってなってくれるわけじゃないですか。そうやって、お互いが知らない文化をシェアしていくのって一番楽しいことだと思うんですよ。トシちゃんのとき、ゴリゴリのパンクスがステージにかじりついて観てたり、10-FEETのTAKUMAくんがニッコニコしながらステージを見てるのを眺めていて。あれ、本当に幸せな気持ちになるんですよね。
──「氣志團万博」に限らず、自分はこれまでの氣志團や翔さんの活動に、音楽業界と芸能界の橋渡しをしているみたいなイメージを持っていたんですけど、今回の「氣志團万博」の現場で思ったのは、ここは完全に治外法権の場所なんだなってことで。翔さんが、音楽を中心とする1つの理想郷を作ろうとしてるんだということがすごくよくわかったんです。
ありがとうございます。最近は自分たちの活動に対しても「あれ? でも実はこれ変だよね?」って気付かされることも多いんです。音楽業界や、芸能界で、これまでみんなが当たり前だと思っていたことが変わってきている。新しい地図の3人はある意味でそうした変化の象徴ですけど、今年に入ってから芸能界や音楽業界で起こったいろんなことも、必ずしもネガティブなことばかりじゃないと思っていて。それがいろんな変化のきっかけになっていくといいなって思ってるし、今回の「氣志團万博」にはそういう思いを込めたかったんですよね。
──そんな思いが込められていたのが、2日目のトリのステージのジャニーズメドレーであり、SMAPの「俺たちに明日はある」のカバーを受けての、吉本オールスターズによるカバーでおなじみのフィナーレの「明日があるさ」のカバーでもあった?
「音楽は自由なんだ」ってことを伝えたかったんです。俺たちはなんの忖度もなしに、やりたいと思ったらやりたい音楽を好きにできるし、もしかしたらアイドルソングだからって軽んじてる人もいるかもしれないけど、ジャニーズの曲ってバンドで演奏してもこんなにカッコいいんだぜって。ジャニー喜多川が作り上げた世界はこんなにすごいんだぜって。
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「親父が会場に来ない、初めての氣志團万博」
- シミズオクト Presents 氣志團万博2019
~房総ロックンロール最高びんびん物語~ -
氣志團の主催で9月14日、15日に千葉・袖ケ浦海浜公園にて行われた野外フェスティバル。2003年と2006年に氣志團の大型野外ライブとして開催された「氣志團万博」が、2012年より会場を袖ケ浦海浜公園に移し、フェス形式で行われるようになった。今年は台風15号が房総地方を直撃し、一時は開催が危ぶまれたものの無事に2日間とも開催。合計33組が出演した。
出演者
9月14日
- YASSAI STAGE
-
森山直太朗(OPENING CEREMONY ACT) / 氣志團 / 東京スカパラダイスオーケストラ / PUFFY / SiM / 元祖万博ウルフルズ #ヤッサ / DA PUMP / Dragon Ash / 木梨憲武
- MOSSAI STAGE
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純烈(WELCOME ACT) / コロナナモレモモ(マキシマム ザ ホルモン2号店) / ROTTENGRAFFTY / BiSH / 森山良子 / HEY-SMITH / King Gnu / coldrain
9月15日
- YASSAI STAGE
-
マキタスポーツ(OPENING CEREMONY ACT) / ゴールデンボンバー / ももいろクローバーZ / 10-FEET / ACE OF SPADES / マキシマム ザ ホルモン / 田原俊彦 / 稲垣吾郎・草彅剛・香取慎吾 / 氣志團
- MOSSAI STAGE
-
DJダイノジ(WELCOME DJ) / 打首獄門同好会 / C&K / 私立恵比寿中学 / t-Ace / 大島渚 / SUPER BEAVER / ヤバイTシャツ屋さん
番組情報
WOWOWライブにて「氣志團万博2019」を12時間にわたり独占放送決定!
初日
- 前編WOWOWライブ
2019年11月16日(土)16:00~ - 後編WOWOWライブ
2019年11月16日(土)19:00~
2日目
- 前編WOWOWライブ
2019年11月17日(日)16:00~ - 後編WOWOWライブ
2019年11月17日(日)19:00~
- 氣志團(キシダン)
- 1997年に千葉県木更津で結成。メンバーは綾小路翔(Vo)、早乙女光(Dance & Scream)、西園寺瞳(G)、星グランマニエ(G)、白鳥松竹梅(B)、白鳥雪之丞(Dr / 2014年3月より活動休止中)の6名。“ヤンクロック”をキーワードに、学ランにリーゼントというスタイルでのパフォーマンスが話題を集め、2001年12月にVHSビデオで“メイジャーデビュー”を果たす。「One Night Carnival」「スウィンギン・ニッポン」などヒット曲を連発し、2004年には東京ドームでのワンマンライブも開催。2012年からは地元千葉県にて大規模な野外イベント「氣志團万博」を主催し、ほかのフェスとは一線を画するラインナップで多くの音楽ファンの支持を集めている。また台風15号の被災地支援のための募金活動「マブダチ募金」を行っている。
2019年10月30日更新