音楽ナタリー PowerPush - 木村カエラ

祝・デビュー10周年 山あり谷あり「OLE!OH!」への道

「Butterfly」の違和感

──そしてデビューから丸5年経った2009年6月に「Butterfly」という曲がリリースされました。あれがカエラさんにとってのターニングポイントになったのかなと思っているんですが、今振り返ってみて「Butterfly」はどんな曲ですか?

木村カエラ

うん、あの曲はほんとにターニングポイントだったと思います。ツッパってもいないし隠してもいない、自分の素直な気持ちを歌詞にして。親友に宛てた手紙のような歌なので、まあ見られたら恥ずかしいものですよね。

──それまでカエラさんがあまり表に出してこなかった部分ですね。

ずっと自分の気持ちみたいなものは隠してたので。ヘンテコな音やビジュアルを使って自分の恥ずかしいところを隠してたのに、結局全部さらけ出したものがたくさんの人に受け入れられて、最初は「なんだこれ?」っていう違和感がものすごくありました。自分が「これが木村カエラです!」ってやってきたものとは違うものが受け入れられてしまったので「私がやってきたことは間違いだったのかな」って悩んだりもしたんですよね。

──そうした意識が変わったきっかけは?

「Butterfly」の歌詞が自分の気持ちにぴったり合うときがあったんですよね。それが5周年のライブ(2009年7月開催「GO!5!KAELAND」)のとき。2万2000人 のお客さんの前で、最初は親友に歌おうと思って「Butterfly」を歌い出したんだけど、そこで「今日は今までの どんな時より素晴らしい」って歌った瞬間に、その光景とすべてが一致して、うわーって涙が出てきたんです。その瞬間に「あっ『Butterfly』にはこういう力があるんだ」って思って、自分の中ですんなり受け入れられた。曲の持つ強さを感じて「Butterfly」に対するモヤモヤした感情もなくなっていって。自分らしいことを力を抜いてやっていこうって思えるようになったんですよね。

──そして「Butterfly」を境にしてカエラさんの作風も少しずつ変化していった気がします。

そうですね。「Butterfly」という曲を受け入れつつも、あれをマネして書こうとしても書けないことに気付いたりとか。でもやっぱり「素直なものって人に届くんだな。そうすれば人と共感できたり、例えばつらい思いしてる人がいたらその人を助けることができるんじゃないかな」っていう、そんな思いがどんどん強くなっていって。だから歌詞についてはやっぱり「Butterfly」以降、素直なものを意識した部分はありました。でもそのあと反動で「やっぱり違う!」「とがったところに戻るぞ!」みたいになったりもして。

──前作「Sync」のときはまさにそんな感じでしたよね(参照:木村カエラ「Sync」インタビュー)。

そうですね。

夢を愛して持ち続けることの大切さ

木村カエラ - OLE!OH! 【MUSIC VIDEO(Short ver.)】

──ニューシングル「OLE!OH!」は、3曲とも“夢”をテーマにした内容ですね。

はい、10周年を迎えることが自分の夢でもあったので、夢を愛して持ち続けることの大切さを歌いたくて。聴いてくれた人が明るくなるようなもの。それがやっぱり私らしいんじゃないかなって思ったんです。

──収録されている3曲は、すべてPOP ETCのクリストファー・チュウさんがサウンドプロデュースを担当しています。

曲も全部彼が作ってくれました。私もともとネガティブで、ネガティブからポップを生むっていう手法でいつも作品を作っているんですけど、彼もそうなんですよね。2人してネガティブなところから「明るくいきたいよね。楽しくいたいよね」みたいな思いがなんだかすごく一致して(笑)。だから元気になれる曲なんだけど、でもポップすぎないっていう。

──ビデオクリップでカエラさんは今回チアガールに扮していますね。

うん、ちょっと審判っぽいんですけど(笑)。あれは“ヤンキーチア”っていう設定なんです。私はもう12年ぐらいずっと高校にいる人みたいな感じで。ヤンキーを従えたものすごい先輩ですよね。ヘタしたら先生よりも年上みたいな。

──それはタチが悪いですね(笑)。

だから1人だけ格好も違くて(笑)。あの「OLE!OH!」っていう曲は自分自身の中のチアガールをイメージしてて、「自分がんばれ、自分がんばれ」って言ってる曲なので。ビデオの中でもちょっと冴えない女の子が出てきて変身するんですけど、なりたい自分になるには自分自身で動かなきゃっていうメッセージなんですよね。

──まず自分から行動しようというのは、カエラさんが繰り返し伝えているメッセージでもありますね。

そうですね、私の中の基本っていう感じがします。自分自身が変われば世界が変わってくるっていうこと。それが結局10年間ずっと歌い続けてることだったりするので。今回、10周年の第1弾シングルがそういう作品になったことはすごくいいなあって思ってます。

ニューシングル「OLE!OH!」/ 2014年7月9日発売 / ELA
「OLE!OH!」
初回限定盤 [CD+グッズ] 1728円 / VIZL-692
通常盤 [CD] 1296円 / VICL-36933

下記サイトで配信中!

レコチョク
収録曲はこちら
スペースシャワーTV
「PREMIUM INTERVIEW -木村カエラ-」
リピート放送
  • 2014年7月10日(木)19:30~20:00
  • 2014年7月20日(日)24:00~24:30
木村カエラ(キムラカエラ)

1984年生まれ、東京都出身の女性シンガー。テレビ番組「saku saku」への出演をきっかけに、2004年6月にシングル「Level 42」でメジャーデビューを果たす。2005年3月発売の3rdシングル「リルラ リルハ」が大ヒットを記録したことで一躍全国区の人気を獲得。2006年には再結成したサディスティック・ミカ・バンドにボーカルとして参加した。2007年6月には初の日本武道館公演を成功させたほか、2009年7月には横浜赤レンガパーク野外特設ステージにてデビュー5周年記念ライブを行い約2万2千人を動員。同年末には「NHK紅白歌合戦」に初出場し、ヒット曲「Butterfly」を披露した。2013年からはビクターエンタテインメント内にプライベートレーベル「ELA」を設立し、カバーアルバム「ROCK」を発表。デビュー10周年となる2014年は、6月にベストアルバム「10years」、7月にシングル「OLE!OH!」を連続リリースした。キュートで先鋭的なファッションやそのライフスタイルは女性からの支持も厚く、CM出演なども多数。