Ken Yokoyama|Ken Bandの15年の歩みとこれから

マッチャンの脱退

──アルバムの話からは逸れますが、ここでどうしても触れておきたいのが、松浦さんがKen Bandを脱退するという件です(参照:Ken Yokoyamaのドラマー松浦英治、新譜ツアーをもって脱退)。どのタイミングでお辞めになるんですか。

松浦英治(Dr) 今年いっぱいですね。このアルバムのツアーまでは参加します。

──お辞めになる理由は?

松浦英治(Dr)

松浦 なんか……バンドにはあまり関係なく、自分の問題ですね。Ken Bandにいた7年間、毎日いろんな人と触れ合いながら、ドラマーとしてもバンドマンとしても、自分は何を持っているのか、常に自問自答してきたんです。考えて考えて考え抜いた結果、ちょっとちげえなって思って。自分は優れたバンドマンじゃないんだなって気付いちゃって。

──どういうことですか?

松浦 一体感って、バンドの一番の魅力で。一体感のあるバンドが、ある瞬間にものすごいものを見せてくれるのがバンドの醍醐味だなって、客の立場で見てそう思うんです。メンバー同士どこかでしっかりと手をつないでいる感じがあるかないかが、すごくデカいなと。でも僕はKen Bandに対して、どうしてもそれを実感として持てなくて、ずっと。

──最初から?

松浦 ええ。そこを埋めようとずっと必死になってやってきたんです。で、「僕はどうしてもバンドに入り込めない」「拒絶されている」って思ってたんですけど、あるとき逆だったことに気付いちゃったんです。自分がみんなを拒絶してるんだって。これはたぶん性格の問題だし、あまりに生き方が違いすぎたんだと思います。僕の根っこの問題なんですよ。僕が人と一緒に音を出すことに喜びを持てるか持てないかっていう……。

──ああ、そういうところまでいきますか。

松浦 ええ。そういう経験が過去の自分にはほとんどない。たぶんバンドマンうんぬんよりも、人としての他人との付き合い方、距離の取り方、やり方を間違えてたんだなと。Ken Bandは、みんなの心がすごく強くつながっていることが必要だと思うので、それが欠けてるのがわかった以上、これから先自分が言うことやることが全部嘘になっちゃうなと思ったんです。自分はみんなと手をつないでやってるって自負があればこそ、何かを言えると思うんですけど、それが自分には欠けている。健さんは前から全力で僕のそういうところをこじ開けようとして、あの手この手で僕との距離を詰めようとしてくれて。それはメンバーみんな、スタッフみんなも同じで。申し訳なくなるレベルまでやってくれたのに、僕はそのレベルまで行けなかった。それはもう仕方ないなと思って。

──どれぐらい前から悩んでたんですか。

松浦 悩んでたのは、バンドに入った日(2011年2月)からですかね。

──えええええ……。

松浦 初めてKen Bandの一員としてライブをやったときに、このバンドには、想定してなかった難しさがあるなってなんとなく感付いて……。

──健さんはどう感じていたんですか。

横山 彼の言う通り、その感じは最初からありました。最初から僕は一生懸命こじ開けようとしていたし、こじ開ける過程でときには傷つけるようなことも言ったし、怒らせた。それはずっと僕たちの課題でもあったんです。うん……やっぱり特別な集団でありたいんですよ、Ken Bandは。それを要求するし、そのためにも気持ちを共有したいから、「こうしたい」「俺はこう感じてる」ってことをすごくストレートにいつもぶつけてるんです。今年の頭には「Ken Yokoyamaなんて名前でやってるから平等でないんだったら、いっそバンドを変えよう」ぐらいの話をしたんです。

──うーん……。

横山 僕はもう、Ken Yokoyamaっていうのは圧倒的にバンドだと思ってるし、事実バンドなんですよ。バンドのすべては4人の平等な気持ちから生まれてくるものだし、4人が1つのものに同じ情熱で関わってくることから生まれてくるものでありたいんです。みんながバンドの1/4であってほしいし、その人にとっては100%であってほしい。今年の頭にそういうことを話して、8月の頭ぐらいだったかな。マッチャンから電話がかかってきて。「僕は1/4にはなれないです」と。それを聞いて「うん、わかった」となりましたね。

