ネガティブから生まれるポジティブ

──カエラさんは自分のことをネガティブだと言いつつも、歌に関してはずっとポジティブに、夢や希望について歌い続けてきていますよね。それは意識してやってきたことなんですか？

そうだと思います。いつも「もう終わった……」みたいなところから歌詞を書き始めるんですよ。どんなに明るい曲でもそう。「happiness!!!」も「Magic Music」もそうですよ。いわゆるポップで明るい曲って言われてる曲はだいたいそこから始まってるんです。

──具体的には？

まず最初はすごく汚い言葉とか、ネガティブな歌詞をダーッと書いて「あー！ これじゃダメだ！」みたいになって、1行ずつ真面目に書き直していく。でもその手法が一番ポップなものを生むんです。

──じゃあもしかして「OLE!OH!」も？

そうですそうです。今回の3曲は全部そう。そうやって書かないと、上辺で言葉を選んでる感じがしちゃうんですよね。最初からポジティブなものを書こうとして、人が元気になるんじゃないかなっていう言葉を頭で考えて書いていくと、なんか……いい人ぶってる人みたいな感じになる。そういう歌詞を書きたくないから、1回汚いものを吐き出して、そこから作っていくんです。

──ネガティブな自分をそのまま出そうとは思わない？

でもアルバムではもっと自由にやってるというか、ネガティブな曲もたまにありますよ。私のことを「すごいポップな人だよね」「元気で明るいよね」みたいに思ってる人がアルバムを聴くと「違うじゃん！」ってびっくりされることがときどきあったりします。

──そして最終的に出てくるポジティブな部分も、カエラさんの中に元からあるものですよね。

うん、そう思います。やっぱり歌詞にウソは書けないので、自分自身が夢を持ってたり、毎日が楽しかったり、笑って過ごしてることが大事だと思うんですよね。そういう言葉が、人に言えないつらい思いをしてる人とか、当たり前じゃない思いをしてる人たちに届けばいいなって思ってる。そういう気持ちがどこかにあるので。

横アリ2DAYSは動物園と遊園地

──デビュー11年目に突入しましたが、今後の活動について何か考えていることはありますか？

10年やってきて「これからどうしよう」っていう感じはなくて「もっと自由にやりたい」って思ってます（笑）。今は何をやっても怖くない気がするし「やってやるぞ！ ワクワクするなあ」っていう気持ちのみで過ごしてる感じです。だからライブもいっぱいしたいし、絵を描いたりもしたいなあとか。自分の好きなことをいろいろやっていきたいですね。

──「私は歌手なんだ！」ってツッパっていた10年を経て。

そう、今まである意味歌1本でやってきたっていう意識はあるんです、自分の中で。でも今はもっと自分がやれることを幅広くやれたらいいなって思ったりはしてますね。だから例えば、絵本を描いてみるとか。

──いいですね。

歌も、もっと変わった言葉を使って歌いたいとか、こういうライブをしたいとか。そういうアイデアがいっぱい頭の中にポコポコとあって。それを時間をかけてゆっくり、何年かかってもいいから、これから実現していけたらなって思ってます。

──濃密な10年を経た今だからこそできる、新しい表現もありそうですね。

そうですね。それがいったいなんなのかっていうのは、これから探していくんだと思うんですけど。でもやっぱり確実にね、大人になってきていたりとか、自分のことがわかってきたりだとか。周りの人の大切さみたいなことも、やっぱりデビュー当時よりは全然わかってきてるので。そう考えると、これからの作品も変わってくるのかなって思いますよね。遊べるところは思いっきり遊んで。真面目な部分とふざけてる部分の差を出していきたいって思ってます。

──今後は各地の夏フェス出演を経て、10月には横浜アリーナ2DAYSのライブも控えています。2日間どんな内容になりそうですか？

10年続けてきて曲がいっぱいあるから、2日間とも設定を変えて、動物園と遊園地っていう設定にして、まったく違う曲をやろうと思ってます。バンドメンバーには「ごめん！」と思いながら、でもそうしたら来てくれた人楽しいだろうなって思って（笑）。

──じゃあ2日続けて行っても楽しめる？

はい！ 絶対に楽しませるっていうことがもう一番の目的なので。私自身「10周年だー！」っていうのもあるし、やっぱり10年続けてこれた感謝の気持ちもあるし。ハードな曲が多いから、動物園と遊園地って言ってもそんなポップなものにはならない気はするんですけどね（笑）。