音楽ナタリー Power Push - Ken Yokoyama
40代“ギター小僧”がたどり着いたロックンロール
SEALDsの存在について
──先日JunさんMinamiさんと話していて出た話題なんですが、「Best Wishes」は震災モードで、内容もシリアスだったけど、それは絶対に必要なことだった。でもそれから2年が過ぎて、ようやく横山健も自分自身のこととか自分の好きな音楽について考える余裕ができたんじゃないかと、そういう話になったんです。今の横山さんの話を聞いていても、横山さんが音楽に集中できた2年間だったのかなと。
うん、そうですね。「Best Wishes」のときは音楽というより、どういった言葉を歌うかってことが見つからなければ、曲作りに取りかかれなかったぐらいだったけど、今は普通のオールディーズにキャッキャできる。この心境の変化は自分でもびっくりしますね。もちろん震災のあと「Best Wishes」を作ったときの気持ちは何も忘れてないですよ。だから両方ある感じですね、今は。
──それが今回の歌詞にも表れてると思うんですよ。冒頭にも言いましたが、社会的なメッセージを持った曲とそうじゃない曲がうまくバランスしている。そういう日常的な視線、プライベートな感覚と社会的な視線が自然に同居しているという意味では、今SEALDsっていう学生たちの新しい社会運動の動きがありますよね。あの子たちの何が面白いって、社会的政治的なアクションと、例えば普通におしゃれしたり遊んだりするプライベートの部分がすごく自然なバランスで同居している。ごく普通の若者の感覚で取り組んでる。
はい、そうですね。
──昔の学生運動の人たちは生活や人生のすべてを革命運動に注ぎ込んでいたけど、今SEALDsをやってる子たちは普通に勉強するし遊ぶしナンパもするけど、でも今の安保法制の動きは許せないから発言もするしデモもやる、という。そういう柔軟なスタンスが自然で、新しい世代なんだなと感じるわけですよ。で、そういう彼らの姿勢やライフスタイルと、さっき言った本作のバランス感覚って、ある意味で通じてる気がします。
うんうんうん、まさに! 僕ね、「政治とチンコマンコは同じ線上の話だから」って、いつも本気で言ってるんですよ。今作だって、1曲目がチンコマンコの歌で、2曲目がお父さんの説教モードの歌で、3曲目が戦争反対の歌で。もうめちゃくちゃですね(笑)。SEALDsの連中ってそれをちゃんと具現化してくれてるなって思って、すごくうれしいんですよ。もうね、デモの帰りにラブホでいいんですよ(笑)。
──デモで一緒に声上げてると一体感があってテンションも上がるしね(笑)。
はい(笑)。それって楽しいことじゃないですか。つかタブーってことではないじゃないですか、そんなこと。だからSEALDsが出てきたのはすごくうれしくて。僕があの世代だったらやりたかったなって思いますもん。SEALDsについて、アンチな連中や大人たちがいろいろ言ってるじゃないですか。「いいからそのまま行けばいいんだよ」って、言ってあげたくなりますね。
年を重ねた今、思ったことは全部やっておかないと
──今回歌詞のテーマなどで考えたことは。
歌詞に関しては何か思いついたらその都度書き留めるようにしてるので、特に一貫したテーマはないんですが、自分で客観的にみると、お父さんモードが強いなと。父親世代というかね。若い子たちに一生懸命教えようとしている自分がいるという気はすごくしました。
──本作から先行でシングルカットされた「I Won't Turn Off My Radio」について、自分が古びたラジオみたいな気がする、と言ってましたよね。横山さんも、もう若者ではない自分、老いていく自分を自覚する瞬間ってあるのかなあ、と。
単純に自分の体の機能の衰えがすごいありますよ……特に老眼(笑)。もうほんと、どこまで老眼って進むんだろうっていうぐらい。
──確かに……それは私もあります(笑)。
周りから見たら僕ってだいぶ動きがおじいさんっぽくなってるらしいですから(笑)。足腰の疲れがとれないし、突然関節が痛んだり……心細くなりますよ、生きものとして。そりゃ40何年間休まず動いてるんだから、もうすぐ寿命だよなって思ったりするんですよ。おおげさかもしれないけど、いつもそんなことを考えてるんです。いつか終わる。いつか自分が死ぬ、ってことが日に日にリアルに感じられてくる。そう考えると、自分も本気でちゃんと何かを残そうとしないと、明日ポックリいっちゃうかもしれないし、この先どうなるかわかんないよなあっていう。
──それ、横山さんの歳(45歳)で考えるのは早くないですか?