──胸襟を開いて裸になって、心と心がぶつかり合うような、そういう関係性をバンドメンバーには求めたいと。

横山 はい。ぶつかり合った瞬間もあったんですよね。噛み合う瞬間も。今マッチャンは自分のことを卑下して言ってますけど……。

松浦 卑下してはいないですよ。現実って言うか……事実。ビートを作り出せないドラマーはドラマーじゃないですよ。

松浦英治(Dr)

横山 飛べない豚はただの豚だって?(笑)

松浦 ほんとそれですよ(笑)。俺、ただの豚だったんだなって。バンド長いことやっててもまだ気持ちを求め合うって素晴らしいことだと思うんですよ。Ken Bandって自分が思ってたバンドの理想像そのものなんですけど、その中にいてなぜ自分はこうなってしまうんだろうって。

バンドとして大事なことは精神性

──松浦さんが加入して今のメンバーになって約7年ぐらいですよね。7年もやってるとお互いの役割みたいなものはある程度固まってくる。それをこなしていけば、バンドはある程度回っていくものだと思うんです。でも健さんはそれ以上のものを求めている。

横山 はい。その“ある程度固まってくる”ものを、さらに変えたかったんです。そのための考えのシェアとか気持ちのシェアとか、そういうことをいつもしているつもりなんですね。バンドってそういう精神面からカッコよくなるかならないか決まると僕は信じてる。バンドとしてのライブのすごみって、圧倒的に精神性だと僕は思うんです。

──昔からそういう考えだった?

横山 Ken Bandの初期は、あんまりそんなこと思わなかったですよ。やってるうちに変わってきた。去年のHi-STANDARDとの関わりが大きかったと思うんです、自分にとって。Hi-STANDARDって、メンバー3人が役割も性格も生活も得手不得手も違うのに、1つのことに全員がものすごく全力で向かうんですよ。それが今のKen Bandには足りないんじゃないかなと思ったんです。で、これは話さなきゃいけないと思ってHi-STANDARDの「THE GIFT TOUR」ツアーが終わってすぐの1月に「こう思うんだ」ってことを話したんです。だから、今(バンドが)変わってる最中だと思うんです。変わんない人もいますけどね、中には。フフフ(笑)。

Jun フフフッ。

──反応してますね、Junさん(笑)。

Jun Gray(B)

Jun うん、言ってることはわかるよ。でも俺は入った当初から、ガンガン自分を出してやろうと思ってたからさ。せっかくそういう場を与えられたんだったら、どれだけ自分が出せるかが勝負。Ken Bandに入った10年前からね。(横山の)圧倒的パフォーマー、圧倒的フロントマンとしての部分は認めてる。だから自分も全力でがんばらなきゃいけない。俺が入った当初は健が1人でKen Bandを引っ張ってたところもあったけど、どうせ入ったんなら、バックの3人は誰でもいいやって思われるのはシャクだし、そんなバンドは絶対イヤだからね。

──ですね。

Jun うん。そのためには自分のカラーを出していかないと。

──そういうJunさんの姿勢は頼もしい?

横山 頼もしいですね。最終的にはいてくれるだけで安心、というレベルなんですよ。こう見えて僕の言うことちゃんと受け止めてくれるし、Junちゃんなりに悩んで。ほぼ悩まない人が悩んで(笑)。

──真面目だと思われるのがイヤでしょ。

Jun そうですね、パンクスなんで(笑)。

横山 わははは!(笑)

Jun 適当なぐらいがパンクスじゃないかと思うよ(笑)。

──Minamiさんはどう考えますか。

Hidenori Minami(G)

Minami このメンバーで武道館やったじゃないですか(2016年3月。参照:Ken Yokoyama「ステージを降りたくない」8年ぶり武道館で再会を約束)。そのあとKen Bandの方向性がなかなか決まらなかったんです。新曲もなかなか出てこなくて。そこで少し落ち着いちゃったんですよね。勢いと言うか……。

横山 創作面とかね、ビジョンとかね。

Minami そう。そうこうしてるうちにHi-STANDARDが「THE GIFT」(2017年10月リリースのアルバム)を出したんですよ。そして健さんはHi-STANDARDでツアーをして帰ってきて「ちゃんと1/4でバンドをやりたい」という話をした。その気持ちがすごくよくわかったんです。たぶん健さんは2011年の「AIR JAM」でHi-STANDARDが復活するまで、Hi-STANDARDというものに対して戦ってた部分があったと思うんですよ。僕も(以前所属していた)KEMURIに対して同じ気持ちがあった。そこでHi-STANDARDのツアーがあって、健さんが「やっぱりハイスタはすげえ」みたいなことを口にしたとき、すげえ悔しかったんですよ。Ken Bandで10年間一緒にやってきて、結局こうなっちゃったのかと。でもその後健さんが「それぞれが1/4の気持ちでやろう」と言ったときに、僕は心を入れ替えたんです。

横山 俺はさ、ハイスタやってるときはハイスタが一番でありたいけど、Ken BandやってるときはKen Bandが世界一でありたい。

Minami そうそう。

横山 常に世界一のロックンロールバンドでいたいもん。

Minami うん。僕らはそういう目標でやっている。だからマッチャンが「辞めたい」「1/4にはなれない」と言ったとき、そういう目標で一緒にやっていけないなら辞めれば?と思ったんです。僕は同じ気持ちで一緒に向かっていけるメンバーとやっていきたいし、曲も作っていきたいし、ライブもやりたい。それに付いてこられないんだったら、冷たいようだけど全然辞めてもいいよって気持ちでした。

──10年間休んでいたバンドに、10年以上コンスタントにやってきたバンドが負けてたまるかっていうのはわかる気がします。

Minami そうそう。

横山 結局Hi-STANDARDで「THE GIFT」を出して、僕はいろんなものを得てしまったんです。Hi-STANDARDっていうのは素晴らしいんですよ。でも素晴らしいものを得たんだったら、僕はそれをKen Bandに必ずフィードバックしたいんです。ハイスタに勝つために。ハイスタのいい部分はKen Bandに持ち込むべきだし、Ken Bandのいい部分はハイスタに持ち込むべきだし。自分が関わっている部分は「ま、こんなもんか」で済ませたくないんです。Hi-STANDARDだって、このままレジェンドバンドとしてすーっと行けるかって言ったら、そこに乗っかった瞬間に落ちると思うんです。あぐらかいた瞬間に落ちていった例を僕は何度も見てる。僕自身もその危機感をいつも持っているんです。だからKen Bandでは妥協したくない。それがマッチャンには負担だったのかもしれないけど。

──ハイスタで得たものって何ですか。

横山健(Vo, G)

横山 1つのことに全員が全力で向かうことです。それを感じるんです、ナンちゃん(難波章浩 / Vo, B)からもツネちゃん(恒岡章 / Dr)からも。必死さと言うか。誰がどう貢献したかなんて結果論だからいいんです。だけど全員が自分のものとしてバンドと関わることが大事で。そのフィーリングをすごく感じながら「THE GIFT」の年を終えて。Ken Bandに足りないのはこれだって思ったし、この感じをKen Bandに持ち込まないと、と思ったんです。

──以前、横山さんは「ハイスタに比べてKen Bandのよさって何だろう」という問いに「ある種のユルさ、自由さ、制約のなさみたいなものじゃないか」と言っていました。それと、今話しているような、4人のメンバーが本気でぶつかり合い、一心同体になって突き進んでいくようなあり方は、両立するものですか。

横山 いや、ユルさがいいところだとは言えないですね、今や。

──なるほど。じゃあこれからKen Bandの音楽が変わっていく可能性もある。

横山 あります。それは間違いなくメンバー4人の精神のつながりから出てくるんですよ。僕たちは平等に歳を取って、生活の形態も変われば、音楽への情熱も変わっていくと思うんですね。その中でKen Yokoyamaって屋号なりバンドへの関わりって常に1/4であり、その人にとっての100%であってほしいんですよね。

──いろんな意味でKen Bandの1つの時代が終わって、また来年から新しい時代がスタートするということですね。

横山 そうですね。期待してください!