いやあ、そんなことないですよ。実際、若くして死んでいく友達もすごく多いんですよ。怖くはない……でもいつもそういうふうに思っちゃう。だから思ったことは全部やっとかないと、と思うんすよね。今のところはそういったことをモチベーションに変えられているというか。
──一方でロックとかロックンロールのあり方として、いつまでも若くありたい、というか老いぼれていくことを拒否する指向もありますよね。
僕は逆かもしれないですね。老いていく自分を見せようとしているのかもしれないです。
──なんのために?
わかんないです。
──若く見られたいという気持ちもない?
それはそんなにないかもしれないですね。現に若くないし。だってですよ、ハイスタをバリバリやってた20代の頃の写真とか残ってるじゃないですか。自分でもカッコいいと思いますもん(笑)。若くてシュッとしてて。今はもう、ねえ……(深いため息)。
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収録曲
- Dream Of You
- Boys Don't Cry
- I Don't Care
- Maybe Maybe
- Da Da Da
- Roll The Dice
- One Last Time
- Mama, Let Me Come Home
- Yellow Trash Blues
- I Won't Turn Off My Radio
- A Beautiful Song
- Pressure Drop
- Sentimental Trash Tour
- 2015年9月25日(金)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
- 2015年10月6日(火)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2015年10月7日(水)石川県 金沢EIGHT HALL
- 2015年10月9日(金)新潟県 新潟LOTS
- 2015年10月10日(土)群馬県 高崎club FLEEZ
- 2015年10月16日(金)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
- 2015年10月18日(日)青森県 Mag-Net
- 2015年10月19日(月)秋田県 Club SWINDLE
- 2015年10月21日(水)岩手県 Club Change WAVE
- 2015年10月22日(木)宮城県 Rensa
- 2015年10月24日(土)山形県 山形ミュージック昭和Session
- 2015年12月19日(土)神奈川県 Yokohama Bay Hall
- 2016年1月20日(水)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
- 2016年1月21日(木)島根県 松江 AZTiC canova
- 2016年1月23日(土)熊本県 熊本B.9 V1
- 2016年1月24日(日)鹿児島県 CAPARVO HALL
- 2016年1月26日(火)長崎県 DRUM Be-7
- 2016年1月27日(水)福岡県 DRUM LOGOS
- 2016年1月29日(金)愛媛県 WstudioRED
- 2016年1月30日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2016年2月10日(水)静岡県 SOUND SHOWER ark
- 2016年2月11日(木・祝)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2016年2月13日(土)大阪府 なんばHatch
- 2016年2月14日(日)愛知県 DIAMOND HALL
- Ken Yokoyama DEAD AT BUDOKAN RETURNS
- 2016年3月10日(木)東京都 日本武道館
<出演者>
Ken Yokoyama / SLANG(ゲスト)
Ken Yokoyama(ケンヨコヤマ)
1969年10月1日生まれ。Hi-STANDARD、BBQ CHICKENSのギタリスト。2004年にソロアーティストとしての活動を開始し、Ken Yokoyama名義によるアルバム「The Cost Of My Freedom」をリリースした。Ken Bandとしてライブ活動を開始してからも、2005年の2ndアルバム「Nothin' But Sausage」をはじめ定期的に作品を発表。2008年1月に初の東京・日本武道館公演を実施したほか、2010年10月には「DEAD AT BAY AREA」と題したアリーナライブを神戸と幕張で敢行した。2011年にはHi-STANDARDのライブ活動再開や「AIR JAM 2011」開催など、ソロ以外の活動も続々展開。2012年11月に5thアルバム「Best Wishes」をリリースした。2013年11月にはドキュメンタリー映画「横山健 -疾風勁草(しっぷうけいそう)編-」が全国60館の劇場にて公開され、2014年9月に「Stop The World」を収めたCDが付属したDVD「横山健 -疾風勁草編-」を発売した。2015年7月には8年4カ月ぶりとなるシングル「I Won't Turn Off My Radio」をリリースし、テレビ朝日系「ミュージックステーション」に初出演。大きな話題を呼んだ。9月にニューアルバム「Sentimental Trash」を発表し、同月より年をまたいだ全国ツアー「Sentimental Trash Tour」を開催する。