Ken Yokoyama
「Songs Of The Living Dead」
2018年10月10日発売 / PIZZA OF DEATH RECORDS
Ken Yokoyama「Songs Of The Living Dead」

[CD] 2700円
PZCA-85

Amazon.co.jp

収録曲
  1. I Fell For You, Fuck You
  2. My Shoes
  3. What Kind Of Love
  4. My Day
  5. Nervous
  6. Don't Wanna Know If You Are Lonely
  7. Swap The Flies Over Your Head
  8. If The Kids Are United
  9. You're Not Welcome Anymore
  10. Walk
  11. Sayonara Hotel
  12. Going South
  13. Brand New Cadillac
  14. Dead At Budokan
  15. Hungry Like The Wolf
  16. Nothin' But Sausage
  17. Living After Midnight
  18. A Stupid Fool
  19. A Decade Lived
  20. Soulmate
ツアー情報
Ken Yokoyama「Songs Of The Living Dead Tour」
  • 2018年10月18日(木)神奈川県 CLUB CITTA' 出演者Ken Yokoyama / SHADOWS
  • 2018年10月24日(水)福岡県 DRUM LOGOS 出演者Ken Yokoyama / HEY-SMITH
  • 2018年10月26日(金)鹿児島県 CAPARVO HALL 出演者Ken Yokoyama / BACKSKiD
  • 2018年10月27日(土)熊本県 熊本B.9 V1 出演者Ken Yokoyama / S.M.N.
  • 2018年10月29日(月)広島県 広島CLUB QUATTRO 出演者Ken Yokoyama / サンボマスター
  • 2018年10月30日(火)愛媛県 WStudioRED 出演者Ken Yokoyama / サンボマスター
  • 2018年11月3日(土・祝)秋田県 Club SWINDLE 出演者Ken Yokoyama / UNLIMITS
  • 2018年11月4日(日)青森県 青森Quarter 出演者Ken Yokoyama / UNLIMITS
  • 2018年11月6日(火)宮城県 Rensa 出演者Ken Yokoyama / COUNTRY YARD
  • 2018年11月7日(水)福島県 HIPSHOT JAPAN 出演者Ken Yokoyama / COUNTRY YARD
  • 2018年11月12日(月)群馬県 高崎clubFLEEZ 出演者 Ken Yokoyama / rem time rem time
  • 2018年11月13日(火)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX 出演者 Ken Yokoyama / ENTH
  • 2018年11月15日(木)石川県 金沢EIGHT HALL 出演者 Ken Yokoyama / HAWAIIAN6
  • 2018年11月16日(金)新潟県 NIIGATA LOTS 出演者 Ken Yokoyama / HAWAIIAN6
  • 2018年11月27日(火)大阪府 なんばHatch 出演者 Ken Yokoyama / SiM
  • 2018年11月28日(水)愛知県 DIAMOND HALL 出演者 Ken Yokoyama / SAND
  • 2018年12月6日(木)東京都 新木場STUDIO COAST 出演者 Ken Yokoyama / Dizzy Sunfist
Ken Yokoyama(ケンヨコヤマ)
Ken Yokoyama
Hi-STANDARD、BBQ CHICKENSのギタリストである横山健が2004年に始動させたバンド。同年2月に1stアルバム「The Cost Of My Freedom」をリリースした後、コリン(G)、サージ(B)、Gunn(Dr)を率いてライブ活動を開始させた。2005年の2ndアルバム「Nothin' But Sausage」をはじめ定期的に作品を発表。2008年1月に初の東京・日本武道館公演を実施した。この公演を最後にコリンが脱退し、新たにHidenori Minami(G)が加入。同年秋にはサージも脱退し、Jun Gray(B)が加入する。その後も作品を精力的に発表し、2010年10月には「DEAD AT BAY AREA」と題したアリーナライブを神戸と幕張で実施した。その後Gunnが脱退し、松浦英治(Dr)が加入。2012年11月に5thアルバム「Best Wishes」をリリースした。2013年11月には横山のドキュメンタリー映画「横山健 -疾風勁草(しっぷうけいそう)編-」が全国60館の劇場にて公開され、2014年9月に「Stop The World」を収めたCDが付属したDVD「横山健 -疾風勁草編-」を発売した。2015年7月には8年4カ月ぶりとなるシングル「I Won't Turn Off My Radio」をリリースし、テレビ朝日系「ミュージックステーション」に初出演。大きな話題を呼んだ。9月にニューアルバム「Sentimental Trash」を発表し、同月より年をまたいだ全国ツアー「Sentimental Trash Tour」を開催した。2016年3月には2度目となる武道館公演を実施。2018年6月にNAMBA69とのスプリットアルバム「Ken Yokoyama VS NAMBA69」を発売し、2組によるスプリットツアーも大成功に収めた。10月コンピレーションアルバムやトリビュートアルバム参加曲などを集めたセルフコンピレーションアルバム「Songs Of The Living Dead」をリリースする。